経験は必ず生かせる。鷲見玲奈が過去から得た「最強の武器」
あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。
取材・文:杉田穂南/マイナビウーマン編集部
撮影:佐々木康太
働き方が多様化し、“もっと自分に合った働き方があるのかもしれない”そう思う瞬間がある。
でも、正直なんとなく働いてきたこの数年で自分が得たスキルや、自分の強みを聞かれたら答えられる自信がない。だから転職する勇気も環境を変える度胸もなく、どこかモヤっとした感情のまま“現状維持”という道を選んでしまっていた。
「きっと一歩踏み出せる人は自信に満ち溢れているんだろう」と、ちょっとだけ羨ましい気持ちで彼女に話を聞いてみたら、想像していない答えが返ってきた。
31歳。自分の中でベストな状態が収められた写真集
“自分の中でベストな状態”
鷲見玲奈さんがそう語るのは8月4日に発売された写真集『すみにおけない』で見せた姿のこと。
フリーに転身してからは、バラエティー番組などで見せるその快活な姿が印象的な鷲見さんだが、最近は女優業に挑戦するなど幅広い活躍でも期待が高い。
「どんな仕事でも楽しく引き受けますよ」と笑いかける鷲見さんにとって、初となった今回の写真集はどういう気持ちで挑んだのだろうか。
「今回写真集を出す中で目的が一つあって、ファンの方と交流できるイベントをしたいっていうのがあったんです。
アナウンサー時代はファンの方と会う機会があまりなかったですし、フリーになってからもコロナ禍というのもあってなかなかイベントとかもなかったので、写真集を出すことで日頃応援してくださっている方に会いたいという思いがありました。
結局オンラインにはなってしまったんですけど、発売記念イベントでそれを達成することができたので良かったです。すごく楽しかったですね」
そんな思いで発売された写真集について「すごく満足度の高い仕上がりになりました」と満面の笑みをこぼしながら語る鷲見さん。この写真集のために体重も増やしたんだとか。
「男性も女性も楽しんでもらえるような写真集にしたかったんです。私自身、タレントさんの写真集を見るのがすごく好きで。だからこそ思うのは、必ずしもモデルさんみたいに細くて、スタイルが良くて、というだけが女性が見たいものじゃないのかなって。
それに、やっぱり体型って人それぞれ似合う体型があるじゃないですか。自分に似合う体型を探しながら調整していく中で、私は痩せすぎていない方が自分の魅力が引き出せるんじゃないかと思ったんです」
31歳を迎えた鷲見さんのベストな状態が収められた1冊。そんな鷲見さんは、最近は働き方においてもベストだと思えることがあるという。
自分の性格に合った環境に出会えた
「今はすごくチームで働いている一体感を感じることができて、私にはこの働き方が合っていたんだなって気がついたんです。
局アナ時代は、いつも周りの顔色をうかがってしまって、迷惑かけてしまったんじゃないかな、この人本当は私のこと嫌いなんじゃないかな、怒らせてしまったかな、とか常に気になっちゃって……」
「私、めちゃくちゃ気にしいなんですよ!」と、取材に答えているその気さくな姿からは想像できない意外な面を見せた。そして、続けてこう語った。
「仕事を振ってくれる他部署からの評価を気にしたり、ライバルともなる同僚に疑心暗鬼になってしまったりして、なるべく嫌われないようにとか、私を使ってもらうにはどうしたらいいかとか、本来の“番組作り”っていう大切なことよりもそっちを考えるようになってしまったんです。
もちろん、働くうえでピリッとした空気感は絶対必要だし、“会社員”という守ってもらえる立場にいさせてもらうことはすごくありがたいことだし、いいこともたくさんあります。
でも私の性格上、その環境は違っていたのかもしれないですね」
「今は、こうしてファンの方とコミュニケーションを取る機会をいただけたり、自分のSNSなども自由に任せてもらったり、自分らしく働けているなって感じています」
彼女のように忙しい毎日で働き続けていると、自分を見失ってしまうこともあるだろう。もしそんな時が来たら、それは新しい環境へと動き出す時なのかもしれない。
「今も昔も自信はない」
そうはいっても、環境を変えることは簡単なことではない。そんなことにエネルギーを使うくらいなら今のままでいいやと諦めたり、自分にできることが分からず途方に暮れたりもする。
鷲見さんにも、過去に一度転職を考えたが思いとどまった時があったと言う。
「入社して3、4年目の時に、自分のミスがきっかけだったんですけど、仕事がうまくいかない時期があって、その時は悩んで転職サイトを見たこともありました。でも、まだ自分は何もできていないな、と思って続けたんです」
であれば今こうして決断ができたということは、当時なかった自信が鷲見さんの中でついたからなのだろうか。
「決断の決め手は、30歳の節目というのが一番大きいですね。あとは、信頼しているプロデューサーさんから『やってみたら?』と背中を押してもらったのもきっかけになりました。
それに、最初に声をかけてくれた今の事務所の方たちが、とても安心感のあるすてきな方達だったので」
「でも、フリーになる時はめちゃくちゃ不安でしたよ! これで仕事が全く来なかったらどうしようとか、何も結果出せなかったらどうしようって。
しかも、フリーになるとより個に焦点を当てられるし、周りのタレントさんに比べて私はあんな風にできないって落ち込むこともあります。なので自信は今も昔もないです(笑)」
「今はここで自分ができることをやるしかないんで!」と話す鷲見さんの熱い視線には、モヤッとした感情は1ミリも見えなかった。彼女のように自信がなくても動き出すことで何かが変わるのかもしれない。
局アナ時代に得たこと
鷲見さんが選んだ“フリー”という道も決して楽な道ではないはず。でもそこで、結果を出しながら活躍の幅を広げている鷲見さんに自身の強みを聞くと、これまでの軽快な受け答えと違って深く悩んだ様子を見せた。そして、「働く時に意識していることなら……」と言ってこう答えてくれた。
「コミュニケーションを取ることですかね。お仕事をやるうえで、やりやすい雰囲気ってすごく大事だと思っていて、例えば番組収録であれば、良い雰囲気のまま収録した方が番組も良いものになると思うんです。
だから、一緒にお仕事をさせていただく方とお会いする前は、その方の情報収集をして、ネタを集めて、『この間の番組見ましたよ』とか『インスタ見ました』って話しかけて、良い雰囲気を作ることを意識しています。
でもそれって、局アナ時代に得たことなんですよね。アナウンサーの仕事では、より自然な表情や話を引き出せるように、取材する前にその方について調べてお話できるネタを作っておくことが大切なんです。
取材に慣れていない方でも緊張せずお話できるようにと思ってやってきたことなんですよ。経験が生かせているのかもしれないですね」
そう語る彼女を見ていたら、過去の経験から得たことが、自分らしく働いている今の彼女の強みとして発揮されているようにも見えた。
なんとなく働いてきたこの数年間、振り返ると自分が得たことも身につけたものもパッと浮かんでこない。でも、経験してきたことに無駄なことなんてなく、もしかしたら、見えていないだけで、自分も立派な武器を身につけているのかもしれない。
そう思うと、そんな自分をちょっとだけ信じて一歩踏み出してみてもいいかもと気持ちが軽くなった。
鷲見玲奈ファースト&ラスト写真集 『すみにおけない』
フリーアナウンサー鷲見玲奈さんの待望のファースト写真集。
360度の美しい海が広がる「はての浜」で波と戯れる姿、大好きな馬に乗って海の中を闊歩する様、満面の笑顔や、ホテルの朝、パジャマ姿での眠たげな表情……さまざまな角度から切り取った、多彩な鷲見玲奈さんが見られる一冊です。
©三瓶康友/集英社
※この記事は2021年09月10日に公開されたものです