相手の感情をコントロールするに、「アンカリング」を使う方法―交渉術においては最初の提示条件が大事
人間関係を築くのが苦手だという人は多いものです。表面上はうまく繕っていても、内心ハラハラドキドキ……。また、相手にお願い事をするのが下手だと悩んでいる人もいるでしょう。そんな場合には、アンカリングというテクニックが使えます。
【相手をあなたの思い通りに誘導させる情報の並べ方「プライミング効果」】
アンカリング1 パブロフの犬の条件反射
パブロフの犬という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。これはいわゆる条件反射のことで、アンカリングの典型例の一つです。ロシアの生理学者イワン・パブロフが犬の唾液分泌実験で見つけました。犬に餌をやる前にベルを鳴らす、という決まりを作って何回も餌やりを続けると、ベルを鳴らすだけで餌がもらえると思った犬が唾液を分泌させるようになったのです。
人もパブロフの犬状態にしてしまおう
このアンカリングを自分や相手に使用することができます。スポーツ選手の験担ぎがまさにこれに当たります。最高のパフォーマンスをしている自分と、例えば右足からクツを履くという行動を結びつけておけば、その行動をすることで最高の状態を引き出せるようになるのです。
普段の人間関係で言えば、例えば二人の雰囲気が良い状態では必ず親指を立てて笑顔を作るように心がけます。すると、多少雰囲気が悪いときでも親指を立てて笑顔を見せれば、和んで良い雰囲気に向かうことがあります。
アンカリング2 交渉術においては最初の提示条件が大事
交渉の場面でもアンカリングと呼ぶ技術を使うことがあります。例えばパソコンの値引き。はじめから4万円のパソコンより、定価9万円のものが4万円に値引きしてある方が買ってしまいやすいですよね。予め高値にアンカーを打っておくことで、そこからの相対評価で相手がおトクだと感じるように商品を見せることができるのです。
相手の認識をコントロールできる
このアンカリングを使えば、直球でぶつかれば納得されにくいであろうお願い事でも、受けてもらえる可能性が高まります。例えば親に結婚資金援助をお願いしたい場合、直接的に100万円ちょうだい、と言ってもイヤな顔をされるでしょう。
そこで「250万援助してもらえれば、家族も友達もみんな呼んでハワイで挙式披露宴ができるんだけど」と相談します。当然親は「ちょっと高過ぎるわ。その気持ちは嬉しいけれど」と思います。そこでうまくいけば、「100万円なら援助してもいいわ」となるかもしれませんよね。
アンカリングはどちらも、気持ちが明るくなって自分や相手の状態をより良くすることができます。これはだましているわけではありません。いわばWin-Winの関係になることができる心理テクニックなのです。
※この記事は2014年11月15日に公開されたものです