「おあいそ(お愛想)」の意味とは? 会計時に使うのは失礼?
飲食店で「おあいそお願いします」と聞いたことがある人は少なくないはず。「おあいそ」は漢字で書くと「お愛想」ですが、なぜ「愛想」がお会計を意味する言葉になったのでしょうか。この記事では、「おあいそ」の意味や語源、代わりに使える言葉などを紹介します。
飲食店で「あおいそ(お愛想)」という言葉を耳にする機会は少なくありません。実際に、客として店側に「おあいそお願いします」「おあいそで!」などと言ったことがある人もいるでしょう。
しかし、「客側が店に『おあいそ』というのは失礼」という考え方もあります。では、その理由とは?
この記事では、「おあいそ」の意味や語源を紹介。その上で、客側が「おあいそ」を使うのは失礼なのか、代わりにどんな言葉が使えるのかについて説明します。
「おあいそ(お愛想)」の意味
「おあいそ(お愛想)」は、飲食店などのお会計を意味します。「愛想」という名詞に、丁寧の接頭語「お」がついた言葉です。
では、そもそも「愛想」とはどのような意味なのでしょうか。辞書には以下のように記載されています。
あい‐そ【愛想】
1 人に接するときの態度。また、人当たりのいい態度。「店員の—のいい店」「—のない返事」
2 人に対する好意・信頼感。「—を尽かす」
3 (多く「お愛想」の形で)
㋐相手の機嫌をとるための言葉・振る舞い。「—を言う」「お—で食事に誘う」
㋑客などに対するもてなし・心遣い。「何の—もなくてすみません」
㋒飲食店などの勘定。「お—願います」
→愛嬌(あいきょう)[用法]
[補説] 「愛想をふりまく」という言い方について→愛嬌(あいきょう)をふりまく[補説](『デジタル大辞泉』小学館)
一般に、「愛想」というと「人に接するときの態度」や「相手の機嫌をとるための言葉・振る舞い」をイメージする人が多いでしょう。
では、なぜ「愛想」がお会計を意味するようになったのでしょうか。次のページで解説します。
▶次のページでは、「おあいそ」の語源を紹介します。
「おあいそ」の語源
「おあいそ」の語源は、店が客に対し「お愛想尽かしなことで申し訳ございませんが、お勘定をお願いします」と言ってお会計を依頼したことだとされています。この言葉が省略されて「おあいそ」になったのです。
昔の飲食店には、客が代金をその場で支払わずあとでまとめて支払う「ツケ」という文化がありました。お会計をツケにするのは、客からの「また来る」というメッセージでもあり、店と客との信頼関係の証でもあったのです。
しかしツケ文化は次第に薄れ、店では客が毎回料金を支払うのが一般的になりました。そこで店側の「毎回お代をもらうのは申し訳ない」という気持ちから出てきたのが、「お愛想尽かしなことで申し訳ございませんが、お勘定をお願いします」という言葉だったのでしょう。
「おあいそ」が広く客側にも使われるようになったのは、明治時代の雑誌『風俗画報』で京都の流行として「勘定をあいそといふなど尤も面白く存じ候ふ」と報じられたのがきっかけといわれています。
▶次のページでは、お会計時に「おあいそ」と言うのは間違いなのか考察します。
会計時に「おあいそ」と言うのは間違い?
「お会計」の意味で「おあいそ」が使われ始めて久しく、現在は冒頭で紹介したように「愛想」の意味として「飲食店などの勘定」などと記載している辞書もあります。
そのため、飲食店の会計時に「おあいそお願いします」といっても問題になることはほぼないでしょう。
ただし、前述したように「おあいそ」は元々店が客に対し「お愛想尽かしなことで申し訳ございませんが、お勘定をお願いします」と使っていた言葉です。
これを客から店に言うと、「この店には愛想を尽かしたから、早く会計を済ませてくれ」といった意味に捉えられかねません。その可能性を考慮すると、「おあいそ」は使わない方が無難ともいえます。
また、ビジネスシーンでは会食や接待などで会計を頼む場面もあるはずです。「大事な取引先や後輩に『その日本語、間違いでは』と思われたくない」と考えるなら、「おあいそ」は別な言葉に言い換えましょう。
▶次のページでは、「おあいそ」の代わりに使える言葉を紹介します。
「おあいそ」の代わりに使える言葉
ここからは、「おあいそ」の代わりに使える言葉を紹介します。
(1)「お会計」
「おあいそ」の代わりになる最もスタンダードな言葉が「お会計」でしょう。多くの人にとってなじみのある言葉なので、料亭や鮨屋などの和食店だけでなく、フレンチやバーなど幅広いシーンで使えます。
(2)「お勘定」
「お勘定」も「お会計」と同じように使えます。どのお店でも問題なく使えるでしょう。
(3)「チェック」
「チェック」も、会計時に使える言葉の1つです。また、「チェック」は英語でお会計を意味するので、海外でも使えます。
(4)「ごちそうさま」
料理をいただいた後のあいさつとして、「ごちそうさま」を使うのも一案です。伝票を持ってレジに行き「ごちそうさまでした」といえば、わざわざ「お会計を……」と言わなくても十分に意図が伝わるでしょう。
「おあいそ」は元々店側が使っていた言葉
「おあいそ」は、店側が客側に対して申し訳ない気持ちを表す「お愛想尽かしなことで申し訳ございませんが、お勘定をお願いします」という言葉から生まれたといわれています。
客側が使うと「愛想が尽きた」といったニュアンスで受け取られる可能性もあるので、誤解されたくない場合は使わない方が無難でしょう。
「おあいそ」は「お会計」「お勘定」などと言い換えられるので、覚えておくと便利です。
(にほんご倶楽部)
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