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「超能力」は実在する?―科学的アプローチの話

漫画、アニメ、映画などにしばしば登場する「超能力」。「テレパシー」や「サイコキネシス」など、普通の人間にはない特殊な力ですが、これは実在するのでしょうか。今回は、超能力に関する話です。

『と学会』運営委員にして、日本最強のデバンカー・皆神龍太郎先生にお話を伺いました。

●……デバンカーとは超常現象を懐疑的、科学的に検証する人のことです。

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超能力とは!? 3つに区分されている!

――「超能力」を実際に科学的に実証しようとした学問はあるのですか?

皆神先生 それに当たるのは「超心理学」ですね。超能力と呼ばれるものは一般的に次の5つとされています。

1.「透視」……肉眼で見えないはずの物を見ること。
2.「予知」……時間が経過してから起こることを知覚できること。
3.「テレパシー」……人の心を読んだり、音声などの通常の手段を使わず思念を伝達すること。
4.「PK」……一般に「サイコキネシス」と呼ばれるもので、思念だけで物体を動かすこと。
5.「死後生存」……肉体は物理的な死を迎えても、思念が生き続けること。

――4までは漫画やアニメでおなじみですが、5も超能力なんでしょうか?

皆神先生 「残留思念」なんて言葉を聞いたことはありませんか。最近の若い人は知らないかもしれませんが平井和正先生の小説『幻魔大戦』などに登場しますよ。映画『スター・ウォーズ』には、死んだジェダイの騎士の声が聞こえたりする描写がありますが、あれも一種の残留思念なのかもしれませんね。

つまり、精神は肉体を超越して存在する、人間の精神は物理現象を超えるという考え方で「超能力」を捉えているのでしょう。一般にはこの5つなんですけれども、超心理学では、以下の3つにまとめています。

超能力の区分

1.「ESP」……透視、予知、テレパシー
2.「PK」……さらにミクロPKとマクロPKに分かれる
3.「サバイバル」……死後生存など

ESPは、Extra-Sensory Perceptionの略で「感覚外知覚」、つまり五感以外の知覚能力を指します。情報伝達系の超能力ってわけですね。

――なるほど。超心理学は盛んなのですか?

皆神先生 まあひと言で言うと「気の毒な存在」です(笑)。超心理学自体は、何ら学問的に間違ったことをしているわけではありません。

もし人間にそんな未知の力があるとしたら、解明しようとするのは科学者として当然です。また、実験を行ってその力を確認するという科学的アプローチでその解明が行われるのであれば、これまた当然のことでしょう。

でも、例えばちゃんとした学者さんでも「超能力を研究しています」なんて言った瞬間に白い目で見られることが多いのです。科学的に確認しようとしているだけなのに、ですよ。ですから超心理学者は絶滅危惧種となっています。

――確かにお気の毒ですね。

皆神先生 まあ、絶滅危惧種になるのには他にも理由があってですね、要は超心理学による実験で超能力の実在がなかなか証明できんのですよ(笑)。

えーい! 6が出ろ!

――どんな実験をやってきたのですか?

皆神先生 いろいろあるのですけれども、古典的なものだと、例えばサイコロを使うものですね。

●「6が出ろ」と念じながらサイコロを振ると、6の目が出る確率はどうなるか!?

みたいなものです。
当たり前ですけど、6の目が出る確率は1/6です。それが通常は考えられないほど(統計的に有意に)6の目が出る確率が上がったとしたら、それは何らかの力が働いたと考えられる、と。

――面白そうですね。でも、6の目を出すコツをつかんだ、みたいな話になりませんか。

皆神先生 そりゃ自分で振ってたらそうなるかもしれませんけれど(笑)、そこは実験ではちゃんとやります。古典的な実験ですと、サイコロが自動で振られるような装置を使うわけです。

――そりゃそうですよね。で、どうなりましたか?

皆神先生 統計的に有意に確率が上がったという結果が出ました。

――えっ! だったら超能力があるんじゃないですか!

皆神先生 それがそうもいかんのですわ(笑)。

検証すると「超能力がなくなる」!?

皆神先生 「統計的に有意」っていってもですね程度があるわけです。その数字がすごく小さい。「サイコロを振ってる回数が少ないんじゃないの」などの批判も出ますし、当然、「本当か!?」という人が追試を行うわけですが……。

そうやって追試などを行っていくと、その有意な数字もだんだん小さくなって、「これは誤差の範囲でしょ」ってなっちゃうんですね。

――えーっ。

皆神先生 最近では、サイコロを自動で振る装置なんてものじゃなく、「熱雑音」を利用して徹底的に数字がランダムに出るようにして実験を行ったりします。サイコロを振る装置に「偏り」があるかもしれませんのでね。

――熱雑音って何ですか?

皆神先生 理科で習いませんでしたか? 空気中で分子が動き回ってますよね。いわゆるブラウン運動というやつです。これは物理的に完全にランダムな動きです。サイコロの代わりに、これと同じ性質を持つ電子の流れに対して念を掛けることで、念力の効果を測定しようとするわけです。

ここまで頑張って「偏り」を排除しながら実験を行うわけですが、やってみると最初はうまくいくようにみえても、長い目でみるとやっぱり超能力の効果ははっきりとは確認できないのです。

テレパシー実験「ガンツフェルト」

――他にどんな実験があるのですか?

皆神先生 「ガンツフェルト実験」というのが有名です。これは、五感を完全に遮断して行う実験です。

・ピンポン玉を半分に切って、その内側を赤色で塗ってこれで目を覆い視覚を遮断。
・ヘッドフォンを掛けてそこにホワイトノイズを流して聴覚を遮断。
・ゆったりしたところに寝て、体からも情報が入らないようにします。

このように、まあ寝ているような状態にした人に、送り手が自分の見ている映像や画像の情報をテレパシーで送る努力をします。

情報の受け手は、自分の頭に浮かんだ映像を次々語っていって、送り手が送ろう努力したものとマッチしたかを後で統計的に検定するという実験です。

――どうなりましたか?

皆神先生 超心理学者のディーン・ラディンによると、

1974年から2004年にかけて多くの人が3,000回にも及ぶガンツフェルト実験を行っていて、それを集計すると32%の確率でイメージの伝達に成功している。偶然に当たる確率は25%なので、これは有意な結果である。

てなことなのですが、この見解には多くの批判が寄せられました。「集計手法に問題あり」「集計し直しをしたらそんな結果にはならない」などです。これもやはり追試が進むと、統計的に有意だったはずの効果が次第に消えてしまいました。

また、見直しの結果は、先ほどのサイコロの話と同じで、「ほんのちょっと有意!?」「誤差なんじゃないの?」というものです。ですから、「超能力」というものは、もしですよ、万、万、万が一、もしあったとしても、

何万回もサイコロを振って、ごくちょっとだけその目を出す確率が上がるかもよ!

という程度のものです。まあ、残念ながら日常生活的には「ない」と考えてよいのではないでしょうか。もちろん、これから何か画期的な実験結果が出るかもしれませんけれども。

――ありがとうございました。

どうもやはりド派手な「超能力」というのは存在しないようでございます。ちょっと残念な気もしますね。

(高橋モータース@dcp)

※この記事は2014年10月17日に公開されたものです

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