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もしもセメントを浴びてしまったら「絶対水を浴びてはいけない」

もしもセメントを浴びたらどうすれば良いのか? すぐにシャワーを浴びたい気持ちはわかるが、水と混ぜると下水が詰まってしまうし、膨大な熱を発するのでやけどの原因となる。まずは全身を掃除機で吸い、それから大量の水で流すのが良さそうだ。

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セメントは1年間固まらない?

セメントのおもな成分は石灰石、粘土、石こうなど、およそ水とは無縁の素材から成り立つ。これがビルやダムの材料になるのだが、混ぜる物と比率によって呼び名が異なる。代表的なのは、

・コンクリート … セメント:砂:砂利 = 1:3:6

・モルタル … セメント:砂 = 1:3

・ノロ … セメントのみ

で、強度が必要な部分はコンクリート、ブロックやレンガを積み重ねるにはモルタルと使い分ける。ノロは滑らかだが強度面では一番弱く、補修用として使われるのが一般的だ。

セメントに水が必要なのはなぜか?理由はセメント内部で起こる水和(すいわ)反応だ。水和とは、水が他の分子を取り囲むようにくっついた状態を指す。セメントの場合、この状態になるとセメントゲルと呼ばれる微細な結晶が生まれ、他のセメントゲルと結びついて隙間を埋める。

やがて水分が抜けて硬化し、強力なコンクリートに生まれ変わるのだ。

水と混ざったセメントは5~6時間後に固まりはじめ、その後の時間と強度をあげると、

・3日後 … 20%

・1週間後 … 40%

・4週間後 … 80%

と意外に遅い。完全に固まったと呼べる状態になるには、なんと1年程度を要する。なかには30分程度で固まる速乾セメントなども存在するが、普通のセメントを浴びてもすぐには固まらないので焦ることはない。

ただし、硬さの話だけなら。

セメントでお湯がわく!?

セメントが怖いのは、固まる際に熱を発生することだ。これは水和熱と呼ばれ、セメント1gあたりおよそ270~330J(ジュール)を発する。1Jは約0.24calに相当するので、あいだを取って300Jで計算するとおよそ72cal、つまり1gの水の温度を72℃上げるエネルギーに匹敵する。

水温20℃からスタートすればプラス72℃で92℃と、もう少しでカップラーメンが食べられる温度まで沸かすことができるのだ。

この熱でどんどん乾いていくのだが、2日間ぐらいで急激に温度が上がり、コンクリートがひび割れてしまうこともある。そのため硬化中は湿らせたマットで覆う、水をかけるなどして高温になるのを防ぐ。固まる際の熱は、深刻な問題なのだ。

もしもセメントを浴びたらどうなるのか? 乾いたセメントならすぐに大事には至らないが、水と混ざっていたら1秒でも早く対処しなければならない。

一般社団法人・日本クレーン協会のwebによると、人体の比熱、つまり熱の伝わりやすさは0.83とされているので、セメント1gがからだに与える熱量は72×0.83=およそ60℃となり、触れている部分は体温と合わせて100℃近くになる。

「セメントでやけど」は、これが原因だ。こうなると水をかけたくなるのが人情だが、セメントにとってさらに好条件を与えるようなものだから、いきなり水をかけるより、まずはできるだけ払い落しておくのが良いだろう。

乾いたセメントならなおさらで、シャワーで洗い落とそうなど思ってはいけない。あれば掃除機で吸い取り、なければ全身を払ってセメントを落とし、その後に豪快すぎるほどの水量で洗い流そう。

まとめ

まとめると、

・水が混ざると1gあたり300Jの熱を発する

・肌に触れたセメントは、乾く際に100℃相当

ヤバいことだらけだが、水と混ざらなければ熱を発しない。固まり始めるまで5~6時間あるので、落ち着いて対処しよう。

セメントがこんなに高温になるとは知らなかった。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年01月21日に公開されたものです

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