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人形恐怖症とは? 原因や克服方法を解説

服部希美(心理カウンセラー)

「人形恐怖症」とは、極端に人形を怖がったり避けたりする状態を指します。では、どうしてそこまで人形を怖く感じるのでしょうか? この記事では、人形恐怖症の特徴や原因、克服方法を、心理カウンセラーの服部希美さんに解説してもらいます。

子どものおもちゃとしても定番の人形ですが、いくらかわいらしくとも「人形」に対して強い恐怖を感じる人がいます。

人形を極端に恐れる状態は「人形恐怖症」と呼ばれることがあり、人によっては生活に支障が出る場合も。

今回は、人形恐怖症の特徴や人形に恐怖を感じる心理、克服法などを紹介します。

「人形恐怖症」とは?

人形恐怖症とは、本来なら恐れる理由がない人形に対して強い恐怖を感じたり、接触を過剰に避けたくなったりする状態をいいます。

どんな人形が怖いのかは人によります。しかし、動物などのぬいぐるみより、人間に近い見た目の日本人形や西洋人形などを怖く感じる人が多いようです。

また、人形恐怖症に近い感覚で、マネキンやロボットに強い恐怖を感じる人もいます。

人形恐怖症の特徴

ここからは、人形に恐怖を感じる人が抱えがちな日常の困りごと、恐怖を感じるタイミングを紹介します。これは人形恐怖症の特徴ともいえるでしょう。

(1)人形がある部屋に入れない

人形恐怖症の人の中には、人形がある部屋にいるだけで強い恐れを感じ、その場を離れたくなる人もいます。

こういった回避行動は、同行している友人や家族を巻き込んでしまう場合もあるようです。あまりにひどい場合は、一緒にいる人が困ってしまうこともあるかもしれません。

また、「近くに人形がないか確認しないと不安で落ち着けない」「人形を見掛ける可能性があるから外に出たくない」というほど恐れを感じている場合は、日常生活に支障が出る可能性も。

(2)人形が怖くて直視できない

人形恐怖症の人は、人形を見るだけで強い恐怖を感じ、目をそらしたくなることがあります。

虫を苦手に感じている人が虫を直視したくないように、人形に強い恐怖を感じる人は人形を直視することを避けたくなるのでしょう。

(3)人形の写っている写真や映画を見るのが怖い

実物の人形だけでなく、写真や映画などに出てくる人形を見るだけで恐怖を感じるのも、人形恐怖症の特徴といえます。

ネットサーフィン中に偶然人形の写真を見てしまい、気分が落ち込んで眠れなくなってしまった、という人も……。

(4)人形を見た後に不快感を引きずってしまう

私たちは、強い恐怖を感じるとパニック状態に陥って、その後も冷静に考えられなくなったり、眠れなくなったりする場合があります。

人形恐怖症の人も、人形を見た後に不快感を引きずってしまい、生活に悪影響を来すことがあるようです。

(5)人形をなかなか処分できない

人形恐怖症であることを伝えていない相手から人形をプレゼントされたり、お土産としてもらったりすることはあるかもしれません。

要らない人形は人にあげるなどして処分できれば良いのですが、人形恐怖症の人の中には「処分するとバチが当たるのではないか」という不安に駆られる人もいます。

そのため、人形が苦手なのになかなか捨てられず、家にたまっていくなんてことも。

(6)ひな人形や五月人形などを飾れない

日本では、「子どもが無事に成長しますように」という願いを込めて、ひな人形や五月人形を飾る風習があります。

しかし、人形恐怖症の人はひな人形や五月人形に対しても強い恐れを感じてしまい、部屋に飾れないことも。

「親が自分のために飾ってくれた節句の人形が怖くて仕方なかった」という人もいるかもしれません。

人形恐怖症になる原因・心理

人形恐怖症になる原因や人形を怖いと思う心理は人によって違いますが、以下のようなものが多いようです。

(1)人形が出てくるホラー映画などでトラウマになったから

私たちの心は、恐怖を強く感じた時に見たものを、「怖い」という感情とひもづけてしまうことがあります。

例えば、怖い映画の1シーンにたまたま人形が写り込んでいたことで「恐怖=人形」がひもづいてしまい、その後人形を見ただけで強い恐怖を感じるようになる、といったことが考えられます。

また、人形が人を襲ったり呪ったりするホラー映画などを見て強い恐怖を感じると、「自分の身の回りにある人形もいつか攻撃してくるのではないか」という恐れを抱きやすくなるようです。

(2)人形に魂が宿っているように感じるから

日本には古くから「物には魂が宿る」という考えがあります。

その影響もあってか、「人形にも魂が宿っており、粗末に扱うと自分を呪ったり攻撃してきたりするのではないか」と恐怖を感じる人もいるようです。

また、古来人形は他人に呪いをかけるための道具でもありました。呪詛(じゅそ)のために使うわら人形は有名でしょう。

そういったイメージから、人形を見ると「自分も呪われるのではないか」という潜在的な恐怖を感じやすいのかもしれません。

(3)まるで生きているように感じるから

精巧に作られた人形は、まるで本物の人間のように見えることがあります。

そのため、人形が生きているように錯覚して「急に動き出したり話したりするのではないか」「実はずっと人形から見られているのではないか」と怖くなることもあるようです。

また、「生きているように見えるのに実際は生きていない」という矛盾も、恐怖を感じさせる要因の1つになっていると考えられます。

人形恐怖症を克服する方法

人形恐怖症は、大きすぎる恐怖に対処するための方法を適用することで、克服できる可能性があります。

今回は、その方法を心理カウンセラーの視点からお伝えしたいと思います。無理のない範囲で試してみてください。

(1)どんな人形のどんなところに恐怖を感じるのか理解する

まず「自分の中の恐れを理解し、寄り添う」ことから始めてみてください。

例えば、「日本人形は苦手だけれど、着せ替え人形は大丈夫」「暗い部屋で見る人形は怖いけど、明るい場所なら平気」など、人形を怖く感じる条件は人によって違うはず。

強い恐怖を感じる人形の条件が分かったら、それを身の回りから排除したり、身近な人に打ち明けたりしておきましょう。

それだけでも心にゆとりができて、実際に人形を見た時の恐怖感が和らぐこともあります。

(2)実際に触って人形が動かないことを確認する

「人形が動き出すのではないか」という恐れを強く感じる人は、実際に自分の手で人形を触ってみて、動かないことを確認しましょう。

これを繰り返して「大丈夫だ」という感覚を根づかせていくことで、怖いという気持ちを軽減できる可能性があります。

そして、ある程度慣れてきたら人形を触って確認する回数を徐々に減らしていきましょう。

そうやって慣らすことで、人形に触れなくても「動き出すのではないか」という恐怖を抑えられるようになるかもしれません。

(3)人形に恐怖を感じるようになった原因に再度触れる

昔見た映画などが原因で人形が怖くなってしまった場合、ホラー映画が得意な友人と一緒に見るなどして、もう一度その作品に触れてみるのもおすすめです。

過去の体験による恐怖は、当時実際に感じたものより大きく感じがちです。そのため、「改めて見てみたら全然怖くなかった」といったこともあり得ます。

このような経験をすることで、人形への恐怖が和らぐ人もいるようです。

(4)人形に優しく触れたり温かい言葉を掛けたりする

私たちの心には、「投影」という仕組みがあります。これは、「自分が感じていることを、あたかも相手が感じているように錯覚する」というものです。

例えば、自分が人形に対して攻撃的な気持ちを持っていると、「人形からも攻撃されるのではないか」と感じやすくなる可能性があります。

逆に、人形に優しくすることで「人形から敵意を持たれているのではないか」という恐怖を軽減できる可能性もあります。

なんだか変に感じる人もいるかもしれませんが、「今まで嫌ってごめんね」と人形に優しく声を掛けたり触れたりすることで、恐れを感じにくくなるかもしれません。

人形への恐怖と無理せず付き合っていこう

恐怖を感じる対象は人によって違っても、恐怖自体は人間なら誰しも抱える自然な感情の1つといえます。あなたの場合、恐怖の対象がたまたま人形だったのでしょう。

そのため、どうぞ「人形が怖い自分は変なのではないか」「頑張って恐れを克服しなきゃ」と心配しすぎたり、自分を追い込んだりしないであげてくださいね。

今回の記事が少しでもあなたの参考になればうれしいです。

(服部希美)

※画像はイメージです

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