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ひやむぎとそうめん、何が違う?「両方とも大きくはうどん」

6月に入ったばかりなのに、30℃を超える猛暑となった。お昼を「冷たいめん」で過ごしたひとも多いだろう。

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夏の風物詩・ひやむぎとそうめんの違いは直径だけで、本来の製法とは裏腹に、どちらも「細いうどん」として分類されている。対してそばには厳しい掟があり、「そば粉」が40%未満になると、そばどころか「めん」としても扱われないのだ。

手延べそうめん=手延べひやむぎ?

ひやむぎとそうめんは太さが違うだけで、どちらも正体は「うどん」だ。

岩波書店・広辞苑から特徴を抜粋すると、
・ひやむぎ … 細打ちにしたうどんを、ゆでて冷やして汁をつけて食べる
・そうめん … 小麦粉に食塩水を加えてこね、伸ばして天日で乾燥させる
と記され、ひやむぎはうどんの一種と考えることができるが、そうめんは、まったく別の製法で作られているので、材料だけをクローズアップして「うどん」の仲間と呼ぶのは少々強引だろう。だが、伝統的な製法は重視されず、現在はどちらも「細いうどん」として扱われているのだ。

農林水産省が定めるJAS法から「乾めん類品質表示基準」の「干しめん」の条件をあげると、
・うどん … 直径1.7mm以上
・きしめん … 幅4.5mm以上 / 厚さ2.0mm未満
・ひやむぎ … 直径1.3mm以上~1.7mm未満
・そうめん … 直径1.3mm未満
と、直径の違いしか定められていない。ただし「手延べ」の場合は、ひやむぎもそうめんも直径1.7mm未満としか定義されていないので、太さで判別することもできない。わずかな差で流しそうめんは「流しひやむぎ」に変わってしまうし、食べやすいようにと細く切ってしまうと、名古屋名物・きしめんは「単なるうどん」になってしまうのだ。

同じ麺でも、食べ方や温度によって呼び名が異なる。
ひやむぎは冷麦と記すように、冷たくして食べるのが当たり前だが、温めると熱麦(あつむぎ)になり、温かいそうめんは煮麺(にゅうめん)に名が変わる。うどんは温飩(うんとん)が語源とされているので「冷やしうどん」はかなり意味不明なネーミングになってしまう。

独自路線を歩むきしめんも、さかのぼると「ひらうどん」と呼ばれていたようで、現在もひらめん/ひもかわとも呼ばれる。キジ肉を入れたから、紀州(きしゅう)が発祥の「きしゅうめん」が変形して「きしめん」になったなど諸説あるが、うどんの仲間であることには違いない。

逆に、製法からみれば別物のはずの「そうめん」だけが、知らないあいだにうどんグループに組み込まれてしまったのだ。

そば粉が少ないと物体Xになる?

逆に「そば」には厳密なルールがあり、そば粉が少ないものは、存在すら許されていない。
同じく「乾めん類の日本農林規格」から、干しそばのおもな特徴をあげると、
・原材料 … そば粉/小麦粉/食塩/やまいもまたは海藻 以外はNG
・そば粉の割合 … (上級)50%以上 / (標準)40%以上
対して「干しめん」は、
・定義 … 干しそば以外のもの
・原材料 … 小麦粉/食塩/でんぷん/食用植物油/抹茶または粉末野菜 以外はNG
とされている。もし含まれるそば粉が40%未満になると「そば」と名付けられないのは理解できるが、少しでもそば粉が含まれると「干しめん」にもなれない。つまり、そば粉40%未満の製品は「そば」でも「めん」でもない、物体Xになってしまうのだ。

まとめ

・ひやむぎ/そうめんは、太さが違うだけ
・手延べ干しめんでは、ひやむぎ/そうめんに太さの違いがない
・製法は違うのに、JAS法ではどちらも「細いうどん」の意味
・そば粉40%未満のそば(乾めん)は、存在自体が許されない

ひやむぎにカラー麺が入っているのは、販売時にそうめんと間違えないための識別用、との説がある。その昔から「違いがわからないもの」として扱われてきた証拠と言えるだろう。

長年の謎が解けてすっきりしたが、どちらも「細いうどん」で片づけられてしまうと、さびしい気もする。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年06月06日に公開されたものです

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