お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

宇宙空間はいったい何度?「-270℃」

私たちが住む地球は、太陽からの光と地球の大気のおかげで適度な気温に保たれているため、とても快適に暮らすことができます。

【イプシロンロケットって何?何がすごいの?】

しかし、地球に近くても大気がほとんどない月では、摂氏-170℃~+110℃となり、とても寒暖の差が激しくなります。

それでは、何もない宇宙空間はいったい何度なのでしょう。今回は、そんな素朴な疑問についてお話したいと思います。

そもそも温度とは…

宇宙空間の温度を計測するにあたり、まずは「温度」とは何かを考えてみましょう。

物質が温度を持っているということは、その物質を構成している分子や原子たちが運動していることを表します。

つまり、温度とはそれらの運動エネルギーを計測した値を示しています。言い換えれば、分子や原子が激しく運動すればするほど、その温度が上昇していくわけです。

さらに、分子たちが運動するときには、その運動エネルギーに応じた波長の電磁波を放射、あるいは吸収しています。

…と言われても、あまりピンと来ないかもしれません。

けれども、実は電磁波(紫外線・赤外線・可視光線・X線…)と温度の間には密接な関係があります。

たとえば、私たち人間は36℃程度の体温ですが、その温度に見合った電磁波として、常に赤外線を放射しています。

日常生活を送っている中で、人体が赤外線を放射しているという感覚はないでしょう。でも、赤外線センサの付いた自動ドアやライトが反応するのは、人が赤外線を放射しているという確固たる証拠です。

また、温度が低ければ低いほど放射する電磁波の波長は長くなりますので、電磁波の波長を調べればその温度が分かります。

サーモグラフィーのような温度計測装置は、物体から放射されている電磁波(主には赤外線)をキャッチし、その波長を温度換算して表示させるという仕組みになっています。

宇宙空間の温度は?

それでは、いよいよ本題に入りましょう。

宇宙空間の温度はいったい何度なのか…?

太陽のように熱源になるものが何もないところは、きっと寒くなりそうですよね。

…実はその通りです。答えを言ってしまうと、宇宙空間の温度はおよそ3K(ケルビン)であることが分かっています。

ケルビンは絶対温度の単位で、3Kは私たちが普段使っている摂氏に直すと-270℃となります。やはりとても寒いですね。

ノイズからの発見 ~宇宙マイクロ波背景放射~

それにしても、宇宙空間の温度なんて、どのようにして分かったのでしょう。

なんとそれは偶然の産物によって発見されたものでした。

その物語は1960年代半ばのアメリカにさかのぼります。

当時、ベル電話研究所で働く物理学者「アーノ・ペンジアス」と「ロバート・W・ウィルソン」は、アンテナで受信する電波からノイズ(雑音)を減らすための研究をしていました。しかし、その研究の過程で、アンテナをどの方向に向けても絶対に取り除くことができないノイズを発見します。

彼らは、何とかこのノイズを除去しようと試みますが、取り除けないどころか、その発生源すらも分かりませんでした。

そこでいろいろ調べていくうち、彼らは1つの結論に達します。その結論とは、このノイズはアンテナをどの方向に向けても受けることから、宇宙から届く電磁波によるものではないかというものでした。

これが、後に「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれるようになった電磁波です。

宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙のあらゆる場所から飛んでくる電磁波で、その波長から絶対温度3K(摂氏-270℃)であることが分かりました。

ここから、宇宙空間の温度が摂氏-270℃であると言えるわけです。

まとめ

私たちが住んでいる地球は太陽エネルギーのおかげで快適な温度に保たれていますが、何も無い宇宙空間は、絶対温度3K(摂氏-270℃)しかなく、とても寒いことが分かりました。

しかも、それは宇宙とは直接関係のないアンテナの研究から発見されるという、まさに偶然の産物だったわけです。

(文/TERA)

著者プロフィール

小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年01月21日に公開されたものです

SHARE