もしもスペースプレーンが完成したら「完全に再利用可能」「10日間に10回往還可能」
2013年11月、アメリカでスペースプレーン計画が発表された。プレーンの名の通り滑走路から飛び立ちそのまま宇宙に行けるというから、宇宙開発のハードルも低くなるだろう。
【もしもゾウに踏まれても「1平方cm当たりにかかる重さは1.4kgと、意外に少ない」】
もしスペースプレーンが完成したら、気軽に宇宙旅行に行けるのか? 音速を超えるスペースプレーンは強烈な衝撃波を発生するので、大気圏内を優雅に飛び回っているわけにはいかない。離陸したら垂直に宇宙を目指すことになり、ロケット同様に辛い旅になりそうだ。
1日1便、宇宙への旅
アメリカの国防高等研究計画局(DARPA)が打ち立てたスペースプレーンXS-1計画は、2018年の打ち上げを目標に開発が進められている。自力で作るのではなく、民間企業からの応募に賞金で応える形だ。およそ5年と極めて短期間に設定されているのも、2011年に退役したスペースシャトルが背景に存在し、現時点では宇宙に行く手段が事実上ない。
国際宇宙センター(ISS)への補給だけなら、今年9月に打ち上げに成功した無人補給機シグナスなどでまかなえるものの、有人飛行や大掛かりなミッションは担えない。もっとも簡単な解決方法はスペースシャトルの復活なのだが、そもそも退役した理由は予算なので、再度使用されることは考えにくい。
当初、1回の打ち上げには10億円程度と見込まれていたものの、実際は平均1,500億円ほどと、150倍もの費用がかかってしまったからだ。本体をはじめ、ロケットブースターなども回収して再利用しているにも関わらず、打ち上げるたびに圧倒的な予算オーバーなので、あらたな手段を見出さなければならない状況なのだ。
対してXS-1は、打ち上げ1回あたりのコストはおよそ5億円、従来のロケットの10分の1程度に抑えられると見込まれている。長い滑走路があれば離発着が可能なので、巨大な発射台が不要になるのも低コスト化に貢献する。
DAPRAが求めている主要スペックを抜粋すると、
・マッハ10の飛行能力
・10日間に10回往還
・完全に再利用可能
・基本は無人、必要に応じて有人も可能
と、スペースシャトルよりもハードルは数段高い。10日間で10回も往還できるのは、まさに「飛行機」ならではだ。
大気圏内は飛行禁止?
従来のロケットとの最大の違いはエンジンだ。巨大なロケットブースターの力を借りるのが定番だったのに対し、XS-1では燃料と液体酸素を使ったAJ26エンジンが有力視されている。
巨大な推進力を得るためには、多くの燃料を短時間で燃焼させる必要がある。しかしながら高度が上がるほど空気が希薄になり、燃焼に必要な酸素も減るので、普通のエンジンではパワーが低下してしまう。そのためジェットエンジンの前面には空気をかき集めるためのファンが装着されているのだが、大気圏を飛び出して宇宙に出てしまえば、集めようとしても酸素がない。
液体酸素を搭載しているのは、酸素が乏しい宇宙空間でも燃料を燃やす必要があるからだ。
マッハ10の飛行能力を手に入れたら、なにができるか? 飛行機として使えば東京~ニューヨーク間をおよそ1時間で結ぶことができる。ただし衝撃波で地上を破壊しながら進むことになるので、飛行ルートは厳密に設定しなければならない。
スペースシャトルと同様にすでに退役した超音速旅客機・コンコルドは、マッハ2.0を誇りながらも海上の限られたエリアでしか超音速飛行できなかったのも、この衝撃波のせいだ。スペースプレーンの名前から、大気圏内を周回しながら加速するようなイメージを持つが、そんなことをしたら世界各国からクレームが来てしまう。
まとめると、
・人里離れた場所に飛行場を作る
・離陸したら極力垂直に上昇する
・都市部上空での超音速飛行は厳禁
が望ましい。条件的には従来のロケットと同じようなものだから、庶民のメリットは少なそうだ。
まとめ
宇宙航空研究開発機構(JAXA)でも超音速用のエンジンを開発している。原理はジェットエンジンながらもマッハ6~8を目指すというから驚きだ。
次の課題は衝撃波だ。これさえ無くなればUFOも作れそうだから、一日も早い発見を期待しよう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年01月06日に公開されたものです