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円安がすすむとどうなるの?「輸出企業はハッピー。輸入企業は、原材料が高くなり製品原価は上昇」

毎日のようにニュースで報じられる円安。輸出が増えて景気が良くなるはずなのに、2013年は過去最大の赤字となったのはなぜか?

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円安になると輸出に期待が寄せられ、平均株価が上昇するが、株価は「前評判」でしかないので、必ず実績が良くなるわけではない。期待ほど輸出が増えないどころか、輸入する原材料が高くなり、円と同様に日本の経済力が低下しているのだ。

円安で企業の評判が上がる?

円安とは、例えば1ドル100円が110円になる状態だ。10円高くなっているのに?と錯覚しがちだが、「1ドルの製品を買うのに何円必要か」と考えれば円の価値が下がっていることが理解しやすいだろう。

円安のメリットは輸出だ。海外向けの商品のほとんどはドルで取引されるので、売値が100ドルの場合、1ドル100円で売れば10,000円、1ドル110円に下がると11,000円が手にはいる。91ドルまで値下げしても損しないので、輸出がメインの会社にとって円安は大変望ましい状態だ。

これは株価にも反映され、円安になると上昇する傾向がある。

いま経済がどのような状態なのかを知る目安として、日本を代表する225社の株価を平均した「日経平均株価」がある。簡単にいえば、会社の業績が良くなる「だろう」=株価が上がる、の構造なので、逆も真なりで、平均株価が上がる=景気が良くなる「だろう」と推測できる。

2013年10~12月の1ドル/円と、日経平均株価の終値を比較すると、

・10月平均 … 97.77円 … 14,329.02円(146.55ドル)

・11月平均 … 100.17円 … 14,931.74円(149.06ドル)

・12月平均 … 103.47円 … 15,655.23円(151.29ドル)

・もっとも円高(10/7) … 96.69円 … 13,853.32円(143.28ドル)

・もっとも円安(12/30) … 105.15円 … 16,291.31円(154.93ドル)

と、円安になるほど日経平均株価が上がるのは、ひとえに輸出で稼ぐ企業が多いからだ。

輸出よりも輸入が増えた!

それでは日本はもうかっているのか? 答えはNoで、財務省の報道発表「平成25年分(輸出確報;輸入速報(9桁))」から、同じく10~12月のおよその輸出価格、輸入価格、差引価格(円)をみると、

・10月 … 6.1兆(18.6%) / 7.2兆(26.2%) / -1.1兆(97.2%)

・11月 … 5.9兆(18.4%) / 7.2兆(21.2%) / -1.3兆(35.6%)

・12月 … 6.1兆(15.3%) / 7.4兆(24.7%) / -1.3兆(102.0%)

で、カッコ内は昨年対比、12月のデータは「速報」を含むので修正される可能性もあるが、赤字がくつがえるほどの違いは生じないだろう。10月vs12月を比較すると輸出はほぼ同額、昨年対比は12月のほうが伸び悩んでいる。

たった3か月分のデータとはいえ、6円も安くなったのに「効果あり」と呼べる状態ではない。その結果、2013年の輸出伸び率は9.5%アップに留まり、11兆円もの大赤字となってしまったのだ。

平均株価は上がったのに、どうして赤字が増えたのか? 答えはきわめて簡単で、日本は輸入大国でもあるからだ。円安は輸出に有利だが、輸入にとってはつらい局面となる。慢性化している燃料不足に加えて値上がりしているため、円安でなくても製品原価は上昇してしまう。

もちろん個人消費も含まれるので金額だけでは判断できないものの、この局面では輸入を重視するべきだろう。

最悪なのは、輸入~輸出の時間差だ。仕入れた材料を加工し輸出するまでには時間がかかる。そのため、円安のときに高く仕入れ、円高で安く販売せざるを得ない場合もある。年明けから円高傾向になっているので、今後は売れば売るほど損をする可能性・大だ。

まとめ

・「円安=輸出しやすい」の期待感から、平均株価が上昇した

・思ったほど、輸出が増えなかった

・輸入額も上昇し、結局は赤字

円安から始まった株価の上昇は、幻想にすぎなかったようだ。

一連の円安はなにが目的だったのか? 輸出強化ならまだしも、株価の値上がりで景気よく「みせる」ためだったなら、今後はさらに厳しい展開になるだろう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年02月09日に公開されたものです

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