今、あなたの隣にいてくれる、あなたにとって大切で、かけがえのない人。
その人は、本当に明日もあなたの隣にいるでしょうか。
吉本ばななさん原作の「ムーンライト・シャドウ」(新潮社刊「キッチン」収録作品)が、発表から33年の時を経て映画化され、2021年9月10日(金)より公開しました。
何の前触れもない、突然の別れ
小松菜奈さん演じるさつきと宮沢氷魚さん演じる等(ひとし)は、長い橋の下に広がる河原で出会い、恋に落ちます。
等には佐藤緋美さん演じる3つ下の弟・柊(ひいらぎ)がいて、柊には中原ナナさん演じるゆみこという恋人がいました。
4人は初めて会った時から意気投合し、自然と一緒に過ごす時間が増えていきます。食事をしたり、ゲームをしたり、亡くなった人に会えるという「月影現象」について語り合ったりと、何気ないけれど穏やかで幸せな日々が過ぎていきます。
しかし、別れの日は何の前触れもなく訪れます。
等がゆみこを車で送っていった時に事故に遭い、2人は帰らぬ人となってしまうのです。
身近な人の死を、どのように受け止めていくのか
大切な人との突然の別れが訪れた時、あなたならどんな方法でその死を受け止めるでしょうか。
さつきと柊は、それぞれの方法で恋人の死と向き合おうとします。何が正解か分からず模索している様子は、見ていて痛々しくもありました。
また、ストーリーが進むにつれ、その行動は相手に対する“後悔”が原動力となっていることが明らかになります。
相手にしてあげられなかったことへの後悔、相手は自分といて幸せだったのかという疑問。その苦悩は2人にとって、前に進むために向き合わなければならないことだったのかもしれません。
この作品では、そうした葛藤にありながらも、人は生きていかなければならないという残酷な現実が、さつきが忘れてしまった「食べる」という行為を思い出す過程を通して描かれています。
身を引き裂かれるような哀しみが訪れたとしても、残された人は「生きよう」とする。その姿は希望でありながら、亡くなった恋人との別離を表す絶望を感じさせるものでした。
現代の私たちだからこそ共感できる作品
作品を見終わった瞬間、どうしても他人事と思えず、自分ならどうするかを真剣に考えました。
原作の発表から33年の時を経て、映画化された本作。震災、豪雨、コロナ禍などが私たちを襲う中、誰もがある日突然、大切な人との別れを経験する時代であるからこそ、さつきの気持ちに寄り添うことができるのではないかと思います。
この映画を通して、現代において誰にでも訪れる可能性のある「突然の別れ」について、ぜひ考えてみてください。
(まっつん/マイナビウーマン編集部)
映画『ムーンライト・シャドウ』
公開日:2021年9月10日(金)
原作:「ムーンライト・シャドウ」吉本ばなな著(新潮社刊「キッチン」収録作)
出演:小松菜奈 宮沢氷魚 佐藤緋美 中原ナナ 吉倉あおい 中野誠也 臼田あさ美
監督:エドモンド・ヨウ
脚本:高橋知由
宣伝:S・D・P 配給:エレファントハウス
コピーライト:©2021映画「ムーンライト・シャドウ」製作委員会
<公式サイト>moonlight-shadow-movie.com
<公式Twitter>@moonlight_sdw <公式Instagram>@moonlight_sdw
※この記事は2021年09月10日に公開されたものです