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2022年12月15日 13:39 更新

【医師監修】切迫早産で入院したら?ストレスの少ない過ごし方と保険適用について

妊娠中期から後期の間に切迫早産で入院することになって、戸惑っている人はたくさんいます。ここでは切迫早産とはどういった状態なのか、さらに入院中の治療や過ごし方、入院費についてお伝えします。

切迫早産ってどんな状態?

まずは「早産」を知ろう

「切迫早産」と「早産」は、言葉は似ていますが少し違う状態です。切迫早産について知るために、まずは早産についてお話します。

早産とは「妊娠22週以降から37週未満に出産すること」で、正期産(妊娠37週~妊娠42週未満での出産)よりも早めにお産となることです。なお、早産は約5%の妊婦さんに起こることで、原因は細菌感染や体質よることが多い言われています[*1]。しかし、原因がわからない場合も多く、事前に予防する方法もあまりありません。

早産の赤ちゃんは十分な成熟をする前に生まれてきますが、早産児の中でも生まれる時期によってそのリスクは異なります。早く生まれるほど健康上のリスクが高く、34週以降で生まれた場合は問題なく育つ確率が高くなります[*2]。

赤ちゃんは日々お腹の中で発達を続けているので、特別な理由がない限り、一日でも正期産に近づけるべく適切な対応をする必要があるのです。

早産になると起こること

早産で生まれた赤ちゃんにはどんなことが起こるのでしょうか?

妊娠22週頃に生まれると、赤ちゃんの体重は500g前後となります。正期産で生まれた場合の体重の中央値が男の子は3,000g、女の子が2,940g[*3]なのを考えると、とても小さいことがわかりますね。

そのため、妊娠22週に生まれた赤ちゃんは、4~5ヶ月程度の間、新生児集中治療室(NICU)で治療を受けることになります。また、赤ちゃんは早く生まれれば生まれるほど、障害が残る確率が高くなります。

なお、正期産に近い妊娠34週以降の早産でも、呼吸障害などを起こしやすいという報告もなされています。早産は、単に小さく生まれるだけでなく、長期的な赤ちゃんの健康への影響が心配な状態なのです。

そのため、早産を防ぐためには、早産になりやすい状態を早めに見つけ出してもらえるように、妊娠中の健診をしっかりと受けることが大切です。この「早産になりやすい状態」が「切迫早産」です。

切迫早産=早産の一歩手前

切迫早産とは、「早産になりそうな状態」のことで、早産の一歩手前の状態です。

切迫早産の人は、お腹の張りや痛みなどの子宮収縮が頻繁に起こっていて、子宮頸管(子宮の出口の部分)が時間とともに開いて、その長さ(子宮頸管長)が短くなる状態になっていたり、子宮の出口が開いていて、赤ちゃんが出てきそうになっていたりします [*4]。

切迫早産 子宮頸管短縮 子宮口

切迫早産と診断されたら、そのまま早産にならないように治療をすることが必要です。

切迫早産の治療法

切迫早産の治療では、子宮収縮によって早産が進行していると判断した場合には、子宮収縮を抑える子宮収縮抑制薬(はりどめ)を使います。また、切迫早産の原因の一つでもある細菌感染が疑われる場合には、抗菌薬を使用します。

子宮収縮の程度が軽い場合は外来通院で経過を見ていきますが、子宮収縮が強くなり早産が進んでいると判断した場合には、入院して子宮収縮抑制薬の点滴治療を考慮します。また、34週未満で生まれる可能性が高いと判断した場合には、生まれた後の赤ちゃんの肺の状態をよくするために、ステロイドという薬をお母さんに投与する場合があります。

もし破水してしまった場合でも、妊娠34週未満であれば、赤ちゃんの肺が未熟なので、まだお産にならないように治療するのが一般的です。妊娠34週以降であれば、赤ちゃんの肺が成熟してくるため、分娩誘発や帝王切開などによって、赤ちゃんが細菌感染などを起こす前に出産にします。

切迫早産での入院

切迫早産で入院している女性
Lazy dummy

切迫早産になっても、できれば入院せずに自宅で過ごしたいと考えるのが普通です。でも、赤ちゃんを健康な状態で出産するためには、早産のリスクが高いと診断された場合には、入院して治療した方が有利です。

入院するかどうかは、妊婦さんの状態によって異なります。同じ「切迫早産」という診断でも、自宅で安静にするだけで済む場合もありますが、早産に進行する可能性が高いと判断した場合には、入院して張り止めの薬を点滴することになります。

入院中に行われる検査

切迫早産の入院中、一般的には次のような検査が行われます。

・内診
腟に指を入れて、子宮口の開きの程度を診察します。

・胎児心拍数モニタリング(NST)
お腹にセンサーを付けて、赤ちゃんの心拍数と子宮収縮の回数をチェックし、赤ちゃんの元気さを判定します。

・超音波(エコー)検査
赤ちゃんの発育状態、羊水量、胎盤の位置などを確認します。また、子宮頸管の長さを測定して早産の進行の程度を判断します。

・腟分泌物培養検査
切迫早産の原因が細菌感染ではないかと疑った場合に行います。また、お産の時に赤ちゃんがカンジダやB群溶連菌に感染しないようにするためにも行われます。

・早産マーカー検査
切迫早産の原因の1つである絨毛膜羊膜炎をとらえるための、子宮頸管の分泌物を使った検査です。陽性の場合は早産のリスクが高いと判断します。

・破水の検査
破水が疑われる場合には、腟の分泌物を検査して、破水していないかをチェックします。

・採血・採尿
赤ちゃんが健康でいるためには、妊婦さんが健康なことが大切です。1週間に1回程度、血液や尿の状態を調べて妊婦さんの体調を確認します。

入院中に行われる治療

切迫早産のため入院が必要と判断された場合には、ほとんどの場合に子宮収縮抑制剤(張り止め)が点滴で投与されます。また、絨毛膜羊膜炎を疑われている場合には、抗菌薬を同時に投与します。赤ちゃんが34週未満で生まれる可能性が高いと判断した場合には、赤ちゃんの肺の成熟を促すために、妊婦さんにステロイドを投与することがあります。

さらに、切迫早産で入院したら、ある程度は安静に過ごすことになります。安静の度合いについては次の項目で説明します。

また、子宮収縮がないのに子宮口が開いていってしまう病気を「子宮頸管無力症」といいますが、この場合には、早産を防ぐために子宮の出口を縛ることもあります。


安静度とは?

どのくらい安静にするかどうかは、子宮収縮の強さや子宮口の開き具合、赤ちゃんの状態などによって変わります。とはいえ、安静にし過ぎると、血栓症のリスクが高くなります。そのために、現在では過剰な安静はあまり行われなくなっています。

安静度の判断基準

入院中のストレスを減らすためにできること

入院して寝たきりで過ごす場合はもちろん、歩き回れても病院外に出られないだけでもストレスはたまりやすいものです。

ある調査結果によると、入院でつらかったこととしては「安静にしているために行動が制限されること」が40%、「点滴」が35%、「清潔について」並びに「排泄について」が17.5%あげられています[*5]。
また、他の調査では、入院していても無事に妊娠を継続できるかどうかわからないという不安や、家にいる上の子のことが心配で、ストレスを感じたとされています。
大部屋で知らない人と一緒に過ごすことがつらいと感じる人も多いという報告もあります[*6]。

また、励みになったこととして「家族の面会や励まし」とあげている人は30%、「医師や助産師の励まし」は20%、「友人の面会や励まし」は15%、「同室の患者さんからの励まし」は15%とされています[*5]。

できるだけ家族や仲のいい友人に面会に来てもらったり、つらい気持ちを医師や助産師に相談したりするのがおすすめです。もし同じように切迫早産で入院している人がいれば、お互い負担にならない範囲で会話をするのもいいですね。

体験談によると、「自由に過ごせるシャワーのひと時」や「病院食で出た好きな食べ物」などの小さなことを楽しんだり、テレビを見る・読書するといった時間を持ったり、安静な時間を使って携帯でショッピングを楽しむなど、工夫して気晴らしをする人はたくさんいるようです[*6]。

安静度が高いほどストレスは感じやすくなりますが、面会の他にも動き回らなくてもできる楽しみや喜びを見つけて入院中の時間を過ごしていきたいですね。

切迫早産の入院費用は?

入院費用は保険適用

切迫早産は国民健康保険または社会保険の適用となります。そのため、医療費は3割負担で済むことになります。具体的には、次の方法でだいたいの入院費用がわかります。

支払う入院費用 = 保険診療費(3割負担) + 室料差額 + 食事負担 + その他(診断書等)

ある病院の例ですが、「早産、切迫早産 手術なし、入院期間22.2日の場合」の診療費は平均73万円なので、健康保険で3割負担として「21万9000円」程度となっています。

なお、入院日数が長くなればなるほど入院費用は高くなります。また、差額ベッド代は保険適用外なので、個室を選べば入院費用は高く、大部屋を選べば安くなります。病院によって差額ベッド代や食費などが違うため、入院する病院にだいたいの目安を聞いておくと安心です。

その他、入院費が高額になった際には「高額療養費制度」や「限度額適用認定証」の活用や、働いている妊婦さんが利用できる「傷病手当金制度」なども忘れずに押さえておきましょう。詳しくは加入している保険者(保険証に記載のある健康保険組合など)に問い合わせましょう。ホームページに説明が掲載されている場合もあるので、一度見ておくといいですね。

入院中、上の子はどうする?

すでにお子さんがいる妊婦さんが切迫早産で入院する場合は、お子さんのことも考える必要があります。パパのがんばりが必要となることはもちろんですが、入院が長期化することもあるので、助けてもらえる人やサービスは早めに準備しておきましょう。

父母や親せきなどに助けてもらう・預ける

祖父に本読みしてもらっている子供
Lazy dummy

まずは、実家や義実家、兄弟姉妹などの、家族や親戚に助けてもらいましょう。

入院中ずっとお子さんのお世話をしてもらう、お子さんが幼稚園・保育園から帰ってパパが迎えに来るまでの間預かってもらうなど、可能な範囲でまわりの人に協力してもらいましょう。

その際は、子のアレルギーや服用する薬などの健康情報、保育園・学校等の連絡先、1日・1週単位ルーティンなどを書き出して伝えると、預けた方も預かった方も安心です。

保育園などの一時預かりを利用する

パパと一緒に保育園に来ている子供
Lazy dummy

保育園なら夜までお子さんを預かってもらえますが、急に申し込んでも入園できないケースがほとんどです。その場合は保育園などの一時預かりを利用するのもおすすめです。

詳しくは市区町村の子ども支援課などに相談しましょう。

状況次第では他のサービスも併用

以上のような対策でも乗り切れない場合には、自治体などの育児支援サービスを調べてみましょう。
ファミリーサポートやトワイライトステイを利用すれば、遅い時間まで子どもを預かってもらうことができます。住んでいる地域の役所で、育児支援サービスについて問い合わせてみましょう。

また、利用できる育児支援サービスがない地域の場合は、一時的に乳児院に頼るのもひとつの方法です。乳児院については、児童相談所で相談を受け付けています。

まとめ

切迫早産とは、早く産まれるリスクがある状態です。赤ちゃんが元気で健康に生まれ育っていくためには、できるだけ妊娠37週頃までお腹の中にとどめておく必要があります。
子宮収縮が強く早産のリスクが高いと判断された場合には、赤ちゃんを守るために入院となります。入院生活はストレスが溜まりやすいものですが、読書やテレビ、ネット通販など、入院中にもできる楽しみを見つけて気分転換を図りましょう。パパや友だち、家族の面会もいい気晴らしになる場合もあります。上のお子さんがいる場合は、まわりの人に協力してもらい地域のサービスも利用して乗り越えましょう。家族や親せきや病院のスタッフ、地域サービスなどに助けてもらいながら、無理せずゆったりと出産までの日々を過ごしていきましょう。

(文:大崎典子/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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