【時候の挨拶】12月に使える挨拶言葉は? 書き方や文例を紹介
仕事で案内状などの文面を作成する時、プライベートでかしこまった手紙を書く時など、どう書き始めたらいいか悩みませんか? そこで便利なのが「時候の挨拶」。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、12月の時候の挨拶を教えてもらいました。
クリスマスケーキやおせちの注文、年賀状の準備など、年末年始のイベントでせわしないこの時期。対面やメールでも、「寒いですね」「気ぜわしいですね」が合言葉のようになってしまいます。
そんな折、今年1年のお礼メッセージが書かれたカードや、お歳暮に添えられたメッセージなどを読むと、ほっと一息つくことができますね。
心と心が行き交う温もりの季節に、大切な相手を思う時間を過ごしてみてはいかがでしょう。
時候の挨拶とは?
時候の挨拶とは、季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書く言葉や文章を指します。
「初冬の候」のように、「熟語などの一語」+「候」という形もあれば、「いよいよ年も押し迫ってまいりました」のように、文として書く形もあります。
ビジネスシーンやプライベートでは、書面や手紙での連絡、改まったメールの冒頭部分において使われます。
12月の「時候の挨拶」
公文書やビジネスレターなどでは「〜の候」で始めることが多いですね。「候」の代わりに使える言葉として、「頃・節・折・季節・みぎり」などがあります。
なお、「みぎり」とは、「時、折、時節」という意味です。漢字では「砌」ですが、あまりなじみがないため、ひらがなで表記する方が良いでしょう。
・「霜寒(そうかん)の候」立冬(りっとう。2021年の立冬は11月7日)から12月初旬
・「向寒(こうかん)の候」立冬から小寒(2022年の小寒は1月5日)まで
・「小春日和(こはるびより)の候」小春(陰暦10月1日のこと。2021年の小春は11月5日)から12月上旬にかけてのよく晴れた日が続く頃
・「小春(しょうしゅん)の候」小春から12月上旬まで
・「初冬(しょとう)の候」小春から12月上旬まで
・「孟冬(もうとう)の候」小春から12月上旬まで
・「大雪(たいせつ)の候」大雪(2021年の大雪は12月7日)から冬至(2021年の冬至は12月22日)まで
・「仲冬(ちゅうとう)の候」仲冬(陰暦11月)
・「師走(しわす)の候」12月初旬・中旬
・「初氷(はつごおり)の候」(相手の地域に)初氷が張った頃
・「新雪(しんせつ)の候」(相手の地域に)新雪が積もった頃
・「短日(たんじつ)の候」冬至(とうじ。2021年の冬至は12月22日)の頃
・「歳晩(さいばん)の候」12月下旬
・「歳末(さいまつ)の候」12月下旬
・「厳寒(げんかん)の候」12月全般
・「寒冷(かんれい)の候」12月全般
・「寒気(かんき)の候」12月全般
上記の時期は、あくまで目安です。
「冬至」の頃には、日が短くなることから、よく「短日の候」という表現を使います。
「初氷」は秋から冬にかけて最初に張る氷、「新雪」は秋から冬にかけて最初に降る雪のこと。地方によっても、年によってもかなり差があります。もちろん、降らない地域もあります。
気象予報で初雪や初氷の情報を知ることができるので、チェックしましょう。
例文
・今年も余日少なくなってまいりました。○○さまには大活躍の1年だったこととお喜び申し上げます。
・行く年を惜しみつつ、新年への希望を抱くこの頃、今年も〇〇さまにお世話になってばかりだったと振り返っております。
・街を彩るクリスマスの飾りに心が浮き立つ頃、お子さまたちへのプレゼントを楽しそうに選んでおられるのではないでしょうか。
・寒さの中にも陽だまりの温もりを感じ、幸せな気持ちで過ごしております。
・年の瀬で、駅前の○○商店街もにぎわっております。お変わりございませんか。
・年の暮れ、ご多忙な中にも、お変わりなくご健勝のことと存じます。
12月の「結びの挨拶」(例文つき)
続いては、12月にふさわしい結びの挨拶を紹介します。
「結びの挨拶」とは、本文で用件などを述べた後、結語(「敬白」「敬具」「かしこ」など)の前に添えるものです。
「末筆ながら、来たる年でも○○さまのご健康とご活躍を願っております」のように、相手の健康や繁栄を願ったり、「○○さまにくれぐれもよろしくお伝えください」などのように、伝言を依頼したりする役割があります。
例文
・師走を迎え慌ただしい季節ではございますが、風邪などを召しませんようお大事にお過ごしください。
・街角で響くクリスマスソングを聴きつつ、貴店にとっても実りある12月となりますようご祈念申し上げます。
・寒い日が続きますが、お健やかにお過ごしください。
・例年なら帰省している頃ですが、今年はこちらで静かに過ごします。またお目にかかれることを楽しみにしていますね!
・寒さもいよいよこれからが本番です。どうぞご自愛くださいませ。
・お目にかかってお礼申し上げたいところでございますが、ご多忙な師走と拝察し、書中にて感謝申し上げます。
12月の時候の挨拶「シーン別の例文」
時候の挨拶を組み入れた例文を、ポイントともに以下に紹介します。
今回は「お歳暮送り状」「お客さまへのクリスマスカード」「得意先への年賀状」です。
お歳暮送り状
お歳暮送状は、品物とは別便で送るのがマナーとされています。宅配便では信書にあたる手紙などは送れないため、同梱しないようにしましょう。
お歳暮を送る時期に厳密なルールはありませんが、12月中が目安です。企業やお店の場合は、早めに休業するところもあるので、あまりギリギリに送るのは避けましょう。
例文
拝啓 霜寒の候、貴社におかれましては益々ご隆昌の段お慶び申し上げます。
本年は、新型コロナに振り回された日本でしたが、貴社の皆さまが想像力と団結力で商品開発されましたこと、弊社にとりましても大変励みになりました。
さて、本日は感謝の気持ちを込めて、ささやかなお品をご送付申し上げます。お茶の時間にでもご賞味いただけましたら幸いです。
行く年を惜しみつつ、新年もどうぞよろしくお付き合いくださいますよう、歳末のご挨拶まで申し上げます。
敬 具
お客さまへのクリスマスカード
クリスマスカードは、デザイン重視のものが多いので、シンプルなメッセージでOKです。
お店からお客さまに出す場合、クリスマスのキャンペーンなどがあれば案内します。今年のお礼とともに、年末年始の休業案内も兼ねると良いでしょう。
例文
Merry Christmas! (大きな文字)
赤いポインセチアが華やかな季節ですね。
この1年、ご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
新年からも変わらぬお付き合いを賜りますようお願い申し上げます。
○○さまのご健康とご多幸をお祈りしております。
・クリスマスキャンペーン実施中:赤か緑どちらかの色を身につけていらしたお客さまには500円OFF(〜12月25日)
・年末年始休暇のご案内:2021年12月○日から2022年1月○日まで
得意先への年賀状
年賀状を元日に届けたい場合には、引受開始日である12月15日から25日の間に出す必要があります。
早すぎると一般の郵便物と同様に扱われてしまい、早ければ投函した翌日には相手に届いてしまうことも。また、12月26日以降に投函した年賀状は元日に間に合わない可能性があります。
ビジネスでの年賀状では「賀詞」がポイント
書き出しのフレーズを「賀詞」と呼びます。ビジネスにおける年賀状では、この「賀詞」選びがポイントです。
次のうち、ビジネスシーンにふさわしくないものはどれでしょうか?
(1)謹賀新年
(2)賀正
(3)新春を寿ぎ謹んでご挨拶を申し上げます
(4)新年明けましておめでとうございます
答えは、(2)と(4)です。
(2)の「賀正」はおめでたい漢字を組み合わせただけで、相手への敬意は含まれていないので、目下の相手に使うもの。上司や取引先への賀状ではふさわしくありません。
また、(4)の「新年明けましておめでとうございます」は「明けまして」に「新年が明けて」という意味が含まれており、意味が重複しています。ビジネスシーンに限らず、間違いです。
取引先や目上の相手への年賀状では(1)の「謹賀新年」や(3)のように敬意を込めた言葉を使うのが良いでしょう。
例文
業界によっては、英文やひねりのあるキャッチコピーを使った年賀状や、デザイン重視のものも見受けられますが、最も一般的な年賀状は次のようなスタイルです。
謹んで新春のお慶びを申し上げます(大きな字で)
旧年中はひとかたならぬご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます
本年も変わらぬお付き合いを賜りますよう心よりお願い申し上げます
2022年 元旦
時候の挨拶をビジネスレターで使う場合の書き方と注意点
最後に、基本的な手紙の形式と注意点を紹介します。
手紙の形式
手紙の形式に必ずしも決まりはありません。個性的な手紙が喜ばれることも多いものです。
ただし、面と向かって会う時とは違い、特にビジネスシーンでは失礼にならないようにと考えることが多いため、慣習的な順序に沿った手紙の形式があります。
大きく分けると「前文・本文・末文・後付け・副文」の順です。
「前文」:頭語
「頭語」とは手紙の冒頭に用いる言葉で、後述する「結語」と対応するものを用います。
頭語には、次のようなものがあります。
【一般的な頭語】
拝啓・拝呈・啓上・啓白・呈上・拝進
【特に丁重な頭語】
謹啓・粛啓・恭啓・謹呈・敬呈
【返信する場合の頭語】
拝復・復啓・敬復・拝披
【返信が来ないうち再送する場合の頭語】
再啓・再呈・追啓・再白・再陳
【急ぎの場合の頭語】
急啓・急呈・急白・急陳・火急
【時候の挨拶を省略する場合の頭語】
前略・略啓・略陳・草啓・冠省・前省・略省・寸啓
「前文」:時候や安否の挨拶
頭語の後に1文字分空けて、前段で紹介したような「時候の挨拶」を書きます。
事務的な文章では時候の挨拶を省き、「時下ますますご清栄のこことお慶び申し上げます」などと書くこともできます。
安否の挨拶は必須ではありませんが、書く場合には、時候の挨拶の後に続けます。
まず相手の安否に触れてから、次に自分の安否や近況について「私どもは元気に過ごしております」などと述べます。
また病気見舞いや相手側に不幸があった時には、自分側の安否や近況は述べないようにします。
「本文」:起辞
「前文」である時候の挨拶の後に、改行をし、1文字下げて書きます。
起辞とは、書き出しから用件に移る際の接続詞で、「さて・ところで・早速ながら・このたびは・今般」などがあります。
返信の際には「ついては・つきましては」などを使います。
「本文」:用件
起辞に続いて、用件を書きます。
移転・転任・結婚・転職・退任・お礼など、さまざまな用件があります。気配りをしつつも、誤解や不明のことが生じないよう、具体的に書きましょう。
「末文」:結びの挨拶
「本文」の用件の後に、改行をし、1文字下げて書きます。
基本的には相手の健康や繁栄を願う言葉を書きます。さらに、伝言を添える場合もあります。
「末文」:結語
結びの挨拶と同じ行の最下部か、改行した次行の下方へ配置します。
「頭語」と対応させる言葉を用います。具体的には、次のようなものがあります。
【一般的な結語・返信や再送する場合の結語】
敬具・拝具・拝白・敬白・拝答
【特に丁重な結語】
敬白・謹白・謹具・再拝・謹言・頓首
【急ぎの場合・時候の挨拶を省略した場合の結語】
早々・怱々・不一・不二・不備・不尽
「後付け」:日付
「末文」の後に改行し、2~3字下げて年月日を書きます。
「後付け」:署名
日付の次行の下方に、差出人名を(自筆で)書きます。
「後付け」:宛名・敬称
署名の次行の上方に、相手の氏名を書き、「様」「先生」などの敬称を添えます。
宛名が連名の際は、敬称はそれぞれに付けます。なお、「御中」は会社や団体に用います。
「副文」
副文とは、書き漏れたことや付け加えたいことを短く添える文章のこと。「追伸・追白・尚々」などと書き出します。
ただし、副文には「重ねて申し上げる」というニュアンスがあるため、お悔やみ状や目上の人への手紙では使用しないのがマナーです。
時候の挨拶についての注意点
お詫び状や見舞状など、急な手紙では頭語や時候の挨拶を省き、以下のようにすぐ本文に入ります。
お詫び状(例文)
・先般はご迷惑をお掛けし、大変申し訳なく思っております。
災害の見舞い状(例文)
・このたびの台風○○号による浸水、被害が大きく心配しております。状況はいかがでしょうか。
病気の見舞状(例文)
*・このたびはご入院されたとのこと、驚いております*。
病気見舞いでは「たびたび」「四」などの忌み言葉に気を付けましょう。
また、長期の入院で文通のようにやりとりしている手紙では、季節の言葉も入れて良いでしょう。
冷たさの中の温もり、色なき季節の色
冬枯れという言葉がぴったりの12月。樹々は落葉し、一歩外に出れば、コートの襟を立てて歩く頃です。
そんな時期の手紙では、ギャップのある言葉を選んで、相手の方に和んでもらいたいもの。例えば、冷たい季節であれば、温もりを感じさせるような手袋やマフラー、温かいミルクティー……。また、モノトーンの景色に映える、赤いポインセチアや南天の実など。
「寒いなあ」「気ぜわしいなあ」と感じる季節の真ん中で、思いやりの言葉が響くでしょう。
(前田めぐる)
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