見覚えのない請求書が「内容証明」で送られてきたらどうする?
毎年被害が拡大し続ける特殊詐欺(さぎ)。アダルトサイトを名乗る架空請求メールが届いた経験のあるひとも多いだろう。
もし身に覚えのない請求書が「内容証明」で送られてきたらどうするべきか? 特殊な郵便に加えて威圧的な文面を見て「タイヘンなことが起きている!」と思うかもしれないが、内容証明は「その内容の文書を、確かに届けました」の意味しかないので、不当な請求であれば破いて捨てても構わない。
借金の催促で起こりやすい「聞いていない」を防ぐには有効な手段だが、個人が「〇〇せよ」など高圧的なことばで表現しても、強制力もなければ法律的な効力も持っていないので、慌てる必要はまったくないのだ。
内容証明なら「聞いてないよ」は許されない
内容証明はその名の通り、いつ、どんな内容の手紙を送ったかを、郵便局が証明してくれる郵便だ。専用の用紙もあるが、現在はほかの用紙でも構わない。ただし字数に制限があり、1枚に記載できるのは、
・縦書き … 20字 × 26行
・横書き … 20×26 / 13×40 / 26×20
の520文字以内だ。差出人/郵便局の控えを含めた3通を作成し、郵便局に持ち込めば、あとは指定の料金を支払うだけで良い。現在はインターネットでの申し込みも可能なので、はじめてのひとでも戸惑うことはないだろう。
本来は「そんな手紙、受け取っていない!」とバックれられるのを防ぐためのもので、借金の催促などに用いられるのが一般的だ。金融機関から借りたお金だけでなく、知人に貸した場合も「時効」があり、一定期間を過ぎると返済の義務が消滅してしまう。
「返してね」と催促せずに期限を迎えると、「回収する意思がない」と判断され、返済不要になってしまうのだ。
そこで有効なのが内容証明で、いつ、どんな手紙を送ったのかが証明されるので、裁判になっても「確かに催促しました」と証拠となるし、本気で回収する意思表示にもなる。たとえ「受領拒否」をしても、郵便受けに入った時点で「内容が伝わった」とされるルールなので、読まずに送り返しました!と主張しても意味を持たない。
内容証明で時効をなくすことはできないが、催促してから6ヶ月以内に裁判や和解などの手続きをすれば時効を中断できる(民法・153条)ので、論点となる「日付」を証明するに最適な方法なのだ。
内容証明=正しい内容、とは限らない
残念ながら、身に覚えのない請求書にも使われることがある。相続や遺産分配のもつれから、顔も知らないような親戚から内容証明で金品を請求されたなんて話もよく聞く。普段みかけない郵便だけに、なにが起きた?と慌てるかもしれないが、内容証明は「その内容」が正しいことを証明しているわけではない。
つまり、送り主の主張が正当かどうかは定かではないし、郵便局が真偽を確かめるわけでもない。
もし個人から、「〇〇円支払え」「さもないと□□する」などの内容証明が送られてきても、身に覚えのない内容であれば無視して構わない。行政機関ならいざ知らず、強制的に取り立てることもできないし、代わりになにかを差し押さえることもできないからだ。
内容証明が使われると、さも法的な効力があるように感じるかもしれないが、それは誤解に過ぎず、「正しい内容」である証明にもならない。もちろん支払う義務があればきちんと対応すべきだが、「はったり」に使われるケースも多いのでご注意を。
まとめ
・内容証明は、いつ/どんな内容を伝えたかを、郵便局が証明してくれる郵便制度
・受領拒否しても、郵便受けに入った時点で「読んだ」と解釈される
・内容に法的効力はないので、いわれのない要求を「うのみ」にしないように
(関口 寿/ガリレオワークス)