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養殖できるものとできないもの。ウナギの完全養殖は可能?不可能?

水槽の中の魚先日、中国で養殖を行っていたゴキブリ100万匹が逃げ出した! なんて話がありました。ゴキブリはともかく、最近では「マグロが!」「ウナギが!」と、漁獲高の減少が問題になっています。「養殖はできないものか」と誰もが思うのではないでしょうか。そこで「魚の養殖」について調べてみました。

■養殖生産量ナンバーワンはブリ/ハマチ!

日本は魚の養殖に力を入れている国です。魚の養殖について水産庁に問い合わせたところ、「社団法人 全国海水養魚協会さんのサイトを見ましょう」ということでした。同サイトによれば、養殖魚のうち、生産数のランキングは以下のようになっています。これらは商業ベースに乗っている魚です。

第1位 ブリ(鰤)/ハマチ(八町)
第2位 マダイ(真鯛)
第3位 カンパチ(間八)
第4位 クロマグロ(黒鮪)
第5位 トラフグ(虎河豚)

魚の養殖技術はどこまで進んでいるのでしょうか。独立行政法人 水産総合研究センター増養殖研究所の皆川昌幸さんにお話を伺いました。この増養殖研究所では、魚の養殖、種苗生産などの最先端の研究が行われています。

――養殖のできる魚とできない魚というのはあるのでしょうか?

皆川さん:養殖できているといっても、商業ベースに乗っているかどうかというのは別です。また、同じ養殖でも、天然種苗(天然の魚の子ども)を利用した「養殖」と人工種苗(人工で生産した魚の子ども)を利用した養殖があります。

・「人工種苗を利用した」養殖

成魚から卵を採取。これを人工ふ化して、成魚に育て、さらに卵を採って……というサイクルを完成させることです。これを「完全養殖」といいます。

・「天然種苗を利用した」養殖

自然に存在する稚魚などを採取して、これを成魚にまで育てること。これも「養殖」といいます。

――なるほど。上記のランキングに入っている魚は完全養殖なのでしょうか。

皆川さん:いえ。天然種苗を利用した養殖もあります。上記のランキングでいえば、ブリ/ハマチ、カンパチ、クロマグロはほぼ天然種苗を利用した「養殖」、マダイ、トラフグはほとんどが人工種苗を利用した「完全養殖」といえるでしょう。両方の魚が混在していると思います。

■ウナギの完全養殖は可能!

――養殖ができない魚はどんな魚なのですか?

皆川さん:養殖できないというよりも、「商業ベースに乗らない」といったほうがよいでしょう。たとえば、資源の枯渇がいわれている「ウナギ」です。実は、ウナギの完全養殖は完成しています。

――そうなんですか?

皆川さん:はい。ウナギの養殖というと、天然のシラスウナギを利用した養殖のことでした。天然のシラスウナギを採取してそれを成魚にして出荷していました。しかし、そのシラスウナギの資源が危機に瀕しているのです。

――ウナギの価格が高騰しているのはそのためですね。完全養殖ができているのは心強いですね。

皆川さん:ただし、量産化が完成していないこととコストの面で商業ベースに乗せるのがまだ難しいのです。みなさんの食卓に上るようになるまでにはまだ時間がかかるでしょう。

――養殖技術の開発に力を注いでいる魚の種類はどんなものがあるのでしょうか?

皆川さん:そうですね、やはりウナギ、さらにクロマグロ。養殖に使用する種苗生産にも力を入れています。たとえば、病気に強い、また肉厚なトラフグといった、養殖向きな魚を開発する仕事です。「育種」といわれるんですが。

――そんなことができるんですね。

皆川さん:はい。最近ではゲノム解析といった手法も用いています。「病気に強い遺伝子」が同定できるようになってきましたので、それを持った魚を集めて交配し、といったことを行うわけです。

――漁獲資源が小さくなっているという話ですので……。

皆川さん:はい。自然界で魚が捕れなくなっている傾向がある中、資源を保護する観点からも養殖技術は存在感を増していると思います。

 

いかがだったでしょうか。養殖技術がさらに大事になる時代がやってくるかもしれません。

⇒社団法人 全国海水養魚協会
http://www.yoshoku.or.jp/siru/

⇒独立行政法人 水産総合研究センター増養殖研究所
http://nria.fra.affrc.go.jp/

(高橋モータース@dcp)

※この記事は2013年09月07日に公開されたものです

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