同調行動とは? 同調行動がもたらすメリットとデメリット
自分の考えや意見をまわりに合わせたり、同じような行動をしたりすることはありませんか? そういった同調行動の原理が働くと、メリットもデメリットも生まれてきます。この記事では、日常よくおこる同調行動について、心理カウンセラーの高見綾さんに解説してもらいました。
普段、自分の考えや意見をまわりに合わせたり、同じ行動をしたりすることってありませんか?
意識的にも無意識的にも合わせてしまうことを、「同調行動」といいます。
今回は、日常的によくある同調行動を紹介し、そのメリットとデメリットについて解説します。
同調行動の心理や効果を知り、仕事や人間関係、恋愛に賢く活かしていきましょう。
「同調行動」とは?
同調行動とは、どんな意味を持つのでしょうか?
具体例や背景を見ていきましょう。
同調行動の意味と具体例
同調行動とは、「まわりの意見や行動に合わせて、自分も同じように行動をしてしまうこと」をいいます。
同調行動は、意識的にする場合もありますし、無意識のうちに行っているケースもあります。
もともと私たちは、好意を持っている相手の言動やしぐさを無意識のうちに真似し、自分と似ている人に対して好感を持つ傾向があります。
社会生活を送るうえで、日本人は特に「みんなと一緒」だと安心する気質を持っています。
ファッションの流行は代表的な例です。
みんなが流行の服装をしていたら、オシャレに見えてきますし、自分にとっては好みではなかったとしても「流行に乗り遅れているとは思われたくない」「みんなと同じことをしなくては」といった心理が働いて、流行の服を買ってしまうことも多いですよね。
SNSなどでも、みんなが「いいね!」を押していると自分も押しやすくなりますし、ネットで物を買うときも、レビューが多いものや、たくさんの人が高評価をしているものを参考にして買ったりします。
私たちは「多くの人が買っているものなら、信頼できる商品なのだろう」と無意識のうちに判断しているのです。
飲食店で、人気No.1メニューを頼む人が多いのも同様の心理からきています。
同調行動が引き起こされる背景とは?
このような同調行動は、まわりの動向を見たうえで自分の意見や行動を決めようとしていることから起きてきます。
集団の中では「みんなに好かれたい」「人とちがうことをして嫌われたくない」という心理が働きますし、「まちがいたくない」「正解を選びたい」という心理から行われることも多いです。
みんなと一緒の考え方や行動をとっていれば、まちがえることはないだろう、と考えるのです。
しかし実際には、多数派がまちがえることもあるわけですが、それでも、多数派に所属しておけばみんなも一緒にまちがえることになるので、自分だけ嫌われることは起きないわけです。
このように同調行動は、集団の中で生き抜く知恵として私たちのごく身近にたくさん起こっています。
「同調行動」のもたらすメリット・デメリット
集団の中で生きる私たちにとっては身近な同調行動ですが、同調行動を起こすことにはメリットだけではなくデメリットも存在します。
メリットとデメリットについて、代表的なものを3つずつ紹介します。
メリット1:人間関係がうまくいきやすい
特定のコミュニティに所属している場合は、同調行動をとることで相手との心理的な距離が近くなり好意を持たれやすくなります。
人は自分と同じ趣味趣向、考えを持つ人のことを好きになる傾向があるので、相手と同じことをするだけでも人間関係はうまくいきやすくなります。
とくに嫌いなものが一致している場合は、仲間意識が生まれやすいようです。
集団の中で同調行動をとらないということは、孤立してしまうリスクがあり、もしそうなってしまった場合は精神的に非常につらい思いをすることになります。
その点、人間関係がよくなると、有用な情報もたくさん集まってきます。
困ったときに助けてもらうなど、融通し合えるメリットもあるでしょう。
メリット2:安心感がある
日本人は「みんなと一緒」であることを好みます。
同調行動をするメリットは、安心感にあるといえるでしょう。
会社などの場合は、規則やルールを守ったり、会社のカラーに合わせた言動をとったりすることによって、その組織の一員として広く認められるようになります。
まわりと同じ言動をして価値観を共有することによって嫌われる可能性は低くなりますので、居場所のある安心感を得ながら精神的に平和に過ごせるのがポイントです。
メリット3:楽ができる
たとえば、友だちが頼んだものと同じメニューを選んだり、人気ランキングの上位に位置しているお店を選んだりすることは、自分で一からすべてを考えなくていいので楽だという側面があります。
そのうえ、ほかの人からも支持されているということは、それなりの理由があるはずなので満足度も高くなることが多いでしょう。
それに、もしおいしくなかったとしても、「ほかの人も選んでいるのにイマイチだった」という理由が使えるので楽ですよね。
デメリット1:個性が発揮されにくくなる
同調行動をしていると、まわりと一緒という安心感は得られますが、個性は発揮されにくくなります。
「なんとなくみんなに合わせておこう」という緩やかな発想ではなく「自分の考えとちがっていても、まわりに合わせなければならない」と考える人が増えると、人と少しちがうことをするだけでも叩かれる可能性が出てきます。
するとみんなが個性を抑えるようになるので、組織の発展を阻む要因になってしまうことがあります。
デメリット2:窮屈になる
自分の考えと、まわりの人の意向が一緒であれば何も問題はないですが、ちがう場合は、あまり同調行動をしすぎていると、だんだん窮屈に感じてくるでしょう。
自分が思っていることと実際の行動がズレてくると、人はだんだんストレスを感じるようになります。
同調行動をする場合も自分なりに納得していればいいですが、「嫌われたくないから」といった自分を守るための理由だけで行動をしていくと、自分の中で選択肢のない不自由な感覚が膨らんでいく恐れがあります。
デメリット3:まちがったことをしてしまう恐れがある
同調行動で気をつけたいのは、多数派のみんながまちがっていることもある、という点です。
まわりと同じ行動をしていればそのときは安心ですが、何も考えずに行動をしていると、まちがったことに加担してしまう恐れがあります。
たとえばSNSで、ある情報が多くの人によって拡散されていたから自分も同調して拡散してみたとします。
しかしあとになってから、実は事実と異なる情報であることがわかった、という場合もあると思います。
こういったケースでは、結果的に本人がやったことだと見なされてしまうので注意が必要です。
「同調行動」の心理や効果を知って、賢く使おう
まわりの意見や行動に合わせて、自分も同じように行動をしてしまうことを同調行動といいます。
同調行動をすると、みんなと一緒であるという安心感が得られ、人から好感を持ってもらいやすくなるという効果があります。
恋愛や職場などで、良好な人間関係をつくっていくためには、知っておくと役に立つ心理効果だといえるでしょう。
しかし一方で、まわりに合わせることで自分らしさが失われ、窮屈になってストレスを抱え込んでしまうリスクもあります。
そういった両面の特徴をよく理解して、バランスを取りながら賢く日常に活かしていきましょう。
(高見綾)
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