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そのままの自分を見せる。広瀬アリスが悩んでつかみ取った個性

#Lifeview

マイナビウーマン編集部

あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。

取材・文:松岡紘子/マイナビウーマン編集部
撮影:洞澤佐智子

「あなたはこういう人だから」
「君にはこれが向いていると思う」
「そういう趣味があるんだね、意外」

私たちの周りには、自分以外が考える「自分」がたくさん存在する。

他人からの評価は、道しるべとして明るく照らしてくれることもあるけれど、優柔不断の私にとっては、自分を見失うきっかけになってしまうこともある。

いつでも誰に対しても明るく振る舞うあの子なら、こんな悩みは抱えていないのだろうか。モデルや女優はもちろん、バラエティ番組まで幅広く活躍する広瀬アリスさんに、そんな不安をぶつけてみた。

ありのままの自分をさらけ出して活かす

広瀬さんが主演を務めるドラマ『失恋めし』は、失恋で心を傷めた“失恋人”たちが各話ごとに登場し、忘れられない料理の味のエピソードとともにストーリーが展開していくドラマだ。

「失恋ってマイナスなイメージを持たれがちですが、料理を食べるシーンがあることで吹っ切れるというか。前向きにしてくれるドラマだと感じました」

テレビで見た時と同じ笑顔でそう答える広瀬さんは、「おいしいものを食べている時が不幸から一番遠い」と語り、自身も「食べることが大好き」だと無邪気に笑って教えてくれた。

思い描いていた通りの“広瀬アリス”がそこにはいた。

今回の現場では、「自分の癖やミスを活かしてもらった」と語る広瀬さん。本気でドアにぶつかった事故も、いつもとは違う食べ方をしている仕草も、そのまま本編で使用されているという。

「詳しい理由は分からないんですが、監督からは『面白いので』と採用されました(笑)」

影響を受けることもプラスに捉える

自然体で笑う広瀬さんは、そのままの自分を見せているからこそ、後悔や恥ずかしさがないのかもしれない。しかしそんな広瀬さんは、意外にも周りからの影響を受けやすいタイプだと言う。

「我が道を行くタイプと思われがちなんですけど、すごく影響を受けやすいです。でも、良い影響だけ受けるんです。だから、その人の良い部分に気づくのは得意な方だと思います。自分で言うのは恥ずかしいですけど(笑)」

はにかみながら答える彼女にとって、「影響を受ける」ということもプラスなのだと感じた。そして次に返ってきたのは、驚きの成長の仕方だった。

「この人のセリフ回しいいな、こうなりたいなと思って、1時間後には忘れてるんです(笑)。でも、毎回自分の中でリセットして、こうしようああしようって、少しずつ吸収しているというか、いろんな人の良いところを取っていく感じです。逆に悪いものは、無視しちゃう。見ないようにしています」

他の人の良いと思った部分も忘れているけれど、次にお芝居をする時は悪かった部分も完全リセット。だから毎回新鮮な気持ちで「ここをこうしたい」と思い、それまで見てきた他の人のお芝居をそこで改めて思い出し、少しずつ自分のものにしているようだ。

そして、「悪いものは無視」の精神。これが彼女の成長への近道となっているのかもしれない。

そこまで割り切っているのなら、あまり悩んだりはしないのかと思い尋ねてみると、そういうわけでもないらしい。

「全然あります、悩みます。自分が力不足だなとか、今のお芝居は合ってたのかなとか、役が全くつかめないとか。そんな時は、お芝居だったら監督ととことん話して解決します。お芝居以外となると、自分自身の問題なので人にはあまり聞かないです。自分が納得できるまで考えるようにしています。

お仕事に対する姿勢って、いろんな考え方があると思うんです。年齢を重ねたり、キャリアがあるからこそできる考え方もあると思うのですが、参考にさせていただきつつ、結局決めるのは自分だって思うようにしています」

悩んだ末にたどり着いた自分の強み

2021年の初め頃、別のインタビューで「紆余曲折あったけど、やっと自分を確立できた」と話しているのを見た。その紆余曲折について、差し出がましいけれど彼女に真相を聞いてみた。

「もう全部嫌になっちゃったんです。仕事も人も。何にもしたくないし、誰とも会いたくないし、東京からも出たいし。どこに行けば自分がストレスフリーで生きられるんだろうって、8年くらい悩んでました。そこから抜け出せたのが、ここ1~2年くらいなんです」

この1~2年でそうした悩みから脱出したのは、何か転機があったのだろうか。

「それまでは変にこだわりを持って“こうしたい”と思い過ぎていて、自分で視野とか選択肢を狭めてしまっていたんです。でも、1回全部受け入れてみようと思って。それが嫌なことでも。

それで全部受け入れてみたら、意外と『これ嫌だったけどできるな』『きついけど苦手ではない、やれちゃうな』とか。そういうのが見えてきたことで視野が広くなって、楽になりました。人と比べることもあったんですけど、今はもう全然」

そうした暗闇から抜けた今の状態で、広瀬さんは何を“自分だ”と考え、強みだと思うのだろうか。

「極限までふざけられることかな(笑)。それは結構自分の中で大きいと思っています。好きな漫画の話をするのも私は恥ずかしいと思わないし、人の目を気にしなくなったのは大きいです。

それまではコンプレックスをすごく持っていたんですけど、たまたま漫画について語る番組に出演させていただいた時に、何となく『面白い人なんだこの人』って思っていただけるようになって、そこから変わっていきました。

もちろんお芝居メインで女優としてやってるんですけど、バラエティ番組なんかでこういう部分を全力で出せるのは強みかなと思っています」

立ち位置が分かっているからこそ見上げる展望

自分の個性も出せている中で、今後やってみたいことは何か聞いてみた。

「この間、先輩の女優さんとお話している中で『今アリスちゃんは明るいキャラを演じることが多いと思うけど、年齢を重ねていくことで悪役や嫌われ役をやるようになると思う。だから、今はとにかく明るいキャラを楽しんで』って言われたんです。

今すでに悪役もやってみたいとは思います。全然笑顔がない役とか、ヒステリーを起こす役とか。笑顔が多い、ムードメーカーみたいな役が多いので、新しい一面もいつかは出せれば良いなと思っています」

今後やってみたい役柄を持っているけれど、今の自分ではまだ違うと思っているからこそ、彼女はこれからも女優を続けていくのだろう。

目の前には、テレビで見たことのあるキラキラした笑顔の広瀬アリスさん。でも、この笑顔にこれまでにない深みを感じた瞬間だった。

自然体の彼女と話してみて、分かったこと。たぶん私は、自分をさらけ出すのが怖いのだ。見せかけの自分で評価されているから、他人の意見に惑わされるのだ。

彼女のように肩の力を抜いて、まずは自分を見せていくことから始めるべきなのかもしれない、そんな風に思った。

『失恋めし』

街のフリーペーパーでエッセイ漫画「失恋めし」の連載を持つ主人公キミマルミキ。ミキが描くのは、彼女が街で見つけた失恋と、その傷ついた心を癒す美味しいめしの物語。

フリーペーパーを発行するSTO企画の面々に、STO企画に出入りする弁当屋のハライチ、そして街で出会った不器用すぎる花屋の青年。

ミキと彼らが織りなす、心に美味しい物語。

1月14日 Amazon プライム・ビデオにて一挙独占配信<全10話>
※読売テレビにて7月より地上波で放送予定

公式サイト:https://www.ytv.co.jp/shitsurenmeshi/

©木丸みさき・KADOKAWA/ytv

※この記事は2022年01月14日に公開されたものです

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