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消火に使った水道料金は、だれが払う?

バーベキューや花火で確実に行いたいのが「火の始末」。気の緩みから火事が起きないよう十分に注意したいものだ。

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不幸にも火事になってしまったら、消火に使った水道料金はだれが支払うのか? 毎分2,000リットルもの放水能力を誇る消防車が30分間放水すると、お風呂240杯分もの水が使われる。目玉が飛び出すような請求書が来るのかと思ったら、料金はなんと水道局が負担することになっている。

ただし例外もあり、東京都の場合は、消防車に取り付けられたメーターをもとに、消防庁が水道料金を支払っているのだ。

30分の消火で2万円!

日本の火事の年間平均件数は、2008年から2012年の5年間で約4万8千件にも及ぶ。四半期ごとの件数と割合をみると、

・1~3月 … 14,418件 / 29.5%

・4~6月 … 12,632件 / 25.9%

・7~9月 … 10,739件 / 22.0%

・10~12月 … 11,061件 / 22.6%

となり、暖房を使う冬に多いのは当たり前の話だが、夏に起きる件数は10~12月と大差ない。このデータは家屋に限らず山火事なども含まれるため、レジャーでの火の不始末が多いといえよう。

消火作業には、どれくらいの水が使われるのか? 水を積んで移動する「水槽(すいそう)付消防ポンプ自動車」は毎分1,000リットル、ビル火災などで活躍する「大型高所放水車」は毎分3,000リットルの泡を放つことができる。

あいだをとって毎分2,000リットルと仮定すると、標準的な家庭のお風呂・250リットルを、わずか7.5秒で満タンにできる。30分間放水すると6万リットル=お風呂240杯分となり、2日に1回入れ直しても16ヶ月かかる量が、わずか30分で使われてしまうことになる。

6万リットルも使うと、水道料金はいくらになるのか? 東京都水道局の料金表から、標準的な呼び径13mmメーターに当てはめると、

・従量料金(6万リットル=60立方m) … 10,050円

・下水料金 … 8,680円

合計して消費税8%を加えても2万円ちょっとと、意外に安い。水道料金は、使用量が増えると単価が上がる仕組みだが、消防車3台がかりで18万リットルを使っても10万円でお釣りがくる。2ヶ月に1回の検針票を見て「高いな」と感じるかもしれないが、1リットルに換算すると、とてつもなく安価なのだ。

泣きをみるのは水道局?

消火に使った水道料金は、誰が払うのか? 火事を起こしたら請求書が届いたなんて話を聞かないのも当然で、なんと水道事業者が負担する仕組みになっているのだ。

まちで見かける「消火栓(せん)」は、水道法・第24条によって、

・水道事業者は、消火栓を用意しなければならない

・公共の消防用に使われた水は、料金を請求してはいけない

と定められている。設備を用意しなければならないわ、料金は請求できないわで、水道事業者の「ひとり損」なのだ。

ただし例外もあり、東京都の場合は消防庁が料金を支払っている。これは「地方公営企業法」のためだ。

自治体が運営する企業は地方公営企業と呼ばれ、東京都水道局もそれに含まれ、言い換えれば「東京都が運営する会社」である。この場合、地方公営企業法・第17条の2によって、消防に使った水道料金は自治体が負担すべきと定められている。

つまり、使用した消防庁=母体である東京都が支払う仕組みになっているのだ。

消火に使った水量は、どうやって計算されるのか? 驚くことに、使った水の量をはかるために、消火栓や消防ポンプ車にはメーターが取り付けられているのだ。

ただし、すべての消火栓にメーターが取り付けられているわけではないので、出動回数と放水時間から計算して「大まかな使用料」が支払われているようだ。

まとめ

・夏の火事は、10~12月と同程度の件数がある

・消防車が30分放水すると、水道料は2万円前後

・消火に使った水道料は、水道事業者負担が基本

・東京都の場合、消防庁が支払っている

1件30分で計算すると、年間1億円弱が消火の水に使われている。

料金を負担するのが水道局でも消防庁でも、もとをたどればみんなが納めた税金なので、火の始末は確実におこなおう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年08月10日に公開されたものです

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