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2022年12月02日 11:11 更新

【医師監修】魔の三週目で赤ちゃんが泣き止まない状態はいつまで続く? 寝かしつけのコツ

赤ちゃんとの暮らしにそろそろ慣れてくるはずが、全然寝てくれなかったり泣き止まなくてかえって大変になるという「魔の三週目」。こんな状態になったらいつまで続くのか気になりますね。子供の睡眠にくわしい森田麻里子先生のアドバイスとともに、あやし方・寝かしつけのコツとあわせて解説します。

<森田麻里子先生からのアドバイス>
赤ちゃんが生後3週間目にさしかかってくるころ、だんだんと目を覚ましている時間が増えてきますね。でも、ニコニコ機嫌よくしている時間は短く、すぐに機嫌が悪くなってきてしまって、「どうしたらいいの?」と困ってしまうママ・パパも多いです。実はそのころの赤ちゃんは、「眠すぎて泣いている」ことも。お腹が空いた・おむつが汚れている、などの他に、眠くてぐずっている可能性も考えてみてくださいね 。

魔の三週目とは

泣く新生児
Lazy dummy

「魔の三週目」には、どんなことが起こるのでしょうか。

生後3週目の赤ちゃんが泣き止まない「魔の三週目」

国内外のさまざまな研究によって、赤ちゃんには親のかかわり方によらず生後比較的早い時期にもっともよく泣く期間「泣きのピーク」の訪れることがわかっています。

この時期は、泣くことが多いだけでなく、何をしても泣き止まないことが多いともいわれています。この泣きのピークに達したあとは、少しずつ泣く時間が減っていき、落ち着いていきます。

泣きのピークが来る時期には個人差があり、生後3週でピークになる子もいれば、8週でピークを迎える子もいますが、だいたい生後1~2ヶ月の間にピークの訪れる子が多いと言われています[*1, 2]。

生後3週になると必ず「魔の三週目」を迎えるということではありませんが、このころ親が手に負えないと感じるくらいよく泣くようになる子は多いことから、一般的に「魔の三週目」と言われるようになったのでしょう。

魔の三週目の原因

赤ちゃんの寝かしつけ
Lazy dummy

この時期の赤ちゃんが何をしても泣き止まない原因は、実ははっきりとわからないことが多いのですが、次のような要因が影響している可能性があります。

起きていられる時間を超えていて眠すぎるから

はじめて赤ちゃんを育てる人はびっくりするかもしれませんが、赤ちゃんは眠くなっても自分で寝入ることがまだ上手にできません。そして眠れないでいるうちに眠すぎる(疲れすぎている)状態になると、泣き続けることになってしまいます。

実は、新生児~生後2ヶ月くらいの赤ちゃんが起きていられる時間は「1~2時間程度」[*3]。この時間を超えて起きている場合は「眠いけどうまく寝入ることができない⇒眠すぎて泣く⇒余計に寝つけない」という悪循環に陥っている可能性もあります。

起きてから1時間半~2時間くらいたったら、赤ちゃんが眠くないか気を配り、眠そうな様子があればぐずる前に寝かしつけてあげましょう。

体内時計のズレ

人間は地球の自転による昼夜の変化に合わせて、体温やホルモン分泌などの身体の基本的な機能を約24時間ごとのリズムで調整しています。このリズムを「概日リズム」と言い、これをコントロールしているのが脳にある「体内時計」です。

ところが、生まれて間もない赤ちゃんは、体内時計による約24時間の概日リズムがまだ整っていません。そのため昼夜関係なく睡眠と覚醒を繰り返しています。生後1ヶ月ごろになると体内時計を調整するホルモンである「メラトニン」の分泌が始まり、日中は起きていて夜に眠る概日リズムが整ってきます[*4]。

生後3週目ごろは、ちょうどこのメラトニンの分泌が始まるか始まらないかという時期。でもメラトニンの分泌が始まったとしてもすぐに大人と同等に体内時計が整うわけではなく、生後3ヶ月ごろまでの間に、昼間に起き、夜に寝るリズムが定まってきます。

赤ちゃんによっては、体内時計が整うまでの間に昼夜が逆転してしまうことも。すると本来寝ている時間が長いはずの夜間にたくさん起きていて、真夜中なので無理に寝かせようとすると泣いてしまう可能性もあります。

おっぱいやミルク欲しさ

「生後2~3週目、6週目、3ヶ月」は赤ちゃんの身体が急成長する時期とも言われています[*5]。このころ、それまでは満足していた母乳やミルクの量では急に足りなくなってしまい、もっと飲みたくて泣いてしまうことがあります。

出生後のミルクの授乳回数や量の目安は、

出生後~3、5日:欲しがる時に1日8回・初回は10~15ml
 (1日~数日ごとに、1回当たり10~15mlずつ増やしていく)
生後1ヶ月未満:1日7~8回・1回あたり80ml
1~2ヶ月ごろ:1日5~6回・1回あたり120~150ml

とされています[*6]。

また母乳の場合は、出生から2~3ヶ月は欲しがるときに7~8回以上とされています[*6]。

おっぱいやミルクを欲しがって泣いているようであれば、授乳回数を増やしたり、ミルクを足したりして赤ちゃんが満足できるまで飲めるようにしてあげましょう。

関連記事 ▶︎生後0ヶ月(新生児)の母乳の授乳間隔は?成長とお世話の仕方
関連記事 ▶︎月齢別の授乳間隔の目安は?長い・短いときの原因と対策

お腹の外に出たことへの不安

泣いている新生児に「胎内音」を聴かせると、泣き止むことがあると知られています[*7]。胎内音とは子宮の中で赤ちゃんが聴いているであろう、ママの呼吸や血流、心臓の音、消化器の動く音や羊水越しに聴こえる胎外からの音などのこと。

生まれて間もない赤ちゃんはまだお腹の外の環境に慣れず泣くこともあるけれど、懐かしい胎内音を聴くと安心して泣きやむのかもしれませんね。「胎内音」で検索すると音源がいろいろ見つかるので試してみても良いでしょう。

なお、低月齢の赤ちゃんを安心させるのであれば「ホワイトノイズ」を聴かせるのも効果的と言われています[*8]。これは、テレビの砂嵐や換気扇、空気清浄機などの「ザー」「ゴー」という音です。こちらも検索するとさまざまな音源が見つかるので、何をしても泣き止まないときは一度試してみてください。

赤ちゃんが泣き止まないときの対処法

おくるみに包まれる赤ちゃん
Lazy dummy

赤ちゃんが泣いたらまずやることは、お腹が空いていないか、おむつが汚れていないか、暑い・寒いといった生理的に不快なことがないか確認することです。手足に髪の毛などが絡まって締め付けていないか、衣類やおむつによる締め付けがないかどうかも確認しましょう。

それでも泣き続けていたら、次に紹介する方法も試してみてください。

「5S」を試してみる

アメリカの小児科医がまとめた赤ちゃんをなだめるための「5つのS」を紹介します[*9]。

1つめのs:Swaddle「おくるみで包む」

おくるみでぴったり包むことは赤ちゃんを落ち着かせる効果があります。おくるみで赤ちゃんを包んだら、抱っこして優しく揺らす、歌を聞かせる、話しかける、優しい音楽を流す、抱っこして歩くなどしてあやしてあげましょう。おくるみの使い方や使える時期は次の記事を参考にしてください。

2つめのs:Side-stomach position「横向きに抱っこする」

赤ちゃんはお腹を下にして寝ると長く眠り、物音で目を覚ましにくいことがわかっています。ですが「SIDS(乳幼児突然死症候群)」のリスクがあるため、赤ちゃんをうつ伏せでベッドや布団に寝かせることはできません。

そこで、横向きやうつ伏せの向きで抱っこをしてあやしてみましょう(この向きでベッドや布団などに寝かせてはいけません)。その姿勢で赤ちゃんが落ち着いたら、「仰向けにして」ベッドに寝かせます。

3つめのs:Shush「シューという呼吸音を聴かせる」

ある程度大きくなった子供や大人なら、静かにしてもらうために「シーッ」というと、その意図をすぐにわかってくれるでしょう。赤ちゃんにはそれが通じなさそうですが、実はまったく無駄というわけではありません。

赤ちゃんはお腹の中で胎内音を聴いており、さきほども紹介した「ホワイトノイズ」は胎内音に似ていることから赤ちゃんを安心させるのに役立つと言われていますが、大きく「シーッ(実際は、子音の「s」のみの「シュー」という音が近い)」と言うことでも、胎内音に近い音を出すことができると言われているのです。

実践するときのコツは、小さな声ではなく、「なるべく大きく音を発する」ことです。うるさくて余計泣くのではと思うかもしれませんが、心配はいりません。子宮の中で聴こえる血流音は掃除機の騒音より大きいともいわれ、実際、掃除機の音で落ち着く赤ちゃんもいるようです。なお、赤ちゃんが落ち着き始めたら音を出すのはやめましょう。

4つめのs:Swing「揺り動かす」

赤ちゃんを「揺り動かす」ことにも泣き止ませる効果があります。泣いている赤ちゃんを母親が抱いて移動すると、赤ちゃんは泣くのをやめ、心拍数が下がったという報告もあります[*10]。

抱いて歩き回るのもいいのですが、室内で難しい場合は赤ちゃんを揺らしてみましょう。泣いているときは「早め」に、落ち着いてきてそのまま寝かしつけるときは「ゆっくり」と動かします。

大きく揺らすのではなく小刻みに、お腹の中で羊水に浮かんでいたときのように心地よく揺らすのがポイントです。ただ、激しく揺さぶることは絶対にやめましょう。

5つめのs:Suck「吸わせる」

授乳をしなくても、口に入ったものを吸っているだけで赤ちゃんは落ち着くことがあります。おしゃぶりの使用には賛否がありますが、低月齢のうちに使って習慣化する前にやめる分には問題はありません。

ただし、おしゃぶりの使用は母乳育児が軌道にのってからにしましょう。清潔にした大人の指を吸わせることでもおとなしくなる可能性があります。

おしゃぶりについて、詳しくは下記の記事を参照してください。
関連記事 ▶︎寝かしつけに便利! おしゃぶりの上手な使い方・選び方と人気4選

寝かしつけの工夫をしてみる

寝かしつけを工夫して、赤ちゃんが眠たくなりすぎてぐずる前に入眠できるようにしましょう。

寝かしつけの方法は次の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎赤ちゃんの寝かしつけ方のコツを月齢別に解説

外気に触れさせる、ベビーマッサージは?

赤ちゃんが泣き止まないとき、「ベビーカーや車に乗せて外出する」という方法もよく聞きます。泣き続けてどうしようもない場合は、それもひとつの方法かもしれません。実際、外に出ると赤ちゃんが泣きやむこともありますし、大人にとっても気分転換になります。

ですが、夜の睡眠を促すための方法としてはおすすめできません。夜はおでかけをする時間ではなく、お布団やベッドで寝る時間だと赤ちゃんに覚えてもらいたいからです。外出はどうしようもないときの最後の手段と考えましょう。

また本格的なベビーマッサージは、赤ちゃんが触れられることに慣れた生後6~8週目くらいから始めるのがおすすめ。それまでは、お腹が張る、便秘気味といった様子があるとき、お腹に「の」の字を描くマッサージをする程度にしておきましょう。

詳しい方法は下記の記事を参照してください。
関連記事 ▶︎新生児のお腹がパンパンに!主な原因と対処法
関連記事 ▶︎イラストでわかる!自宅でできるベビーマッサージのやり方

親もしんどい……魔の三週目の乗り越え方

寝かしつけがうまくいかず寝不足のママのイメージ
Lazy dummy

産後1ヶ月では、ママの体調もまだまだ万全ではありません。そのうえ育児の疲れが出始める時期でもあります。そんな時期に起こる魔の三週目は、次のように乗り越えていきましょう。

原因を追及しすぎない

赤ちゃんが泣いていると、原因をつきとめて何とかしたいと思うのが親心。ですが最初に説明した通り、この時期の赤ちゃんが泣き続ける原因はわからないことが多いのです。一通り生理的な原因がないか、体調が悪くなっていないかチェックして大丈夫だったら、見守るだけでも大丈夫です。泣き止ませられない、原因がわからないから親失格、親として未熟ということは決してありません。

また赤ちゃんが泣き続ける時期はいつまでも続きません。大半の子が生後3~5ヶ月であまり泣かなくなっていきます[*2]。いつかは終わるものなので、泣く原因を追究しようと無理しすぎないでください。

関連記事 ▶︎新生児期の泣きやまない問題!注意点と上手な4つの対応

ほかの家族に頼る

1人で何もかも背負おうとせず、ほかの家族の手を借りることも大切です。母乳の授乳以外の育児はパパにも積極的に参加してもらい、赤ちゃんとの絆を深めてもらいましょう。

生後8ヶ月ごろからはママと離れたくなくて泣いてしまう分離不安が始まり、生後10ヶ月~1歳半ごろに最も強くなります。その前の時期は、ほかの家族にも世話にしてもらいやすい時期です。

ファミリーサポートを利用する

ファミリー・サポート・センター事業は、子育て中の人が子供の預かりなどを希望する場合に、その担い手を希望する地域の人とつないで必要な支援が受けられるようにするものです。

料金など具体的な内容は地域によって異なりますが、一時的に赤ちゃんを見ていてもらえる場合もあります。兄弟姉妹の送迎や預かりをお願いすることもできます。

気分転換する

生後3週目は外出もまだ難しい時期です。家で好きなお茶を飲む、読書をする、オンラインで友人と話すなどして、積極的に気分転換を。睡眠不足で辛いときは、できる限り休むようにしましょう。

ほかの子と比べない

泣きのピーク時に1日に泣く時間は赤ちゃんによって異なります。1日1時間しか泣かない子もいれば、5時間泣き続ける子もいます[*2]。

あまり泣かない赤ちゃんと比べても辛くなるばかりです。個人差が大きいのは仕方がないことなのでほかの子と比べて一喜一憂するのではなく、わが子との付き合い方を前向きに考えていきましょう。

まとめ

低月齢の赤ちゃん
Lazy dummy

泣きのピーク真っ只中の赤ちゃんをお世話する親にとっては、辛い「魔の三週目」。でも、赤ちゃんがこれといった理由もなく泣くのは普通のことです。とはいえ、やっかいなこの時期のお世話を一人で抱え込んでしまうと大変です。家族や地域のサービスと負担をシェアして、産後間もないママがすべてを引き受ける事態はできるだけ避けてくださいね。また、家庭で対処する際はここで紹介したコツや乗り越え方を参考に、大変な時期はいつか終わることを念頭に置きながら、落ち着いて対処していきましょう。

(文:佐藤華奈子/監修:森田麻里子先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生労働省「赤ちゃんが泣きやまない」
[*2]Why Does My Baby Cry So Much?
[*3]未就学児の睡眠指針
[*4]乳幼児の睡眠と発達
[*5]水野克己「これでナットク母乳育児」(へるす出版)p.58
[*6]母子衛生研究会:授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)実践の手引き、p34、2020
[*7]音刺激が新生児に及ぼす鎮静効果 日本生理人類学会誌 VoL18,No 42013,11181−186
[*8]森田麻里子・星野恭子:医者が教える赤ちゃん快眠メソッド,ダイヤモンド社,2020
[*9]The 5 S's for Soothing Babies
[*10]Esposito G et al.: Infant Calming Responses during Maternal Carrying in Humans and Mice, Curr Biol. 2013 May 6;23(9):739-45.

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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