どうしてクモの糸で作った布がないの?「クモの大量飼いはむずかしい」
身近な生物で糸を出す生き物が「クモ」。きっと昔の何もなかった時代なら、ここに目をつけ、クモの糸で布を作ってみようと思った人がきっと多かったはず。それなのになぜクモの糸でできた布は、身近な布製品として生まれることがなかったのでしょうか?
【女の子の口からクモが!こわい動画が人気に】
クモの大量飼いはむずかしい
糸を作る生き物として、代表的なのが「蚕」。蚕はカイコガの幼虫で、さなぎになる前に繭を作ってその中に入り、そこから羽化して飛び立っていきます。つまり糸の原料として使われる繭は、カイコガのさなぎなのです。
比べてクモは立派な成虫。蚕は幼虫からさなぎになるまでを扱えば、後は糸を取るだけなので狭いスペースでもたくさん飼育することができますが、クモは成虫なのでごそごそとあちこち動き回ります。さらにクモは虫を捕食して食べる生き物なので、クモ同士を一緒に飼うと共食いしてしまうことがあるのだとか。
そのためクモは蚕のように大量飼育ができず、クモの糸づくりが行われてこなかったのだと言われています。
クモの糸で布を作るには、たくさんの人間と大量のクモがいる!?
ただし実際にクモの糸で布を作ることを試み、成功したという人もいます。その人が織物専門家のSimon Peers氏。ただしクモの糸で作った布(3.4×1.2メートル)を作るには、100万匹以上のクモが必要で、布作りにあたった人の人数はクモを集めるのに70人、クモから糸を引き出すのに12人が必要だったとか。
クモの糸をわずか数メートル作るだけで、こんなにたくさんのクモと人間が必要なのです。昔の人がなぜクモの糸で布を作ろうと思わなかったのか、なんとなく理由がわかりますよね。
人工的なクモの糸で、布を作る試みも
ただし天然のクモの糸で布を作るのは難しいものの、現在では人工的にクモの糸を作り出して、さまざまなものに活用していこうという取り組みもあります。それが可能になったのは、バイオテクノロジー技術のおかげ。この技術を使えば、微生物にクモの糸を作ってもらうことができるのだとか。
また微生物なら大量に飼育することができ、しかも小さいため大量のクモの糸をとることができるのだそうです。
今までは目にすることのなかった「クモの糸の布」ですが、もしかするとこれからは当たり前のものになるかもしれません。クモの糸でできた布を使った、最新のスパイダー・ファッションなんてものもできるかも? クモの糸の、これからが楽しみですね。
※この記事は2014年12月07日に公開されたものです