「いたたまれない」の意味は? 類語や例文、使い方を解説
「いたたまれない」は「じっとしていられない」という意味です。では、この「いたたまれない」とは、どういう気持ちからくる表現なのでしょうか。ライティングコーチの前田めぐるさんに、詳しい意味や類語について、例文とともに使い方を解説してもらいます。
「いたたまれない」と聞くと、「何となくその場にはいられないような状況である」と感じる人は多いでしょう。
しかし、それがどんな気持ちから起こる状況なのか、はっきりとは説明しにくいのではないでしょうか?
「いたたまれない」という状況に至るにはさまざまな気持ちがあります。どのような場合に使えるか、意味や使い方を一緒に見ていきましょう。
「いたたまれない」の意味と語源
まずは「いたたまれない」の意味と語源を確認しましょう。
意味は「じっとしていられない」
「いたたまれない」という語を辞書で引くと、次のように書かれています。
いたたまれない【居た堪れない】
その場にじっとしていられない。これ以上辛抱していられない。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
辞書によれば、「いたたまれない」は、漢字では「居た堪れない」と書きます。文字通り「その場にいることが耐えられない」、すなわち「じっとしていられない」という意味を持つ言葉です。
語源は「いたまらない」
「居ることが堪えられない」という意味の「居る+堪る(たまる)+ない」の「いたまらない(居堪らない)」に、もう1つ「た」が挿入された形が「いたたまらない」だとされています。
この「いたたまらない」が変化して、「いたたまれない」になったのではという説があります。
「いたたまらない」も「いたたまれない」も、江戸時代から使われている古い言葉です。
「いたたまれない」はどんな時に使えるのか?(例文つき)
「いたたまれない」は「何らかの理由で、その場にじっとしていることがこらえがたい状況」を意味する言葉です。
その状況を引き起こす場面と、場面に合った「いたたまれない」の使い方を以下に例示します。
気まずくてその場にいがたい時
相手や周囲に対して気まずい思いで、その場にいるのがつらい状況で「いたたまれない」が使えます。
例文
・親友の恋人を奪うことになった彼は、ずっといたたまれない心持ちだった。
申し訳なさでじっとしていられず謝罪したい時
申し訳ない気持ちでじっとしていられないような時に、以下のように謝罪することがあります。
例文
・誠に申し訳ございません。ご迷惑をおかけしたことがいたたまれずに、お詫び申し上げたくこちらにまいりました。
悲しい気持ちでその場にいられない時
悲しい気持ちが抑えられず、その場にいるのがつらい場面でも「いたたまれない」が使えます。
例文
・鉄道事故の会見を聞いていた遺族は、いたたまれずに席を立った。
悔しくて居ても立ってもいられない時
悔しい気持ちでじっとしていられないような時は、以下のように表現できます。
例文
・芸術イベントがコロナで次々と中止になり、いたたまれない。
つらい気持ちに共感して辛抱できない時
相手のつらい気持ちに共感して、我慢できないような時にも「いたたまれない」が使えます。
例文
・心根の優しい彼女にとって、クラスメートが落ち込んでいるのはいたたまれない状況だった。
「いたたまれない」を使う上での注意点
「いたたまれない」は、第三者に使うことが多い言葉です。
もし、目の前にいる相手に対して「あなたがお気の毒でいたたまれない」というような表現をしてしまうと、嫌みっぽくなりがちです。かえって相手を傷つけたり、不愉快にさせたりすることにもなります。
相手を「気の毒だ」「かわいそうだ」と思っても、直接「いたたまれない」と言うことは避けましょう。
「いたたまれない」の類語(例文つき)
ここからは、「いたたまれない」の類語を紹介します。
「居心地が悪い」
「その場に心地良く居続けることができない、じっとしていられない」という意味です。気まずさや恥ずかしさなどいろんな感情が原因で、その場にいるのがつらい時に使います。
例文
・店長から接客のまずさをみんなの前で指摘され、居心地が悪かった。
「(〜と思うと)たまらない」
「つらくてたまらない」「苦しくてたまらない」「〜を思うとたまらない」など、「いたたまれない」と同じように、さまざまな気持ちが我慢できないほどに募っている時に使います。
ただし、「その場にいられないほど」という意味は含まれていません。
例文
・こうしている今も彼女のつらさを思うと、たまらない。
「穴があったら入りたい」
穴があったらそこに入って身を隠してしまいたいほど、恥ずかしい時に使います。「いたたまれないほど恥ずかしい」と同じ意味です。
例文
・みんなに爆笑され、穴があったら入りたかった。
「汗顔の至り(かんがんのいたり)」
顔から汗が出るほど恥ずかしい、という意味です。「汗顔の至り」も、「恥ずかしさでいたたまれない」場合に使います。
例文
・この度の失敗、誠に汗顔の至りです。
「針のむしろのよう」
「むしろ」とはわらなどを編んで作った敷物のこと。「針のむしろのよう」は針を編んで作った敷物に座っているかのように、少しも安らかになれないことのたとえです。自分が受けている仕打ちをつらく感じる場合に使います。
例文
・在職中は、誰も理解者がおらず、針のむしろのようでした。
「いたたまれない」は日本的な表現
周囲との協調性や和を重んじる性質が強い日本人。
「いたたまれない」という心情に至るには、「腹立たしい」「悲しい」「申し訳ない」などさまざまな原因があります。
これらの原因をはっきり伝えずとも「その場にいられない」という気持ちが伝わる「いたたまれない」という言葉は、日本人独特の共感性が生み出した言葉であるといえそうです。
(前田めぐる)
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