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【第7話】“外野”にとっての海のはじまり。心のつながりが血縁に負ける瞬間

#海のはじまり考察

やまとなでし子

恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、『海のはじまり』(フジテレビ系)を毎週考察&展開予想するコラムです。自分の子どもが7年間生きていることも、これまでをどう生きてきたかも知らなかった夏と、突然自分の人生に現れた海。2人の関係や、亡くなった彼女と娘との“母と子”の関係――。本作はさまざまな形の“親と子”のつながりを通して描かれる愛の物語。

※このコラムは『海のはじまり』7話までのネタバレを含んでいます。

©フジテレビ

外野にとっての海のはじまり

今回は外野である津野(池松壮亮)にとっての「海のはじまり」の回でした。

水季(古川琴音)と津野が出会ったのは職場である図書館。すでにその時には水季には生まれたばかりの海(泉谷星奈)がおり、二人の今の関係が始まったのは、良かれと思って津野がかけた「大変だね。無理しないでね」という労いの言葉がきっかけでした。

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「無理しないでね」と言われても、誰かが助けてくれる状況でもなく、勝手に産んだ立場で親にも頼れない水季。そこでどんなに辛くても、この人には期待できないと思いながら「ありがとう」と適当には流さないのが水季。はっきりと「無理です。無理しないと子どもも私も死んじゃう」と本音を吐露します。

驚いた津野は「俺、彼女もいないし、家帰っても本読んでるくらいだから……」と、突然にも関わらず水季の状況を真摯に受け止め、水季と海を陰ながら支える津野の生活が始まったのでした。

津野の気持ちと水季の気持ち

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海を預かったり、保育園に迎えに行ったり、水季の育児の日常にピッタリと寄り添う津野。そして、津野と海との生活には、普段は無表情で寡黙な津野からは考えられないほどの笑顔がありました。加えて、そこには海への愛情だけでなく、水季への好意も……。

しかし、水季からの「付き合ってる人いるんですか?」という質問に、好意的な質問かと思い少しうれしそうにした津野の表情も虚しく、「(彼女が)できたら教えてください。頼らないようにするんで」と、水季からの恋愛としての好意はそこにないことをはっきりと示されます。

水季自身も津野の好意に気がつきながら、それを利用する自分に葛藤しつつ、頼らなくては生活が回らない状況に頭を悩ませるのでした。

誰も悪くないのに二人ともが辛い状況

津野が夏(目黒蓮)の存在を知ったのは、ある日母子手帳に挟まっていた中絶同意書を目にしたことがきっかけでした。中絶という選択肢がそこにあったことや、今まで見えなかった父親の存在を名前という形で目の当たりにし、「堕ろせって言われたの? 知らせたほうがいいんじゃ……養育費とか? 何も知らず呑気に生きてるなんて……」と津野は夏への嫌悪感を募らせます。

「海の父親のこと知らないのに、悪く言わないでください!」と、夏の意思ではなく、自分の意思で全てを決めてきた水季は、その決めつけについ反論してしまうのですが、水季の気持ちも、水季を思っているが故に溢れてしまった津野の言葉も分かりすぎて……。

誰も悪くないのに、みんな辛いこの状況……。

そして、そこから「カミングアウト」という発想が生まれ、水季は大切なことを実家に伝えにいくのです。

水季が一番辛い時に力になれない。外野・津野の葛藤

実は水季は子宮頸がんを患っており、残された時間があまりないことを母に伝えます。そこから、残された海が困らないよう、終活を始めるのです。

「治療はせずに海といる時間を少しでも増やしたい」と、今まで疎遠だった実家にも頼りながら。

これまで水季の周りには津野以外誰もおらず、水季の生活を心から支えていたのは彼だったはずなのに、病気が分かってからはみるみると外野になってしまった津野。水季や海の未来に関わることについては、一切立ち入ることができず、見ていることしかできません。

訃報を聞くのも水季の母である朱音(大竹しのぶ)づて。

遺品整理も「手伝いますよ。海ちゃんのものだいたい分かってるんで」と申し出れば、「触らないで。家族でやるんで大丈夫です」と朱音に一蹴されてしまう始末。

津野は「一番水季のことを思って、一番そばで力になってきた自負」がある中で、水季が一番大変な時に力になるどころか手出しもさせてもらえない、血縁も婚姻関係もない、「ただの外野」という立場の弱さに打ちひしがれたことでしょう。

あまりにも切ない。世間から見た関係は確かに外野だけど、水季にとっての立場は一番の即戦力だったはずなのに。

6話で夏から、「水季の最後」を聞かれた時、答えられなかった理由や気持ちが、ここで改めてひしひしと伝わってくるシーンでした。

実は夏をずっと思い続けていた? 水季

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水季は生前、海と一緒に夏の家を訪ねていたことが分かりました。しかし、そこで水季は家に出入りする弥生(有村架純)の姿を見てしまい、会うことはなく引き返していたのでした。

会って何を話すつもりだったのでしょうか?

やっぱり水季は、心の奥では夏をずっと待っていたのかもしれません。1話で水季のスマホに入っていた動画でも、何気ない日常の一コマに見えて「四季の中で夏が好き! 今は冬だから冬眠する。夏がお迎え来るまでひっそりしてること」と、まるで水季から夏に語りかけているような動画がありましたが、「いつか夏と会って……全てを伝えたい……」という気持ちがやはりあったのでしょうか。

津野の好意にも一切ぶれない水季でしたが、あの時からずっと夏への気持ちは変わっていなかったのかもしれません。

水季と弥生の共通点と、津野の不器用な優しさ

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水季のお墓参りで津野と遭遇し、帰り道に二人きりになった弥生。

「母親になりたいから」頑張っているという弥生の話を聞き、津野がそれを「母性」という言葉でひとまとめにしようとしたところから、それは始まります。

「なぜ子どもの話になると父親より母親のが期待されるのか? 美しく一言でまとめたい時に都合のいい言葉なんでしょうね、母性って」と畳み掛けるように憤った後、「引いてます?」と我に帰る弥生。

それを見て、津野の中でフラッシュバックする水季の姿。「母性って? 無性の愛とかですか? 子どもを愛せない母親なんていっぱいいるのに、それが無性の愛って……」「引いてます?」と我に帰るところまでセットで、弥生と同じだったのです。

「(夏が)真逆の人選んでるの、腹立ってたんですけどちょっと似てるんですね。それはそれで腹立ちますね」と言い放ちます。

突然現れた上に、外野でありながら、なんとか内野になろうとする弥生に、おそらく多少の嫌悪感を抱いていた津野は、ここで少し弥生を受け入れたのでしょう。

「あの人(夏)水季水季うるさいですよね?」という本音を漏らしつつ、「海ちゃんが連絡先知ってるんで。南雲さんみたいに一人で決めないでください」と、何か会った時に弥生の力になることを伝えます。

水季と似たものを弥生に感じたけれど、そこは水季と同じになってほしくない、抱え込まないでほしい、という津野の不器用な優しさを感じます。津野の優しさと苦しみをいっぱいに感じる回でした。

©フジテレビ

次回は夏の実父登場。どんなドラマが隠れているのでしょうか。また次回。

(やまとなでし子)

※この記事は2024年08月19日に公開されたものです

やまとなでし子 (コラムニスト)

大和撫子とは対極にいるアラサーJK(女子会社員)。バチェラーを始めとした恋愛リアリティ番組、ドラマ、合コン、婚活、過去出会った世にも不思議な男性たちや日常についての備忘録をTwitterとブログで綴っている。インスタでは綺麗めファッションコーデを日々更新。

Twitter:@yamatonadeshi5
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ブログ:男性見聞録

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