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2021年11月17日 16:18 更新

【医師監修】臭いおならは妊娠超初期だから? 妊娠初期の変化とおなら対策3つ

妊娠しているかどうかまだ判断がつかない“妊娠超初期”と呼ばれる時期に「おならが増えるのは赤ちゃんができたから?」そんな疑問をもつ人が少なくないようです。妊娠すると女性の体にはさまざまな変化が現れますが、“おなら”もその1つなのでしょうか? 妊娠とおならの関係と、妊娠初期の体の変化についてまとめます。

私のおならが臭いのはどうして?

お尻を隠す女性
Lazy dummy

おならは、口から飲み込んだ空気と腸内細菌が食物を分解するときに発生するガスで、そのほとんどは無臭です。

ガスの発生、そしてそのガスを出すことは体にとって大切な生理現象なので、おならは決して悪者ではありません。しかし生活の中では控えたい場面で出てしまったり、臭いが強かったりするとちょっと困ってしまいますね。

腸の中の状態がよくないから

本来は無臭なはずのガスがくさいのはなぜでしょうか?

それは悪玉菌と呼ばれる腸内細菌が関係します。悪玉菌が腸内の食物から作り出すガスはにおいがきつく、おならがくさくなるのです。

つまり腸内環境が悪いほど、おならはくさくなるということです。

近年の腸内細菌研究では、若い人と高齢の人を比べると、腸の動きが鈍い高齢な人ほど腸内環境が悪化しやすく、便やおならは臭くなると考えられています[*1]。ただし年齢にかかわらず腸の動きが鈍くなる生活をしていると腸内環境が悪化しやすく、おならはくさくなると考えられ、原因として偏食(特に肉類やファストフードに偏り、食物繊維が不足した食事)や運動不足があげられています。

また便が腸内(特にS状結腸や直腸など、腸の後半)に停滞する「便秘」も臭いを増悪させる原因になります。

妊娠と臭いおならが出るのは関係ある?

腸を押さえている女性
Lazy dummy

そんな便秘などで臭くなるおならですが、臭いおならが出ることと妊娠とは何か関係があるのでしょうか?

妊婦は臭いおならが思わず出てしまいがちに!

一般的に、妊娠すると便秘になりやすいものです。

月経前症候群(PMS)の症状の1つとしても便秘になりやすい人がいるのと同じで、ホルモン分泌の影響で腸の動きが悪くなるため、腸内に便が停滞しやすいのです。

妊婦さんの便秘が増えるのは、子宮が大きくなることも影響する中期以降である場合が多いですが、妊娠初期から腸の動きが悪く、便秘しやすくなる人もいます。とはいえ腸のはたらきや腸内環境はそもそも個人差が大きいので、おならは「妊娠の兆候」とまでは言えません。

一方、人によってはおならが出そうで出ない状態が続き、お腹が張った感じ(腹部膨満感)が続く場合もあります。膨満感は苦しく、つわりの消化器症状(吐き気やおう吐)が重なるとよりつらくなることもあるでしょう。

臭いがきつくても、おならが出るということは、腸が動いて機能している証拠。もともと便秘しやすい人は特に妊娠全期間を通じて、便秘予防の生活を。また、主治医に相談して、便秘薬を処方してもらうのもいいでしょう。

(松峯先生)


さらに、妊娠するとホルモンバランスが大きく変化します。分泌が増えた女性ホルモン(プロゲステロン)の影響で筋肉がゆるむことで、トイレをがまんする時などにはたらかせる筋肉のコントロールが効かなくなるので、おならが不如意に出やすくなることもあります。

この筋肉は骨盤底筋群の一部なので、意識的に引き締める骨盤底筋体操(詳細後述)で鍛えることができます。

妊娠超初期の体の変化

“妊娠超初期”と呼ばれる期間は「次回生理開始日前(妊娠1ヶ月)」を示す俗語で、医学用語ではありません。

妊娠しているかどうか、まだ判断ができないこの時期に生じる心身の変化はとても個人差が大きいものですが、次のような変化がある・あったという先輩ママの声もあります。

月経以外の少量の出血(着床出血)
おりものが増える
乳房のハリ、痛み
つわりの症状、食欲や味覚・臭覚の変化
便秘
眠気・だるさ
微熱・風邪っぽさ
むくみ
感情の起伏が激しくなる(抑うつ状態になる)
頭痛


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妊娠の初期症状や妊娠検査について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊娠超初期の症状をチェックする16のリスト
関連記事 ▶︎妊娠検査薬は最短でいつから?

妊娠超初期と呼ばれる時期も、その後のつわりも症状は人によって大きく異なります。特に感情や精神面の症状は、妊娠を前向きにとらえているか否かで差が大きく、つわりの程度にも影響することがあります。

妊娠や生活に対する不安などがある場合は、『産科で相談できるのは体のことだけ』とは思わず、主治医や助産師などに心を開いて話してみると、相談にのってもらえます。早期になるべく不安を解消して、つわりの時期を迎えましょう。

一方、めまいや立ちくらみ、脈の異常(脈が飛ぶ、ドキドキが治まらない)などの症状があるときは診察や検査が必要な場合もあるので、妊娠の可能性を告げて医療機関を受診してください。

(松峯先生)

妊娠初期に「思わず出ちゃう臭いおなら」の対策はある?

おならのにおいが強くなったり、回数が増えると考えられているのには原因があり、生活習慣の影響も大きいとされています。

1. 便秘の改善|水分・食事をしっかり。続くのなら受診を

非妊娠時からの慢性的な便秘は女性に多い症状です。

そもそもどのような状態を便秘というかというと、2017年に日本初の、成人の便秘の定義が公表され、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされました[*4]。つまり何日出ていないといったこと以上に“快便”という当事者の実感がとても重要で、実感がもてなければ便秘としてケアすることが推奨されています。

水分・朝食・食物繊維をしっかりとる、排便習慣をつける、適度に運動をするなど、簡単なことから始めてみましょう。また、便秘が続くようであれば医師に相談しましょう。

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便秘の解消法について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊婦の便秘解消法

2. 食生活の改善|肉食に偏らず、ゆっくり食事を

ハンバーガー
Lazy dummy

食生活の影響も大きいものです。特に次の項目に関して食生活を見直してみましょう。

■ 食物繊維を十分にとる(豆や芋類はガスが発生しやすい食品ですが、食物繊維が豊富です。適度に食べましょう)。
■ 肉食に偏らないように食べる。
■ 腸内環境をよくする発酵食品を十分にとる。
■ 空気を飲み込みやすいため控えるとよいもの(呑気症防ぐもの)は炭酸飲料、ガム、麺類、汁物など。
■ 早食いは空気を飲み込みやすいので、ゆっくりよく噛んで。
■ ただし、つわりが始まったら「食べられるものを食べられるときに食べられるだけ、無理せず食べる」が大切。

食欲不振の時期に無理に食べようとすると空気をたくさん食べてしまい、おならやげっぷを増やす原因になる可能性もあります。

(松峯先生)

3. 不意のおなら改善|骨盤底筋力のアップ

思わずおならが出てしまって困るようであれば、骨盤底筋体操もいいでしょう。

骨盤底筋体操は妊娠中も行える体操です。回数はあくまで目安で、毎日無理のない範囲で続けてみましょう。妊娠中・後期に起こりやすい尿漏れ予防にもなります!

体から自然に出るものが『出ない』より『出る』ほうが健康にいいので、本来はあまり気にしないでほしいところです。ただし、いつでもどこでも思わず出てしまうのも困るでしょうから、骨盤底筋体操をしてもいいかも。

(松峯先生)

やり方

1. 深呼吸やストレッチをして、まずリラックスする
2. テーブルや背もたれのあるイス、台所のシンクの縁など安定している場所につかまり、つかまった手に体重を預けるようにして立つ
 ※足幅、手の幅は肩幅程度にし、背筋を伸ばし、正面を見る
3. 肩やお腹の力は抜き、肛門や尿道・腟だけを3〜5秒間強くしめ、次いでゆっくりゆるめる
4. 3を10回繰り返す
5. 4を1セットとし、しばらく時間を置いて、もう2セット/日行う

疾患が背景にある場合は受診が必要

ピロリ菌感染などから慢性的な胃炎で胃のはたらきが低下する「慢性胃炎」は、症状がない場合も多いですが、腹痛(胃痛)や胸焼けを感じることがあります。

また、ストレスの影響で腸が知覚過敏状態(痛みを感じやすい)になり、収縮運動も激しくなり、便通異常(便秘や下痢、またはそれらを交互に繰り返すなど)が起こる「過敏性腸症候群」という病気があります[*2]。

これらの病気になるとおならが増えることがあり、消化器症状(吐き気やおう吐)、排泄のトラブル(下痢・便秘、その混合)などにもつながるとされています。特にストレスが強いと無意識にも緊張のせいで唾液を飲む回数(俗に「固唾(かたず)を飲む」という状態)が増え、同時におならやげっぷのモトとなる空気も多く飲み込むため、おならやげっぷが増えるのです。こうした症状は「呑気症(どんきしょう)」と呼ばれます[*3]。

過敏性腸症候群の場合、まずは食事や睡眠など生活習慣の改善が大切です。それでも良くならない場合は薬で治療します。まずは医師に相談しましょう。

まとめ

おならは体にとって大切な生理現象です。とはいえ、回数が増えたとしても必ずしも妊娠の兆候というわけではなく、その他の原因や食生活の影響であることが多いようです。ただし、妊娠中は便秘になりやすく、それがおならのにおいを強くすることもあるので、便秘予防の生活を心がけるとともに、内科や産婦人科で妊娠の可能性があることを告げ、相談してみましょう。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1]辨野義己著「大便革命」,p78,幻冬舎,2018.

[*2]日本消化器病学会ガイドライン 患者さんとご家族のための消化性潰瘍ガイド

患者さんとご家族のための過敏性腸症候群(IBS)ガイド

[*3] 一般社団法人小郡三井医師会 病気と健康の話

[*4] 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会「慢性便秘症診療ガイドライン2017」

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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