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ゴルフ・ボールのデコボコを無くすと、飛距離が縮むって本当?

老若男女を問わず、根強い人気を誇るゴルフ。スコアはもちろんのこと「何ヤード飛ばした!」的な話も多く聞くが、飛距離のおよそ33%は「ボールのおかげ」なのはご存じだろうか?

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空中を飛ぶ球の後ろには負圧が生じ、進行方向とは逆向きの力が生じるが、表面のデコボコが乱流を起こし負圧を小さくし飛距離を延ばす。バック・スピンをかけると遠くまで飛ぶのは野球のカーブやシュートと同じで、回転する球には「マグナス力」が発生するからだ。

表面のヘコみで、飛距離は1.5倍

空気は抵抗が大きく粘りが強い。飛行機が飛べるのもこの性質があってこそで、膨らんだ翼が空気の速度差を作り、上向きの揚力(ようりょく)を生み出しているからだ。球体にも空気が生み出す力がかかり、同じボールでも飛距離が変わったり、軌道が曲がったりする。

誰もが「そういうものでしょ?」と思っているゴルフ・ボールのデコボコも、飛距離を延ばすための工夫なのだ。

ピンポン玉のようななめらかな球体を飛ばすと、空気は表面にまとわりつくように流れる。すると球の真後ろに渦領域(うずりょういき)と呼ばれる空気密度が低い部分ができる。これがピンポン玉を吸い付けるような力を起こし、飛距離を縮めているのだ。

ゴルフ・ボールの表面に付けられたデコボコはディンプルと呼ばれ、空気の流れを乱し、遠くまで飛ぶようにするのが目的だ。流れが乱れれば遠くまで飛ばないのでは?と思うのも当然だが、渦領域の力を弱める働きをしている。

表面がなめらかだと空気は球に沿って流れ、渦領域が直後に発生する。ところがディンプルで流れを乱すと、球の表面から空気を「はがす」力が起き、渦領域は後方へずれ、ボールから離れた場所に発生する。そのためブレーキとして働く力が弱まり、ツルツルのボールよりも遠くまで飛ぶようになるのだ。

特許庁の資料から、ディンプルの有無と、およそのボールの高さと飛距離をあげると、

・ディンプルなし … (高さ)10m / (飛距離)115m

・ディンプルあり … (高さ)20m / (飛距離)170m

と、高さは2倍、飛距離は1.5倍ほどに伸びる。ボールを飛びにくくする抗力(こうりょく)係数が0.48から0.26と半分程度に減るからだ。「〇〇ヤード飛ばした!」と豪腕を自慢するのも良いが、およそ3分の1はディンプルのお陰であることをお忘れなく。

ボールを回転させると「翼」に変わる?

野球のカーブやシュートも、同様に空気の粘りの産物で、回転しながら進む球にはマグナス力が発生し、軌道が曲がるのだ。

飛んでいるボールを真上から見ている状態をイメージして頂きたい。わかりやすいように、視界の下から上に、時計方向に回転しながら進んでいることにしよう。このボールの右側には、空気を後ろへ押しのける力が働く。その結果、空気の速度が増し、わずかながらも空気の密度が低下する。

逆に左側には進行方向とは逆向きの力が起きるため、流れが遅くなる。するとボールの左右のバランスが崩れ、空気密度の低い右側に曲がるのだ。

この状態は、まさに飛行機の翼と同じで、

・翼の上側 … 距離が長い = 空気の流れが速い

・翼の下側 … 距離が短い = 空気の流れが遅い

の状態となり、上向きの揚力(ようりょく)が発生する。これは回転しながら飛ぶボールにも当てはまり、進行方向・下から上のバック・スピンをかけると、ボールの上側は速く空気が流れ、下側は遅くなり、やはり揚力が得られる。

重力のせいで「上昇している!」と見てわかるほどではないが、バック・スピンで飛距離が伸びるのは、飛行機と同じ原理なのだ。

まとめ

・ゴルフ・ボールのディンプルは、空気の流れを乱すため

・空気の流れが乱れると、進行方向とは逆向きの力が弱まる

・ディンプルがないと、飛距離は2/3程度に縮んでしまう

・カーブやシュート、バック・スピンは「マグナス力」の応用

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年12月07日に公開されたものです

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