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雑学 生活

自分で国を造る人たち―てんやわんやの歴史あり「シーランド公国」

DIYブームだそうで、ホームセンターで材料、工具を買ってきて何でも作ってしまう人が増えているのだとか。Do It Yourselfの精神で、大きな物を作ってみませんか? 「国」なんかどうでしょう? 「そんなもの、造れるわけないじゃないか」って思いますか?

【行ったことがある日本の世界遺産の数「0 32.4%」】

いえいえ実践している人がいるのです。

『と学会』運営委員にして、日本最強のデバンカー・皆神龍太郎さんに、そんな「トンデモ国家」についてお話を伺いました。

■ワンルームで国!?

――勝手に国を造っている人がいるということですが。

皆神先生 海外版『地球の歩き方』といわれる『Lonly Planet』というガイドブックのシリーズがあります。秋葉原できょろきょろしている外国人が、よく手に持っていたりする本です。

各国ごとに分冊された旅行ガイドとなっているのですが、その中に『MICRO NATIONS』という本があります。これは世界各地にある「自称ミニミニ国家」を紹介したものです。

――自称国家ですか?

皆神先生 はい。そもそも国家って何でしょうかという話です(笑)。世界中に、「ここはオレの国!」と国境線を引いて、国を造っちゃった人がたくさんいるんですよ。

――どこに線を引くんですか? 人が他にいない場所ってそんなにありますか?

皆神先生 例えばこの「Lovely」という国ですが……。

――なんだかワンルームみたいですけど。

皆神先生 みたい、というか確かにワンルームです。場所はロンドンにありますね。国家元首は、この部屋に住んでいるダニー・ウォレスという人で、2005年に設立されています。

――イギリスの首都のロンドンに、勝手に国を造ることができるんですか?

皆神先生 イギリスからは無視されているんだと思いますよ、たぶん(笑)。勝手に言っているだけの自称国家ですからね。

――こういうのは造っても仕方ないのでは……。

皆神先生 ところがですね、イギリスにも認められちゃった「自称国家」があるのです。「シーランド公国」というのですが。

■シーランド公国の誕生!

皆神先生 シーランド公国は、北海のイギリス本土・ブリテン島から10kmほどにある一種の人工島です。

大きさは、さっきのワンルームよりは大きくて、テニスコート2面分くらい。もともとは第2次世界大戦中に建設された海上要塞です。巨大な柱を二本、海に沈めて、海面に出た柱の頭の間にコンクリートの板を橋渡ししたもの、というとイメージしやすいでしょうか。

この板部分に高射砲や住居設備を作ったものです。

――戦時中のドイツからの防空用施設だったわけですね。

皆神先生 はい。海上要塞の一つとして造られたのですが、戦争が終わってからは放棄されていたのです。

ここに1967年、元イギリス陸軍少佐だったパディ・ロイ・ベーツという人物が乗り込んできて、突如「シーランド公国」を名乗って独立を宣言、自らをプリンスのロイ・ベーツ公と称したんです。

――むちゃくちゃですね。

皆神先生 ここからが面白いんですよ。頭にきたイギリスが、このベーツ公を裁判で訴えました。立ち退き請求です(笑)。ところが、1968年に出た司法側の判断は、

この施設が当時のイギリスの領海外に当たっていたために、イギリスの司法は及ばない管轄外である。

となったのです。

――ということは、独立国として認められたということですか?

皆神先生 まあ、実質的には誰も「関わりたくない」ということじゃないでしょうか(笑)。

■クーデター勃発! そして奪還!

――国民はいるんですか?

皆神先生 ベーツ公の奥さんやお子さんが国民だったのですが、「クーデター」が起きたことがあるんですよ。

――えっ?

皆神先生 シーランド公国は独立はしても、何も産業がないわけですよ。そこでベーツ公がカジノを作ろうと画策し、とあるドイツ人と手を組もうとした。

ところが、このドイツ人が悪いやつでした。「クーデター」を計画して、シーランド公国を乗っ取ってしまったんですよ!

そして、ベーツ公のお子さんだったマイケルくんを人質に取って、ベーツ公をシーランド公国から追放しちゃったんです。

――すごい展開ですね。

皆神先生 でも元陸軍少佐のベーツ公も黙っているわけがなくて、イギリスで同志を募って、今度はベーツ公のほうがシーランド公国をヘリで急襲します。

――元軍人ですもんね。

皆神先生 ベーツ公は奪還作戦を成功させて、シーランド公国を取り返します。そして悪いドイツ人は幽閉されちゃいます。彼は、シーランド公国の「パスポート」なんか持ってたんですよ。つまり公国の国民とみなされて、国家反逆罪に問われちゃったわけですね(笑)。

罰金は4万マルクとも7万5千マルクとも言われています。

――それは誰が払ったんですか?

皆神先生 ここで当時の西ドイツ政府が動きます。なにせおかしな国の国民かどうかはともかく、もともと西ドイツの人間でしたから。西ドイツ政府はイギリスに働き掛けたのですが……。

イギリスは、先の司法判断を盾にして「知らん」と(笑)。

――ひどいですね。

皆神先生 仕方がないので、西ドイツ政府は駐英の外交官をシーランド公国に派遣して、人質の「解放交渉」をしました。ベーツ公は大喜びだったそうです。

――なぜですか?

皆神先生 だって、西ドイツの外交官がやって来るということは、西ドイツは正式にシーランド公国を国として認めているということですからね(笑)。

――そのドイツ人はどうなったんですか?

皆神先生 国外追放です(笑)。罰金はうやむやになったそうです。ただ、そのドイツ人も転んでもただでは起きませんでしたよ。西ドイツに帰り着いてから、「シーランド公国亡命政府」を樹立しました。

――何かの冗談みたいですね。

皆神先生 イギリス人得意のブラックユーモアみたいですが、全部本当です(笑)。

――シーランド公国はまだあるんですか?

皆神先生 あります! いまでもシーランド公国のIDカードとか、コインとかマグカップとか売ってますよ。でも、初代ベーツ公、パディ・ロイ・ベーツは2012年に他界し、いまは息子のマイケルくんが二代目を継承しています。

ウソのような騒動を経て、まだ存続しているシーランド公国は、「国って何だろう?」ということを人に考えさせる、いい教材になると思います。

世界中の国は、そもそも誰かが「ここが国だ」と宣言したことから始まっているわけで、それを成立させているものは一体なのか、「Micro Nation」はそんなことを考えさせるわけです。

いかがだったでしょうか。シーランド公国をめぐるドタバタは、映画にでもなりそうな内容です。一度行ってみたいと思いませんか? 話の種にはなりそうですよ。

⇒『シーランド公国』の公式サイト
http://www.sealandgov.org/

写真:(C)Ryan Lackey

(高橋モータース@dcp)

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