超雑食の音楽好きが改めてBTSに向き合ってみた #PM6時の偏愛図鑑・特別編
定時後、PM6:00。お仕事マインドを切り替えて、大好きなあの映画、あの舞台、あのドラマを観る時間が実は一番幸せかもしれない。さまざまな人が偏愛たっぷりに、働く女性に楽しんでほしいエンタメ作品を紹介する連載です。今回はその特別編となっています。
BTSとは
今、国境を越えて人々を熱狂させているグローバルスーパースター、BTS。2013年に韓国でデビューし、翌2014年には日本のオリコンウィークリーチャートで1位を記録。ジワジワと世界中にファンを増やし、昨年8月には、シングル「Dynamite」で韓国人アーティストとして初の米ビルボード・シングルチャート1位に輝いた。
さらに韓国人アーティストとして初めて、今年のグラミー賞「第63回グラミー賞」ではベストポップデュオ/グループパフォーマンス(BEST POP DUO /GROUP PERFORMANCE)にノミネートされ、単独パフォーマンスを行った。歴史に残る快挙だ。
一体なぜ、BTSはここまで人気になったのだろう?
私は、東方神起やSHINeeが好きなK-POPファンだ。BTSのことももちろん、世界的にブレイクする前から存在を気にはしていたが、そこまで深く追いかけられてはいなかった。ライブを観そびれた、というのもある(ハマるきっかけとして大きい)。お気に入りの曲にも出会ったが、既にライブチケットは入手困難だった。
そんな中、「BTSへの偏愛を書いてくれないか」との依頼をいただいた。
とても光栄に思ったが、上述の通り私はまだ深くBTSに触れられているわけではないので、もっとほかに適役がいると思う、と正直に伝えた。
ただ同時に、超雑食の音楽好きとして、BTSが世界で人気になった理由について自分なりに考えることはできる、とも伝えた。思春期を過ごしたドイツで欧米のロックやポップスにハマり、そこに軸足を置きつつ国籍ジャンルを問わず音楽を楽しんできた中でK-POPにハマったので、その観点からでよければ、と。
すると、それが読みたいと言っていただけた。
というわけで、BTSに改めて向き合い、彼らの音楽から感じたことを綴っていこうと思う。
私的に思う、世界的にBTSが人気になった理由
私が初めてBTSの音楽に触れたのは、確か2014年頃。新大久保のカフェでMVを観た。バッドボーイ風のファッションと映像、曲もK-POPというよりヒップホップ。あまり個性や新しさを感じられず、何枚かアルバムも聴いたが、やはりピンと来なかった。
ところがその後、2017年。「MIC Drop」を聴いて驚いた。「かっこいいやん!」と。
無駄なものを削ぎ落としたトラック、骨太なラップ、印象に残る振り付けと7人の迫力あるダンス、キャッチーな歌メロ。ゴリゴリのヒップホップだが、個性があり、中毒性があった。
2018年、今度は「FAKE LOVE」で、「ロックやん!」と驚いた。
これは偽物の愛だ、という悲痛な叫びを、エモーショナルな歌とダンスとラップで見事に昇華していた。
その後、たまたま耳にして、いいなと思った「Make It Right」が、BTSとエド・シーランのコラボ曲だと知ったときも驚いた。
そして、2020年。レトロなディスコ・サウンドの「Dynamite」が世界的に大ヒット。
ここで、まず言えること。BTSの音楽は、K-POPではない。もっと広く普遍的なポップ・ミュージックだ。そういう形へと進化した。
今回初めて彼らのライブ映像を観て唸ったのは、パフォーマンスの迫力と安定感だ。欧米、特にアメリカで人気を得るには、声量のある歌声は必須。相当に鍛錬を積んだであろうことが伺えた。もちろんラップやダンスでも。
しかしそれだけでは、彼らのブレイクを説明しきれない。歌やダンスが上手い歌手はアメリカに山ほどいる。
私が思うに、熱狂できる“グループ”の到来を、世界中が待っていた。
ポップ・ミュージックの歴史を振り返ったとき、アイドル的な人気を持つ世界的グループがいなかった時代などない。ビートルズも、最初はアイドル扱いされていた。だが近年、そういった存在がいなかった。
ボーイズグループとして思い浮かぶのはイギリスのOne Directionだが、2016年に活動を休止。ではロックバンドは?と考えると、デスクトップで作る音楽と比べ、手間とお金がかかるバンドという形態を取るグループが、そもそも激減している。もちろんいないわけではないが、テイストが細分化され、大勢を熱狂させるグループが生まれにくくなっている。
そんな中、世界を視野に入れて活動する韓国のグループは、ジワジワと欧米に進出。……と考えたとして、まだ疑問が残る。歌って踊れて曲も良い実力派グループが韓国に数多くいる中、なぜBTSなのか?
これについては相当考えたが、おそらく「物語」だと思う。弱小事務所に所属し、実力で這い上がってきたという、国境を越えて人々に夢や希望を与える物語を彼らは持っていた。用意された成功ではなく、努力と情熱で勝ち取ってきたのだと。
さらに、BTSの曲やラップ、歌声は、アメリカのポップ・ミュージックが血肉になっているのが分かるため、欧米の人々にとって耳馴染みがいい。彼らの歌唱法や、歌詞にもあるファンク&ソウルな音作りが炸裂している「Dynamite」は、その集大成といえるだろう。
また「Airplane pt.2」ではラテン、「IDOL」ではアフリカン・ビートと、様々な人種の音楽も取り入れている。2月に出演した「MTV Unplugged」ではイギリスのロックバンド、Coldplayの「Fix You」をカバー。欧米のロック好きからの注目度は一層高まったはずだ。
だが、私の中でストンと腑に落ちた瞬間は、彼らのライブ映像を観たときに訪れた。
2018年のBTS WORLD TOUR ‘LOVE YOURSELF’ SEOULで最後に歌った曲「Answer:love myself」。美しいメロディーのミディアムナンバーだ。最初は穏やかに聴いていたが、このフレーズで胸が苦しくなった。
「You’ve shown me I have reasons I should love myself」
(自分自身を愛すべき理由を君が教えてくれたんだ)
喉の奥が苦しくなり、涙が出た。これは世界中のどんな人にも響く言葉だ。泣いてしまったのは、ただ曲が良いからだけではない。彼らの歌声やラップに芯があり、表情に嘘がないからだ。つらい気持ちを抱えている世界中の人たちに、彼らは音楽を通じて寄り添ってきたんだな、とこの瞬間、理解した。そして彼ら自身もきっと音楽に救われてきたんだろう、と。
生きていれば、自分を愛せなくなるときはある。そんなとき音楽に救われた経験は、音楽を愛する者なら誰にだってあるはずだ。
スマホでそれぞれが好きな音楽を聴く時代に、スターは生まれにくい。だが、実は多くの人がBTSに力をもらっていた。BTSは、奇跡の存在になっていくのかもしれない。
BTS初心者におすすめのコンテンツ(LIVE映像)
■BTS WORLD TOUR ‘LOVE YOURSELF’ SEOUL(2018年8月ソウル公演)
・「FAKE LOVE」 01:24:55
・「Answer : Love Myself」 02:22:18
■BTS WORLD TOUR ‘LOVE YOURSELF’ JAPAN EDITION at 東京ドーム(2018年11月東京公演)
・「Mic Drop」01:52:07
■BTSの全19タイトル、dTVで順次独占配信中
今回紹介したライブ映像は、月額制の動画配信サービス「dTV」で観ることができる。韓国、東京、ロンドン、ニューヨークなどでのライブ映像をはじめ、彼らが出演する映画やドラマ、ドキュメンタリー、バラエティまで、2017年~2020年にリリースした映像作品全19タイトルが3月5日から見放題だ。
公式ライブ映像は、基本、DVDやBlu-rayで観るもの。とはいえ、時間があるときでないと、なかなか手が伸びなかったりもする。その点、配信だと、「あの曲を」「あのダンスを」とスマホで観たいところだけを手軽に何度も観られるのが良い。
もちろん、じっくり全編一気に観るも良し。大画面で観たいときには、Chromecastを使ってテレビで観ることも可能だ。月額550円(税込)で、31日間お試し無料。BTSが気になっていた人はこの機会にチェックしてみては。
(文:ヨダエリ)
提供:dTV