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アインシュタインが犯した人生最大の過ちとは?

「アルバート・アインシュタイン」…この名前をご存知の方はきっと多いでしょう。

【宇宙空間はいったい何度?「-270℃」】

そう、かの有名な「相対性理論」を提唱した理論物理学者ですね。

現代物理学の父とも言われるほど数多くの業績を挙げたまさに”天才”ですが、今回はそんな彼が生涯最大の失敗だったと悔やんだエピソードをご紹介したいと思います。

アインシュタインが考えた宇宙像

現在の宇宙は膨張していると考えられています。

この事実は、1929年にアメリカの天文学者「エドウィン・ハッブル」によって発見されたものでしたが、それ以前に考えられていた宇宙というのは永久不変の姿でした。

そして、それはあのアインシュタインですら例外ではありません。彼が考えていた「静止宇宙モデル」と呼ばれる宇宙像も、宇宙全体を大きくとらえれば、どこを見ても均一で特別な場所はなく、なおかつ静止していて永遠に変化しないというものでした。

天才が抱いた先入観

このように、宇宙は変化しないという固定観念は、アインシュタインに間違った思い込みを与えてしまいます。

1917年、アインシュタインは自らがまとめた一般相対性理論から宇宙の様子がどうなっているかを解明するという壮大な試みに着手します。その際に採用したルールというのが、上でご紹介した静止宇宙モデルでした。

さらに、彼は1916年に一般相対性理論から「アインシュタイン方程式」と呼ばれる数式を導き出していました。これはニュートンの万有引力の式をもっと強い重力まで拡張したもので、簡単に言えば、空間に物質があるとき、その物質の引力によって周りの空間がゆがむことを表す数式です。

ここから自らの宇宙像を作り上げようとしたアインシュタインでしたが、いざこれらに値を入れて計算してみたところ宇宙は重力によっていずれ収縮しつぶれてしまうという、彼の意に反した結果が出てしまったのです。そこで困った彼は、アインシュタイン方程式に「宇宙定数(宇宙項)」と呼ばれる項を新たに設け、これを斥力(反重力)として扱ったのでした。

宇宙定数は人生最大の過ち?

しかし、ただ単に宇宙のバランスを保ち、静止宇宙モデルを成立させるためだけに採用した宇宙定数自体には、何の科学的根拠もありません。冒頭でご紹介した、宇宙は膨張しているというハッブルの発見は、当時の人々に衝撃を与えましたが、それはアインシュタインにとっても同じでした。

宇宙は永遠に変化しないものであると考えていた彼は、「宇宙定数を加えたことは人生最大の過ちだった…」と悔やんだそうです。

宇宙定数はやっぱり存在した!?

……ただし、この話にはまだ続きがあります。

というのも、近年になって宇宙はただ膨張しているだけではなく、その膨張速度は加速していることが分かってきました。しかし、仮に宇宙が誕生したときの膨大なエネルギーによって現在も膨張を続けているとしても、それはしだいに減速するべきであって、どんどん加速するとは考えにくいのです。

つまり、加速膨張させるだけのエネルギーが宇宙のどこかに存在するはずで、今はその未知の力を「ダークエネルギー」と呼んでいます。そして、このエネルギーこそアインシュタインが設けた宇宙定数に相当するというのが、現在の研究者たちの認識なのです。

そういう意味でとらえれば、アインシュタイン最大の過ちは大きな成果だったと言えるかもしれません。

まとめ

物理学の父と呼ばれるほど天才と謳われたアインシュタインでさえ、宇宙は永久不変なものでなくてはならない…という先入観から、つじつま合わせの宇宙定数を導入しました。彼は、これを人生最大の過ちと思ったままこの世を去りましたが、その後の研究によりこの宇宙定数に相当する未知のエネルギーが存在することが分かってきました。

今もしこの事実を知ったら、アインシュタインはいったいどんな気持ちになるのでしょうね…。

(文/TERA)

著者プロフィール

TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年02月06日に公開されたものです

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