選択的シングルマザーって実現可能? お金の面から考えてみた
働き方も、恋愛も、生活様式も、全てのあり方が少し前とは違う令和の今。数えきれない変化の裏にある「新マネーハック」を、さまざまな分野の専門家たちが回答します。今回の回答者は、丸山晴美さん。
今回のお悩み「選択的シングルマザーはどれくらい稼げば可能?」
結婚に憧れは無いのですが、いつか子どもが欲しい。近年、「選択的シングルマザー」が話題になって、私ももし可能ならその道もアリなのかなと考えています。でも、結局実現できるかはお金の問題が大きいのでは……と思ったり。選択的シングルマザーってどれくらい稼いでいたら実現可能なものでしょうか?(30代/医療系専門職)
選択的シングルマザーとは?
選択的シングルマザーについて、アメリカの心理療法士ジェーン・マテスは「自分の意志でシングルマザーになることを決意した人」と定義しています。
未婚状態のカップルや事実婚の夫婦はこれに該当しません。自分ひとりで希望してシングルマザーになった人が「選択的シングルマザー」ということです。
選択的シングルマザーに向いているのは、第一に経済的自立をしている人。自分で稼いだお金で、子どもと共に衣食住を問題無くやっていける人が挙げられます。
選択的シングルマザーのメリットは?
選択的シングルマザーのメリットは、自分が希望するタイミングで妊娠・出産できること。
できるだけ早く子どもが欲しくてもパートナーがいない場合、今から婚活して相手を見つけて結婚して子どもを産む……となると、時間がかかってしまいます。
婚活や結婚に興味が無く、そこに時間をかけたくない人は、選択的シングルマザーを選ぶメリットがあるのではないかと思います。
あとは、セクシャリティの面で相手に恋愛感情を抱きにくいけれど、子どもは欲しいという人。恋愛・結婚という価値観に縛られずに子育てができるでしょう。
また、夫婦別姓が認められていない日本でも、選択的シングルマザーであれば、自分の姓を変えずに母親になれます。今の日本では結婚すると夫側の姓を名乗る人が多い傾向にありますから、姓を変えたくない人にとってはメリットだといえるでしょう。
事実婚で夫婦別姓を選んでいる人もいらっしゃると思いますが、選択的シングルマザーを選ぶことでも、今の姓のまま子どもが持てるようになります。
選択的シングルマザーのデメリットは?
選択的シングルマザーのデメリットは、自分が体調を崩したときやリストラにあったとき、所得が下がったときなどに、収入面での不安が出てしまうこと。
また、小さい子どもはまだ多くの免疫が無いため、病気にかかりやすいもの。保育園に入園できても感染症にかかってしまい、仕事を早退して迎えに行かないといけない、数日間登園禁止になって自分もしばらく働けない……なんてこともよくあります。
特に子どもがまだ小さいうちは、子育てに協力してくれる親族などが近くに住んでいるか、病児保育があり預けやすいか、ベビーシッターを雇える経済力があるか、ということがポイントになってきます。
働きながら一人で子どもを育てるということは、想像以上に大変です。一人で抱え込まず、社会福祉制度や周囲の助けを得ながら子どもをどういう風に育てていくか、しっかりと考えましょう。
選択的シングルマザーを選ぶなら、どれくらいの収入が必要?
子どもを育てるために必要なお金は大きく分けて2つあり、「養育費」と「教育費」です。大学を卒業するまでにかかる子育て費用の総額は3,000万円以上必要になるという試算もあります。とはいえ、最近では子育て費用の補助も充実しており、子育て費用の負担が軽減されることがあります。
例えば、出産育児一時金は2023年4月から42万円から50万円になり、幼児教育・保育の無償化により3~5歳児クラスの保育料が無料、公立高等学校就学支援金など、ひと昔前と比べると子育て関連の助成制度等が充実してきています。
教育費は、一人の子どもを小学校から大学まで公立に通わせた場合、731万円かかるという説があります(※1)。
基本的には義務教育なので、小学校から私立に行かせたいなどの希望がなければ、多額の教育費はかかりません。中学・高校も無償化しているところが多いですよね。
令和3年度の未婚の平均年間収入(世帯の収入)は454万円(※2)。それくらい稼げていれば、最低限の子育てはできるでしょう。
ただし、学習塾には月3〜7万円かかるので、将来的に通わせたいのであれば、早いうちから先取り貯蓄と新NISAなどで投資を併用しながら積み立てておくのがおすすめです。
また、子どもの父親との関係性にもよりますが、養育費はもらえるに越したことはありません。ただ、今は離婚した夫婦ですら養育費をもらえないことがほとんど。正直あまり期待できないといえるでしょう。
そういう意味でも「自分ひとりで育てていく」という覚悟と経済力が必要になります。
知っておきたい、ひとり親への子育て支援
自治体や所得などにもよりますが、ひとり親の家庭は児童扶養手当や育成手当がもらえたり、水道局の基本料金や国民健康保険料が免除されたり、交通機関の無料パスが支給されることもあります。お住まいの市区町村の子育て窓口やHPで支援制度を調べておいたり、子育て制度が充実している自治体へ引っ越したりするのも一案です。
そのほか、ひとり親を支援する「wacca」というサービスもあります。これは自分の身に何かあったときに、同じ境遇の参加者や各分野の専門サポーターから支援が受けられるというもの。
家族のかたちも多様化している現在、こうあるべきという概念にとらわれず、自由度の高い新しい家族像を築いていけると良いですよね。
これから先、良いパートナーと巡り会えたらそのときに結婚を考えるという選択肢もありますし、今後も選択的シングルマザーとして生き続けるという選択肢もあるでしょう。さまざまな選択肢を考えた上で、自分にとってベストな生き方を選びましょう。
令和のマネーハック86
選択的シングルマザーの道を選ぶには、経済力はもちろん周囲の助けも必要。さまざまな選択肢を考えて、自分にベストな生き方を選ぼう。
※1 子育てに必要な費用ってどのくらい?0歳~22歳までの合計金額とは
https://www.smbc-card.com/like_u/money/education_funding.jsp
※2 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告 p.38
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001027808.pdf
(監修:丸山晴美、取材・文:高橋千里、イラスト:itabamoe)
※この記事は2023年10月30日に公開されたものです