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【後編】平安系絶望こじらせ女子・紫式部に学ぶ! 「ネガティブでかまわない、自己肯定術」

ヤマイナギ/六識

『源氏物語』の作者・紫式部が残した『紫式部日記』。それを読み解くと、前編で紹介したように、才女の彼女は「何もしらないバカのフリ」をして余計な敵を作らないという処世術で、本当の自分を隠して宮仕えライフを波風たてぬように送っています。

そんな彼女は、人付き合いが苦手で、傷つきやすく、不器用な平安系絶望こじらせ女子。たとえば、自分が仕える彰子のもとに天皇が訪れる日が近づき、まわりの女房たちが浮かれる中でもひとり、ため息ばかり。

優雅に池を泳ぐ水鳥を見て、「本当のところああ見えて水鳥だって大変なのだ。地に足のつかない生活。水面下ではもがいている……。私もそう! 地に足がつかない、つらくて不安定な人生を過ごしているの」と、ネガティブ全開です。きっと現代の働く女子の中にも、同じように将来への言いしれぬ不安を抱いている人は多いのでは?

そんな女子ド共感の『紫式部日記』を人気イラストレーターの小迎裕美子さんがマンガ化した『人生はあはれなり… 紫式部日記』。そこに描かれているのは、紫式部が悩む人間関係や仕事、嫉妬の数々。なかでも、ほぼ同時期に活躍した『枕草子』の作者・清少納言への嫉妬心は相当なものがあります。

地味でまじめな紫式部とは正反対の、明るく社交的な清少納言。自由にふるまい、人々の賞賛を受けてきた彼女に対して、「なんで人から嫌われないように我慢している私がむくわれないの!」と激しい妬みを持っています。うまく立ち回っている同僚に、イライラする。こんな紫式部の感情にも共感する女子は多いはず。

一方で紫式部は、誰かに嫉妬したり、ネガティブな思いを抱えたりするだけではなく、そんな自分をちゃんと認めようとする一面も。

たとえば、お暇をもらい久々に帰省したときのこと。宮仕えに出たくないといって慣れ親しんだ懐かしい家さえみすぼらしく感じ、宮中が恋しくなる紫式部。そのことに寂しさを感じつつも、「私の居場所はもうここではない。環境が変化すれば人の心も変化するのだ。現実を受け入れてなじんでいくしかない」と、宮中へ戻っていくのです。

そうして、いやいやだった宮仕えにも活路を見出し、世界最古の長編小説と言われる『源氏物語』を書き上げていきます。

宮中で、「さまざまな人生が人の数だけあり、険しい現実を生きているのは自分だけではない」ことを知った紫式部。ただ、それを知ったからといってスッキリと心が晴れることもなく生きづらさだけがいつも心にあった様子。そんな口に出せない思いを彼女は、長い長い『源氏物語』に託したのだとか。

今なお人の心を掴む壮大な物語を作った彼女の生き様を知れば、「今も昔も考えていることは意外と一緒」と、現代女子たちもほっと肩の力が抜けそうです!

参考文献:小迎裕美子、紫式部 著/赤間恵都子 監修『人生はあはれなり… 紫式部日記』(KADOKAWA メディアファクトリー刊)

(ヤマイナギ/六識)

※この記事は2015年04月19日に公開されたものです

ヤマイナギ/六識

ウエディング誌、女性情報誌の編集者を経て、現在は制作プロダクション「六識」に所属。「おいしい」「かわいい」「キレイ」が大好物な編集・ライターとして、広告、雑誌、Webを中心に、食、美容、マネー、ファッション、恋愛・結婚など働く女性に向けたライフスタイルを幅広く発信。ケータイ小説の書籍編集も手がける。

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