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2024年04月18日 12:08 更新

相次ぐ「子供の転落死」死亡事故を防ぐ『6つの“ない”』とは? 今すぐ自宅の確認を!

身近なものが子供の安全を脅かすことがあります。しかし、前もって知っておくだけで防げる事故もあります。今回は「子供の転落」についてお伝えします。自宅という安心できる場所で僅かな隙をついて起こる転落の事故。子供が重篤な怪我を負うケースも多く、時には命を落とすこともあります。危ないポイントを知り、今すぐ対策を。

多発する幼児の転落死

2024年4月16日夕方、広島市の53階建ての高層マンションの25階から3歳の女の子が転落し、亡くなる事故が起きました。警察の発表によると、親が見ていない間にベランダに出て、部屋から持ち出した踏み台に上って手すりを越えてしまったとのことです。

過去にも同じ年代の子供の転落事故は多く起こっています。

■ いずれも、大人が見ていない場所で起こった

2022年11月、幼い子供が自宅からの転落によって命を落とす事故が連続して起こりました。

11月2日の午後2時過ぎ、千葉県千葉市の高層マンションの25階から2歳の男の子が転落し、死亡。事故発生当時、家に両親はいませんでした。その3日後となる11月5日の午後10時前には、大阪府豊中市のマンションの4階から2歳の男の子が転落し、死亡。このケースでは、お父さんが家にいたものの別室におり、子供の様子がわからない状態でした。

また、2023年3月24日の夕方には、名古屋市のマンションの7階から2歳の双子の兄弟が転落し、死亡しました。両親が別の部屋に行って少し目を離した隙に事故が起きたと見られています。

その2ヶ月後となる2023年5月26日の夕方には、山口県防府市のマンションの12階から4歳の男の子が転落し、亡くなりました。当時は家族も家にいましたが、見ていない間にベランダに出て、エアコンの室外機に上がってベランダの柵を乗り越えてしまったと見られています。

■<過去の事例>子供の転落は予期せぬ時に起こる

では、これら以外にかつて実際に起こった転落の例[*1]も併せて見てみましょう。

<7歳児>窓枠に座り、網戸に寄りかかる

寝室にある高さ60cmの窓には、10cmほどの窓枠がついていた。その窓枠に子供が腰掛け、網戸に背に寄りかかっていたところ、網戸が外れ5m下のコンクリートに転落。全身打撲と肝損傷疑いで2日間の入院となった。なお、事故発生当時、保護者は別室で掃除中だった。
(2019年8月発生)

<1歳児>ソファに乗って、窓の網戸を突き破る

2階の部屋にあるソファによじ登って、窓から網戸を突き破って網戸ごと3m下の芝生に転落
(2015年8月発生)

<4歳児>ベランダの柵の飾りに足をかけ、よじ登る

自宅2階で1人で遊んでいた子供が、大きな音とともに庭に落下。子供がいた部屋のベランダへの窓は開いており、網戸にしてあった。また、ベランダにある柵は高さが90cmあったものの、床から50cmの位置に足がかけられるような飾りがあり、そこを使って登ったとみられる。全身打撲などの重症で3日間の入院となった。
なお、事故発生当時、保護者は別の階にあるキッチンで夕食の準備中だった。
(2015年10月発生)

<5歳児>見送りの際、ベランダで前のめりに

手すりの棒を「鉄棒の前回り」をするような形で掴み、ベランダから家族を見送っていた。前のめりになってしまい、1階のコンクリートに転落
(2015年10月発生)

■ 子供の転落は、いつ・どの場所で起こるのか

こういった子供の建物からの転落事故はどのような状況で起きやすいかについて、データをもとに考えてみましょう。

【年齢】多いのは「3〜4歳の子供」

厚生労働省「人口動態調査」死亡事故によると、転落死亡事故件数で最も多いのが3歳でした。救急搬送でいうと、東京消防庁「救急搬送データ」によれば、1歳と3歳・4歳に多く見られました[*1,2]。

昨年起こった事故の双子の年齢は2歳でしたが、そのぐらいの年齢になれば手すりなどに掴まらずに階段を上り下りできる程度の運動能力があります。また、洗濯バサミで挟むといった指先を使うことも上手にできるようになるので、普段親がやっている姿を見ていれば、窓の鍵を開けてしまうかもしれません。

「小さいから届かないはず」「まだできることも少ないから大丈夫!」といった油断は、重大な事故につながりかねないということを覚えておきましょう。

【場所】ベランダより「窓からの転落」が多い

子供の転落事故というと、ベランダが先に思い浮かびますが、一番多いのは「窓からの転落」です。東京消防庁「年齢別救急搬送人員」のデータによれば、ベランダからの転落で11人搬送されたのに対し、窓からの転落は54人でした(東京消防庁管内、2019〜2023年)[*2]。2022年に豊中市で起こった事故も、部屋の出窓から転落した可能性が示唆されています。

ベランダには十分注意していながらも、「ベッドサイドの窓」「リビングのソファ横の出窓」などが盲点となって転落が起きることもあるのです。

【季節】春と秋に多い傾向

東京消防庁の「月別救急搬送人員」では5月と10月にピークがありました(東京消防庁管内、2017〜2021年)[*2]。

暑さ寒さが強い時期は、エアコンを使用して窓を締め切っているご家庭が多いことでしょう。一方、外気が心地いい春や秋は網戸にする機会が増えます。こういった季節による要因も、多少なりとも転落事故の発生に関連していることが考えられます。

【状況】子供だけで遊んでいる時に多い

発生時、窓が開いた部屋で子供だけで遊んでいて起こるケースが多発しています。具体的にどんな状況で事故が発生したかを調べたデータ(医療機関ネットワーク事業)では、以下のようなことが挙げられています[*1]。

・窓枠に座る、網戸に寄りかかる(23%)
・足場に登る(17%)
・保護者が外出中(13%)
・窓が開いている(10%)


そのほか、見送り中、外を見せる、天窓の上で遊ぶ、ものを取ろうとする、窓やベランダの柵で遊ぶーーなどの状況での事故発生もありました。

■ 転落事故から子供を守るため「6つの“ない”」をチェック

子供の転落事故は、ジャングルジムや滑り台などの遊具、ベッドやハイチェアなど家具、抱っこ紐、階段など様々な場所や状況で起こります。全てにおいて注意が必要ですが、中でも窓やベランダなど「建物からの転落」は命に関わる重大な怪我を引き起こすリスクが高いものです。

窓・ベランダ等からの転落を防ぐために、やっておきたいことがあります。6つの「ない」として、ポイントを押さえてくださいね。

【1】子供を残して“外出しない”

2022年に発生した千葉市の転落事故は、両親の外出中に起こりました。

中には、子供の昼寝中「起こすのもかわいそう」「少しの間だから」と外出したり、遊びに夢中だからと「すぐに戻ればいい」「玄関の鍵を締めれば大丈夫」と子供を残していくようなケースもあるようです。
しかし、子供は親がいないことに気付いたとき大きな不安にかられ、窓を開けて外を見たり、ベランダの柵から身を乗り出して覗き込んだりすることも十分考えられます。

幼い子供を家に残しての外出はしないようにしましょう

【2】窓を開けた部屋・ベランダで“遊ばせない”

ベランダが庭がわりになり、子供の遊び場になっているご家庭は珍しくないようです。また、ベランダに出ていなくても、窓が開いた部屋で子供だけで遊ばせるような状況もあるでしょう。

子供は外から聞こえた音などに反応して、窓から身を乗り出したり、ベランダの柵に登ったりすることもあります。子供だけでベランダや窓が開いた部屋で遊ばせることはやめましょう

【3】窓枠や網戸に“座らせない・寄りかからせない”

網の適度な反発が心地いいのか、子供が網戸にもたれかかる様子はよく見られます。しかし、網戸を突き破ったり、網戸ごと転落する事故は少なくありません。子供は突発的にやってしまうことも多いため、注意を促すだけでは十分ではありませんが、普段から窓や網戸に寄りかからないようによく言い聞かせることは、大人ができることのひとつです。

また、窓枠や出窓に座ることも転落のリスクが高い行動です。併せて注意しましょう。

【4】足場になるようなものを“置かない”

窓やベランダの柵が高くても、近くに足場になるようなものがあれば、背の低い子供でも身を乗り出せるようになります。

まず、窓の近くにソファやベッド、棚などの家具配置することはやめましょう。名古屋市で起こった事故では、部屋の窓付近に足がかりになりそうなものが置いてあり、そこによじ登って窓を開け、転落した可能性が高いと見られています。

また、ベランダにゴミ箱、プランター、椅子、水槽などを置くことはやめましょう。特にエアコンの室外機の置き場所には工夫が必要です。実際、2023年に起きた山口県防府市の事故は、室外機に上ることで起こったと見られています。

室外機など子供の足の踏み場になりそうなものは、手すりからなるべく遠く、少なくとも60cm以上は離れた場所に置くことが勧められます。スペースが足りないようであれば、子供が室外機に登れないように柵をつけるなどで対策しましょう。

【5】網戸やベランダ柵に“劣化がない”ことを確認

ベランダに出ないように注意されたり、窓の近くでは気をつけるように言われたりして、それでもうっかりやってしまうのが子供です。
万が一のためにも、窓や網戸が外れやすくなっていないか(窓枠が緩んでいないか、網戸がやぶれたりたわんでいたりしないか)、ベランダの柵が外れやすくなっていないか(留め具が緩んでいないか、つなぎ目などが腐蝕しくずれやすくなっていないか)などを定期的に点検するようにしましょう

確認の内容は以下のページでわかりやすく解説されています。
■一般社団法人リビングアメニティ協会「自分で点検!ハンドブック-外装まわり」

【6】窓や網戸が子供の手で“開かない”ようにする

たとえ窓を閉めていても、子供が開けられるようであれば転落事故のリスクは発生します。また、鍵をかけていても、それが子供の手が届く位置にあれば開けられてしまいます。さらに、網戸には鍵がついていないことが多く、サッシよりも軽いため簡単に開いてしまいます。

実際に、大人がかけた窓の鍵を子供が開けてしまう事例も少なくありません。そのためにも、子供が手を伸ばしても届かない上部などに「補助錠」を取り付け、網戸だけで換気する際にも使用するようにしましょう。

命を守るため、今すぐ対策を

子供の建物からの転落事故について、発生の背景や事例、防止策をお伝えしました。

暖かくなり、窓を開けて換気する機会も増える時期。「うちの子はまだ窓を開けたり、台に上ったりはできないから」と思っていても、昨日できなかったことが今日急にできるようになるのが子供です。

大人が家にいると「危なかったらやめさせればいい」と思ってはいても、片時も子供から目を離さないことなど不可能です。だからこそ、子供が部屋に一人でいる時でも事故に至らないよう環境を整える必要があるのです。

子供の転落は過去の事故事例から学ぶことで、危険を予測して備えることができます。親だけでなく、周囲にいる人全員が情報を共有し、子供の安全を、命を守っていきましょう。

(文・構成:マイナビ子育て編集部/監修:郷 正憲 先生)

監修医:郷正憲(ごう まさのり)
徳島赤十字病院麻酔科 日本麻酔科学会専門医
麻酔業務のほか救急外来も担当し、様々な救急患者の初療も行う。蘇生講習会のICLSコースではディレクター職を担う。著書に「看護師と研修医のための全身管理の本」がある。

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています

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