「自分のことが嫌い」な人の特徴。自分嫌いを克服するためにやるべきこと
「自分のことが嫌い」でつらいと感じることはありませんか? 自分が嫌いだと、自分の考えや行動に自信を持てないというデメリットがあります。今回は心理カウンセラーの笹氣健治さんに、自分を嫌いになる原因と、自分嫌いを克服する方法を解説してもらいます。
あなたは自分のことが好きですか? 嫌いですか?
「自分のことが嫌い」という人は、自分に自信が持てなくて、目立たないように常に控えめな態度を取ったり、新しいチャレンジをためらったりして、自由で前向きな生き方ができなくて悩んでいるかもしれません。
そんな状態から抜け出して、明るく積極的で堂々と行動できる人になるにはどうすればいいか、一緒に考えてみましょう。
「自分のことが嫌い」と感じてしまう原因は?
そもそも、なぜ「自分のことが嫌い」と感じてしまうのか、原因を見ていきましょう。
具体的に自分のどこが嫌い?
「自分のことが嫌い」と思っているあなたに質問です。
具体的に自分のどこが嫌いなんでしょうか?
すぐにたくさん思いつく人もいれば、「なんとなく嫌い」「自分の全てが嫌い」と答える人もいるかもしれません。人によっていろいろあると思いますが、自分の嫌いなところは次の3つのどれかに当てはまるはずです。
「外見」が嫌い
顔が嫌い。特に、目、鼻、歯が嫌い……など、自分の外見が嫌いという人は多いかもしれません。
あるいは、太っている、痩せすぎている、足が短い、O脚……など、体型が嫌いという人もいるでしょう。
他には、肌や髪質などにコンプレックスを抱いている人もいるかもしれません。
「資質や能力」が無いのが嫌
頭が悪い、暗記モノが苦手、運動音痴、歌が下手、声色が変、といったところが嫌い。
といったように、自分の資質や能力に関するものを挙げた人も少なくないと思います。
「性格」が嫌い
優柔不断、引っ込み思案、あがり症、慌て者でおっちょこちょい、よくケアレスミスをする、といった性格が嫌い。
あるいは、素直になれず天邪鬼な態度をつい取ってしまう、怒りっぽい、嫌なことをくよくよ引きずる、といった感情的傾向について嫌い、と思っている人もいるでしょう。
なぜそこが嫌い?
さて、「自分のここが嫌い」というところを明らかにしたところで、次は、なぜそこが嫌いなのかを考えてみましょう。
そもそも、好きか嫌いかの違いは、それを「好ましい」と考えるか「好ましくない」と考えるかの違いです。
「好ましくない」と考える理由を一言で言えば、「こうあって欲しい」「こうあるべきだ」といった理想と異なっているから。
自分の中に理想があって、今の自分がその理想と異なっていることで「好ましくない」と判断しているのです。
では、なぜ理想と異なっていると「好ましくない」のでしょうか?
恐らく、「理想通りでないと、得たい結果が得られない」と思っていることが原因ではないかと思われます。例えば、次のようなことを思っていないでしょうか?
・外見が自分の理想と異なると、異性から好かれない
・資質や能力が理想と比べて劣っていると、活躍できない
・性格が理想通りでないと、嫌われたり他人に迷惑を掛けたりする
このような理由があって、私たちは自分の理想と異なる部分について嫌いになる、ということがお分かりいただけたかと思います。
自分が嫌いな人の特徴・性格
私たちは「自分の理想と異なる部分について嫌いになる」という話でしたが、自分のことをそれほど嫌いじゃないという人であっても、自分の理想と異なる部分を持っています。
むしろ、「自分はすべて理想通りだ」と思う人がいたら、その人は相当なナルシストでしょう。
自分のことが嫌いな人も嫌いじゃない人も、同じように理想と異なる部分を持っている。
それなのに、なぜ自分のことが嫌いな人と嫌いじゃない人に分かれるのでしょうか?
自分のことを嫌いになる人には、次のような特徴が見られます。
(1)自分の悪いところばかりに注目する
自分のことが嫌いな人は、自分の良いところには一切目もくれず、悪いところにばかり注目します。
まるで間違い探しのクイズをしているかのように、自分の理想と異なっているところを必死になって見つけ出そうとしているのですから、なんとも不思議な話です。
(2)自分より優秀な人と比較する
自分のことが嫌いな人は、常に自分よりも外見が優れている人、資質の高い人、性格の良い人と自分を比較します。
自分の良いところには目を向けず、自分より優秀な人と自分を比較して自分を嫌いになっているのです。
必ず負ける相手をわざわざ探して勝負を挑んでいるようなもので、これでは絶対に自分の良いところが見つかるはずがありません。
(3)極端な考え方をしている
理想を求めることは、決して悪いことではありません。理想を求めることは、成長・進化するためのモチベーションとなるからです。
ところが、自分のことが嫌いな人は、理想を求める際に、極端な考え方をします。
例えば、「外見が良くないと絶対にモテない」とか「資質や能力が高くないと絶対に成功できない」「性格が良くないと誰からも好かれない」といった考え方です。
このような考え方を冷静に振り返ってみると、ずいぶん極端な思い込みにとらわれていることがわかるはずです。
(4)自分の良いところを認めるのが居心地悪い
自分のことが嫌いな人は、他人から褒められたり羨ましがられたりしても、「いやいやいやいや、私なんて全然ダメですよ」と過剰に謙遜します。
まるで自分の良いところを意地でも認めないようにしているかのようです。
自分を肯定的にとらえることに慣れていないのかもしれませんが、せっかく他人が褒めてくれても素直に受け入れないので、「褒め甲斐がないから、もう褒めるのはやめておこう」と思われてしまいます。
(5)自分の欠点ばかりを意識する
自分のことが嫌いな人は、自分に何か一つ欠点を見つけると、「こんな自分はダメだ」と思い込んでしまいがちです。
例えば、人前で緊張してうまくしゃべれないだけで「私は仕事ができない人間だ」と考えてしまうのです。
人前で緊張してうまくしゃべれないことは、自分という人間の一部分にすぎないのに、その一点が理想通りでないというだけで「自分は全てにおいてダメ」と考えてしまうのは、冷静に考えれば、なんとも馬鹿げたことだと分かると思います。
(6)世間一般のモノサシで自分を測っている
自分のことが嫌いな人は、自分が理想通りでないから自分を嫌いになります。ここで改めて考えてみたいのですが、その「理想」って何なのでしょうか?
外見について言えば、国や時代によっては、ふくよかな体型が美人だと言われることもあります。
この他にも、現代の日本における外見の基準が絶対的なものではないという事例は、いくらでも挙げることができます。
世間一般として望ましいと考えられているだけで、そうじゃなければ絶対にだめだ、という話ではありません。
つまり、自分が嫌いな理由の根拠となっている「理想」そのものが、絶対的なものではなく、単に現代日本の世間一般のモノサシにすぎない、ということなのです。
そんなモノサシで自分を測って一喜一憂することに、どれだけ意味があるというのでしょうか?

あなたは自分のことが嫌い? その深層心理を10の質問で診断します。
自分嫌いを克服するための5つの考え方
自分のことが嫌いだと、自分に自信が持てず、卑屈な態度になりがちで、前向きに行動しようと思えない……といったように、何も良いことがありません。
かと言って、自分のことを好きになるべきだ、と言うつもりもありません。
自分のことが嫌いだという考え方を少しだけ修正して、「こんな自分もいいかな」と気楽に思えるようになることを、まずは目指してみてはいかがでしょうか?
そうなるにはどうすればいいか、その方法をこれからご紹介したいと思います。
(1)「自分が嫌い」と思うことをやめる
先ほども言いましたが、自分を嫌いでない人も、理想と異なる部分を持っています。つまり、理想と異なる部分があることと、自分を嫌いになることは、関係がないのです。
理想と異なる部分があっても、自分を嫌いにならないことは可能だ、ということです。
自分が嫌いな人は、自分でそれを選択していると言えます。自分で選んでいるのであれば、自分のことを嫌いにならないことも選択できるはず。
まずは、「私は自分を嫌いになることをやめる」と腹を括ることが必要です。
(2)自分を嫌いになることのメリット・デメリットを考える
「自分を嫌いになることをやめると決める」と言われても、すぐに「はい、そうします」とは答えられないかもしれません。
そこで、次に考えたいのが、自分を嫌いになるメリットとデメリットは何か、です。
「自分を嫌いになることにメリットなんてあるの?」と思われるかもしれませんが、ちゃんとあります。
自分が嫌いだと、「私はダメな人間だ。だから、何をやってもうまくいかないんだ」と思ってしまい、チャレンジを避けるようになります。
チャレンジをしなければ、失敗することはありません。失敗して周りからバカにされることもなく、自分の力のなさを痛感することもありません。
要するに、「自分のことが嫌い」でいる間は、ずっと自分の殻に閉じこもっていられるので、より大きな痛みを味わうことから自分の身を守ることができる。これが自分を嫌いになるメリットです。
一方、自分を嫌いになることのデメリットですが、自分を嫌いでチャレンジを避けていると、失敗しない代わりに成功もしません。
チャレンジをしなければ、今以上に成長・進化することはありません。これが自分を嫌いになる最大のデメリットです。
こうやって自分を嫌いになるメリット・デメリットを考えてみて、どのような気持ちになったでしょうか?
すぐに自分嫌いをやめられなくても全然問題ありません。自分のことを嫌いだと考え続けるのは良くないかも……と少しでも思えたら、それは大きな進歩だと言えます。
(3)自分の個性で勝負する
自分を嫌いな人は、自分より優秀な人と自分を比べますが、まずそれをやめましょう。
どうしても羨ましく思ってしまう気持ちは分かりますが、人は人、自分は自分です。
人それぞれ個性があるから、社会は成り立っているのです。
例えば、映画の出演者は美男美女ばかりではありません。いろんな顔、いろんな体型の人がいるからこそ、映画が味わい深くなるのです。
他人の優れたところと自分を比べて落ち込むのはやめて、自分の個性は何だろうかと考えてみることをぜひおすすめします。
(4)「自分を好きか嫌いか」という思考から卒業する
ここまで読んできて、自分のことを好きとか嫌いと考えることに意味があるのだろうか、と疑問を持たれた人もいるかもしれませんね。
そうなんです。自分という存在は、そもそも好き・嫌いの対象として考えてはいけないものなのです。
例えば、食べ物であれば、嫌いなら食べないという選択が可能ですが、自分を嫌いでも選ばない選択は不可能です。
つまり、自分が嫌いでも私たちにはどうすることもできないのですから、自分を好き・嫌いの対象としてはいけないのです。
自分に対して望ましいのは、事実を認識することです。
身長の場合で言うと、「背が低い」というのは何かに対しての比較ですので、事実の認識ではありません。事実を認識するとしたら、「身長が〇センチ」ということになります。
事実を認識するだけですから、良い悪いといった評価は入りません。好き嫌いという好みが入る余地もありません。
自分を見る時は、このように評価や好みを差し挟まず、事実を認識することを意識すべきです。そうすれば、自分が好きか嫌いかという思考にとらわれなくなります。
(5)変えられないもの・変えるべきものを見極める
自分の事実を認識できたら、それは変えられないものか、変えるべきものかを考えましょう。
外見はたいていの場合、変えられないものです。一方、性格や資質や能力は、努力や心がけによってある程度は変えられます。
変えられないものについてアレコレ悩むのは意味がありません。変えられえない現実を受け入れることが賢明な判断となります。
なお、現実を受け入れるのは、「仕方ないと諦める」こととは違います。今まで自分では嫌いだと思っていたことが、何かの場面では役に立つこともあるわけですから。
現実を受け入れるということは、何かにつけて一喜一憂するのではなく、「良い時もあれば悪い時もある」と割り切ることだと言ってもいいでしょう。
そして、変えられるものについては、変えるべきかどうか考えて、必要であれば変える努力をしましょう。
自分嫌いを克服するポイントまとめ
自分嫌いを克服するポイントをまとめます。
自分の一部分を世間一般のモノサシで測るのはやめて、それは自分の個性だと考える。そして、その個性を磨いて、その個性で勝負する。
もし、その個性が修正すべきものであれば、変える努力をすればいい。
「自分のことが嫌い」とうじうじ考えているのは時間の無駄であり、現実を受け入れるなり、変える努力をする方が賢明な生き方である。
このように考えることができたら、それはとても素晴らしいことだと思います。
「自分嫌い」は克服できる
「自分のことが嫌い」なのは、理想を求める意識が高いからです。
その意識の高さを自分の成長につなげられるといいのですが、多くの場合、自分を否定するばかりで、後ろ向きになっていきます。
誰でも多かれ少なかれ、周りと比べて自分を嫌いになります。それは見方を変えると、自分を成長させるポイントに気付いたと言えます。
人は気付いた範囲でしか変化できません。その気付きを、自分を高めることにつなげていけるといいですね。
(笹氣健治)
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