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氷が水に浮くのは奇跡?―水が起こす日常の不思議

地球上の至るところにあって、私たちにとっても身近な存在である水。そんな水ですが、実は特殊な性質を持った物質でもあります。

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そこで今回は、普段私たちが生活している中で水が起こしている、ちょっとした不思議に少し目を向けてみたいと思います。

水と氷と水蒸気

水は、液体としての状態のほか、氷のような固体や水蒸気のような気体に変化することができます。

水の分子は、「H2O」と書くことからも分かるように、1つの酸素原子と2つの水素原子から構成されていますが、これが氷(固体)→水(液体)→水蒸気(気体)と状態変化するのは、その分子の運動に違いがあるためです。

そして、この違いは温度によって生まれます。

まず、温度が低い状態=固体の場合ですが、このときは分子同士が強い力(分子間力)で結ばれて規則正しく並んでいるため、氷のように固く安定した形を保つことができています。

これが、温度が上がって液体(水)になると、熱運動が激しくなります。分子間力も固体の時より弱くなり、分子同士の位置も自由に入れ替わります。そのため、容器の形などに合わせて、自由に変化することができるわけです。

さらに温度が上がって気体(水蒸気)になると、もう分子間力はほとんど働かず、分子同士の距離も離れていきます。液体が気体に変化すると体積が大きく増えるのはこのためです。

氷が水に浮くという奇跡

グラスに入った水の中に氷を入れると、氷は浮かび上がってきます。

「えっ、そんなの当たり前でしょ?」と思うかもしれませんが、これは実に珍しいことです。

氷が浮かぶということは、水より氷の密度の方が小さいことを意味しています。

けれども、同じ重さの物質は、固体→液体→気体の順に密度が小さく(体積が大きく)なっていくのが一般的で、水のように固体の方が液体よりも密度が小さくなる(体積が大きくなる)性質を持つ物質は、他にはケイ素などわずか数種類しかありません。

またこれらの性質は、地球の環境にもとても大きな影響を及ぼしています。

もしも氷の方が水よりも密度が大きかったとしたら、一度凍った海の水はそのまま海底に沈みます。太陽の熱も届かない海底では、きっとその氷は溶けずに残り続けることでしょう。すると、海は海面と海底の両方から冷やされることになり、今よりも水温は下がるはずです。

寒い地域では海全体が凍ってしまうかもしれません。

そうなれば、地球の気候も今とは大きく異なっていたことだと思います。

ちなみに、水の場合はおよそ4℃の時がもっとも密度が小さくなりますので、海底に近い部分は、たとえ北極のような氷点下の地域でも4℃近くに保たれます。そのおかげで、寒い地域の海でも魚などの生物が生きていけるわけです。

どうして洗濯物が乾くのか?

洗濯物を干しておけば、やがて乾きます。雨が降ってできた水たまりも、晴れれば消えて無くなるでしょう。

ふと考えてみると、これらも不思議な現象と言えるかもしれません。

学校で習った通り、水は100℃で沸騰して、水蒸気という気体に変化します。でも、洗濯物や水たまりの水が100℃に達しているとは到底思えませんよね。

ではどうして洗濯物が乾くのでしょうか…?

その理由は、水が気体に変化する方法として、沸騰以外に蒸発というパターンがあるからです。

沸騰というのは、1気圧で水がおよそ100℃に達した状態を指します。この状態になると水はどこからでも気体になることができます。鍋でお湯を沸かしたとき、鍋底からもたくさんの泡となった水蒸気が出てくるのはそのためです。

一方、蒸発というのは液体の表面(空気に触れている部分)が気体に変化する状態を指します。蒸気圧が飽和蒸気圧に達するまで、つまり湿度100%になるまでこの蒸発は続きます。

ちなみに、蒸発が起こるとその周りの空気の湿度は高くなります。

風が吹くと洗濯物が早く乾くのは、湿度の高くなった空気が湿度の低い空気と入れ替わり、水がより蒸発しやすい環境を作り出しているからです。

まとめ

私たちにとって身近な存在である水ですが、他の多くの物質とは違った性質を持っていることが分かりました。
氷が水に浮いたり、洗濯物が乾いたりといった、普段当たり前だと思っていることも、よくよく考えてみると実に奥の深い現象であると言えるでしょう。

こうして、日常のちょっとしたことに疑問を持つことが、別の新たな発見につながるかもしれませんね。

(文/TERA)

著者プロフィール

小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年01月21日に公開されたものです

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