水が持っている驚きの力とは?
私たち生物にとって、無くてはならないものの1つが水です。ですが、皆さんはこの水のことをどれだけ知っているでしょうか。
そこで今回は、そんな身近な存在である水が持っている驚異の力にスポットを当ててみたいと思います。
硬水と軟水の違いとは
私たちが日常的に使う水の中でも、なじみ深いものの1つがミネラルウォーターではないでしょうか。
このミネラルウォーターを分類するときに、よく「硬水」や「軟水」という言葉を耳にすると思いますが、これは水の硬さのことを言います。
水の硬さは「硬度」という単位で数値化され、これは、1リットル中の水にカルシウムやマグネシウムがどれほど溶け込んでいるかを表しています。
具体的には [硬度=カルシウム濃度(mg/l)×2.5+マグネシウム濃度(mg/l)×4.1] という数式で求めることができ、WHO(世界保健機関)では、硬度120以上を「硬水」、それ以下を「軟水」と定義しています。
ちなみに、日本では硬度300以上を「硬水」と呼ぶのが一般的です。
なお、このような違いは、地下水として地層内に滞留している時間やそこに含まれる石灰岩の量によって生まれるもので、一般的に日本の水は「軟水」が多く、ヨーロッパなどの水は「硬水」が多い傾向にあります。
硬水と軟水を使い分けよう
それでは、硬水と軟水はどのように使い分けたらいいのでしょう。
先ほどご説明したとおり、硬水の特徴は、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を多く含んでいる点です。
カルシウムやマグネシウムは、様々な物質と結合しやすい性質を持っています。
そのため、硬水はアクを取り除きたい肉料理のような場合には向いていますが、その反面、石鹸と結合するとその働きを弱めて泡が立ちにくくなってしまうという性質もありますので、洗濯にはあまり適していないと言えるでしょう。
また、マグネシウムは腸を刺激するため便秘解消にも効果があります。
一方、軟水は炊飯のほか、煮物などの和食にも適しています。特に炊飯の場合には、硬水を使うとカルシウムがお米の食物繊維を硬くして、パサついた感じになってしまうので避けたほうがいいでしょう。
このような特徴を意識しつつ、それぞれの用途に応じて硬水と軟水をうまく使い分けられるといいですね。
水が持つ溶解力
このように水の中にさまざまな物質が溶け込んでいるのは、その「溶解力」によるものです。
溶解力とは、物を溶かす力のことですが、水はひじょうに強い溶解力を持っています。
そのため、地球の自然界において100%の純度の水というのは存在しません。
つまり、たとえ無色透明であったとしても、普段私たちが目にしている水の中にはすでに様々な物質が溶けている状態なのです。
あらゆる元素が溶け込んでいる海水
かつて、酸性雨問題が大きくクローズアップされた時期がありました。
あれも石油などのいわゆる化石燃料を燃やした後、大気中に拡散する窒素酸化物や硫黄酸化物が雨に溶け込んで強い酸性となり、それが地表に降り注ぐことで、木々を枯らしたり鉄筋を腐食させたりすることが社会問題となったわけです。
このように、地球上にある水は、雨水であっても地下水であってもさまざまな物質が溶け込んでいますが、中でも最も多くの物質が溶け込んでいるのが海水です。
水が持っている溶解力のおかげで、海水には塩化カルシウム(食塩)をはじめとして、地球上に存在するほぼすべての元素が溶け込んでいます。魚が海の中で生きていけるのも、そこに酸素が溶け込んでいるおかげです。
また、金・銀やレアメタルなどの高価な金属も多く含んでいますので、仮に海水からコストをかけず簡単にこれらを取り出す技術が確立されれば、一躍資源大国になれる日がやって来るかもしれません。
まとめ
私たちにとって最も身近な存在である水。
水の最大の特徴は、何でも溶かしてしまうというその「溶解力」であり、海水はまさにその集大成であると言えます。
同じく、いろいろなものが溶けているミネラルウォーターは、カルシウムやマグネシウムの含有率によって「硬水」と「軟水」に分けられていますので、特徴を生かしてうまく使い分けるといいでしょう。
(文/TERA)
著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。
※この記事は2014年01月13日に公開されたものです