お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

ブラックホールって実在するの?

宇宙空間に存在すると言われる「ブラックホール」。

以前、その正体は、非常に密度が高くて強力な重力を持つために周りの時空がゆがめられ、光ですら脱出することができない天体であることをご紹介しました。

しかし、真っ暗で目に見えず確認できないものが、本当に存在すると言い切れるのでしょうか?

たしかに、ブラックホールそのものは、自ら光を出しているわけではないため、まだ直接的な観測に成功した事例はなく、現在はあくまでも理論的に存在するはずだと考えられている段階にあります。

ただし、間接的な観測によって、ブラックホールが実在すると言える根拠となる理論がありますので、そちらをご紹介していきましょう。

エックス線でブラックホールが発見できる

仮に、ブラックホールと思われるような大きな重力を持つ天体があったとします。

この天体に周りのガスやちりが近づくと、「降着円盤(こうちゃくえんばん)」と呼ばれる円盤を形成し、ちょうどお風呂の栓を抜いたときのように、らせん状を描きながら少しずつ天体の中心部に引き寄せられていきます。

このとき、降着円盤は摩擦の力によって熱せられ、10万~1000万度ほどの高温となり、その際に強いエックス線やガンマ線を放射します。

ブラックホールが存在すると考えられている場所を観測してみると、このエックス線などが確認できることから、ほぼ間違いなく実在するだろうと推定できるわけです。

ブラックホールの候補生「はくちょう座X-1」

まだ、実際に直接観測されたことは無いブラックホールですが、その最有力候補だと言われているのが「はくちょう座X-1(Cyg X-1)」と呼ばれる天体です。

太陽系からおよそ6,000光年のかなたに存在するこの天体は、強力なエックス線を放射しており、その実体は2つの星がセットとなって、お互いの周りを回っている「連星(れんせい)」です。

主星(しゅせい)と呼ばれるメインの明るい星は「HDE226868」といい、太陽の30倍もの質量を持った青く光り輝く巨大な星ですが、伴星(ばんせい)と呼ばれるサブの星は、その公転運動の様子から、太陽の10倍ほどの質量を持っていることが分かっているものの、暗くて観測することができません。

しかし、この2つの天体の様子を観測してみると、主星「HDE226868」が放出しているガス成分を、もう一方の暗い伴星が吸い込んでいることが、エックス線の分析から分かっています。

そのため、この暗い天体はブラックホールである可能性が高いと考えられています。

吸い込まれるとどうなる?

ところで、ブラックホールに吸い込まれた物質はその後どうなるのでしょうか?

もしもブラックホールに吸い込まれてしまうと、いかなる物質であろうと、その物質を引き伸ばそうとする強い「潮汐力(ちょうせきりょく)」によって引っ張られた挙げ句、素粒子レベルまで分解されてしまいます。

また、アインシュタインの一般相対性理論から、重力が時空をゆがませることで、周りの時間の流れが遅くなることが分かっています。

重力が大きくなればなるほど時間の流れがゆっくりになっていくため、その重力が無限大であるブラックホールの内部では、時間の流れがほぼゼロということになります。

…と言っても、これはあくまでブラックホールの外から見た場合に限った話ですので、ブラックホールの内部にいる物質にとっては、流れる時間は変わらない(と感じる)、とっても不思議な状況に陥ります。

まとめ

真っ暗なブラックホールは、直接観測することができていませんが、そこから放出されるエックス線などをとらえることによって、ほぼ間違いなく実在すると考えられています。

現在の科学技術では、まだここまでしか突き止められていませんが、今後さらに研究が進んでいけば、ブラックホールのより詳しい正体が分かる日が来るかもしれません。

(文/TERA)

●著者情報
TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2013年07月20日に公開されたものです

SHARE