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もしもアルミに磁石を近づけたら「電流が起こる。応用したのが冷蔵庫のモーター&IH調理器」

有害な宇宙線から地球を守る磁力。GPSなどなかった時代には、方角を知る重要な役割を担っていたのはご存じの通りだ。

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人間とは切っても切れない存在の磁力は、不思議な性質を持っている。磁石につかないはずのアルミや銅が動いたり、電気を発生させる。電気のメーターも新幹線のブレーキも、磁石が発生させるうず電流で動いているのだ。

磁石に反応するアルミと銅?

簡単な実験をしよう。用意するのは、

・1円玉

・10円玉

・磁石(なるべく強力なもの)

の3つだ。

実験も簡単で、まずどちらの硬貨も磁石につかないことを確認しておこう。アルミや銅は非磁性体と呼ばれ、鉄のように磁石に吸い寄せられないのだ。

つぎに1円玉をテーブルに置き、その上で磁石を左右に振る。硬貨すれすれに近づけ、なるべく速く動かすのがポイントだ。すると1円玉はあたかも磁石に反応したように動く。10円玉は重いので磁力が弱いと分かりにくいが、アルミと同様に磁石から逃げるように、進行方向に動くのをその目で見るはずだ。

磁石につかないのにナゼ?と思うのが当然だが、原因は磁力以外の何ものでもない。ただし、鉄のように引き寄せられたり、同極の磁石が反発し合うように、磁力が直接作用しているのではなく、アルミや銅に電気が発生するのがポイントで、電気が磁力を受けて力を生み出している。

これはフレミングの法則と呼ばれ、電気が流れる導線に磁力を与えると、力が発生するのだ。

この実験を順に説明すると、

・磁石が硬貨に電気を起こす

・その電気が、磁力によって力を生み出す

その結果、磁石に影響されないはずのアルミや銅の硬貨が動いたのだ。

スゴイぞフレミング!エブリバディ・カモン!

このように発生する電気は「渦(うず)電流」と呼ばれ、金属に渦を巻くように電気が流れるのが名前の由来だ。

生活の味方・うず電流!

これって非日常的過ぎでしょ?と思うあなたは、家のまわりを見回して欲しい。どの家にもある電気のメーターは、まさにうず電流で動いているのだ。

正式名称・積算電力量計の中で、円盤が回るのを見たことがあるだろう。その円盤はアルミ製で、うず電流と磁石が生み出す力によって回転しているのだ。

モーターで回っているンじゃないの?と思っていた方が多いだろうが、その方法では30A(アンペア)契約でも最大100V×30A=3,000Wも流れるため、巨大なモーターが必要になってしまう。それ以前に、モーターのように多大な電気を消費するメーターでは、そんなに使った覚えはない!ってクレームになってしまう。

意外な利用方法は、電車のブレーキだ。自転車のブレーキは車輪にゴム製のパッドを押し付け、力を熱に変換して減速するのが一般的だが、重量も速度もケタ違いの電車では、この方法では多大な熱が発生してしまう。市販の自動車でさえ触れないほど高温になるぐらいだから、特急クラスになると熱でブレーキが壊れてしまう。

そこで、車軸に取り付けた円盤の両側に電磁石を装備し、うず電流を発生させ、減速力を生み出しているのだ。円盤と電磁石は接触していないので摩擦も熱も起きず、すり減る心配もない。実にクールなブレーキなのだ。

磁力を受ける金属を、動けないように固定したらどうなるのか?この場合、発散できない運動エネルギーは熱へと変わる。

IHと呼ばれる電磁調理器がまさにこの原理で、ヒーターやジャーの名がついているものの、正体は強力な電磁石で、簡単に言ってしまうと電磁石の磁力→金属→うず電流→熱に変わる、の仕組みだ。

ただし、金属のそばに磁石を置いただけでは、力も熱も発生しない。磁束の変化、つまり磁か金属のどちらかが動かないと渦電流は起きないので、磁石を近づけたり遠のけたりするか、金属を回転させるなど工夫が必要だ。永久磁石の名ながらも、近くに置いておくだけでは何も起きないので、永久機関は作れない。残念!

まとめ

永久磁石と人力で、IHヒーターが作れるのか、また新たな疑問が生まれた。

ムダの香りがプンプンするが、結果はまたの機会に報告しよう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年01月24日に公開されたものです

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