医師に聞く、将来の妊娠に備えて今から始められる「卵活」って?
「妊娠」は奇跡の連続がもたらすもの。
そろそろ赤ちゃんがほしいと思っている人も、もう少しお仕事を頑張ってから「いつかは……」と考えている人も、まずは自分の体や妊娠の仕組みについて正しく知り、日頃から赤ちゃんを迎える準備をしていくことが大切です。
将来に備えて今からできることとしては、どんなことがあるのでしょうか?
今回は、女性の体や妊娠の仕組み、「妊娠しやすい体づくり」について「英ウィメンズクリニック さんのみやクリニック」副院長の岡本先生にお話を伺いました。
妊娠に大切な「卵活」って?知っておきたい卵子のこと
――今日はよろしくお願いします。そもそも妊娠できる確率は、どのくらいのものなのでしょうか?
健康な若い男女でも、1回で妊娠に至る自然妊娠率は約30%といわれていて、35歳を超えるとグッと確率が下がる傾向にあります。
また食生活の乱れや過度なストレスも確率低下の要因になります。そのため「妊娠して当然」ということではないのです。
——妊娠は奇跡ともいえることなのですね。少しでも妊娠の確率をあげるために日ごろからできることはあるのでしょうか?
おすすめしているのは「プレコンセプションケア(以下、プレコン)」です。妊娠前から身体を整えていこうという考えのことで、2012年に世界保健機関(WHO)から提唱され、日本でもその考えが広まってきています。
項目は多岐にわたりますが、例えば過剰なダイエットや肥満は避けて適正体重を心がける、サプリメントを摂取するといった手軽に始められることから取り組んでみてはいかがでしょうか。
——最近、卵の質を上げる「卵活」が注目されていますが、卵の質が良いとはどういうことでしょうか?
質の良い卵とは「卵巣にある卵胞が成熟すること」、「卵胞の中にある卵子が成長し、精子を迎え入れて受精すること」、「受精した卵子がスピードよく分裂すること」の3つの流れが滞らないことが大切。
加えて、卵が元気に活動していることも重要となります。質の良い卵子とは、3つのパワーを持っている卵子のことをいいます。
——卵の状態が肝心なのですね。質の良い卵子の3つのパワーをそれぞれ詳しく教えてください。
まずは、「眠りから覚めて成長するパワー」。卵子の年齢は実年齢と同じで、実年齢分眠っている状態となります。タイミングが来た際に、40時間ほどの短時間で急激に成長できるパワーを持つ卵子だけが排卵に至ることができます。
2つ目は「精子を迎え入れて受精するパワー」。10個に1個くらいの確率で精子が来ても受精できない卵子があります。先ほどの「成長するパワー」がない卵子だとその確率は10個中2個ほどに上がります。
最後は「細胞分裂するパワー」。受精卵は着床をするまでに約100回の細胞分裂をします。5日間の短期間でこれだけの回数の分裂をするパワーが必要となり、これら3つのパワーを兼ね備えた卵子が「質の良い卵子」といえるでしょう。
——どういった要因が卵の質を悪くしてしまうのでしょうか?
主な要因は「加齢」と「酸化ストレス」の2つです。基本的には皆平等に、35歳を超えると卵巣の老化が進みます。また酸化ストレスについては、卵巣をはじめとしたすべての細胞の老化の原因となり、加齢によって身体に生じる酸化ストレスが卵の質を低下させてしまうこともわかっています。
——これらの要因を防止したり改善したりする方法はあるのでしょうか?
人によってライフスタイルや取り巻く環境に違いはありますが、将来妊娠を考える場合は、生活習慣の見直しが大切です。
ストレスをためないこと、タバコ・過度な飲酒を控えること、睡眠をしっかりとることに取り組んでいただきたいです。加えて、食生活にも気をつけましょう。バランス良い食事を心がけ、不足している栄養素については積極的にサプリメントも活用して補うといいでしょう。
どんな栄養素を摂るといいい?卵を酸化ストレスから守ってくれる成分「PQQ」って何?
——食生活の見直しについて、サプリメントで足りない栄養成分を補助するといったお話がありましたが、具体的にどういった栄養成分を摂るといいのでしょうか?
まずはプレコンにもある葉酸。妊娠前からの摂取が推奨されていますが、葉酸が不足するとがんや生活習慣病の原因にもなるので、妊婦さん以外にも大切な栄養素となります。
また細胞の老化を防ぐためには、ビタミンDもよいでしょう。鉄も重要で、子宮内の環境を整えるためにも摂取しておきたいですね。中でも吸収率の高いヘム鉄がおすすめです。
——なるほど。男女ともに摂取すると良い成分もあるのでしょうか?
亜鉛もおすすめですね。精子のコンディション向上が期待できるとあって男性が摂る栄養素のイメージがあるかもしれませんが、排卵や着床に関わるホルモン合成などにも必要で妊娠を望む女性にとっても大切です。パートナーと一緒に摂取するのもいいでしょう。
そして、「PQQ」。抗酸化作用があるといわれており、妊娠を望む男女の体に良い作用があると報告されています。
——PQQは初めて聞きましたが、具体的にどういう物質なのでしょうか?
ピロロキノリンキノンのことで、卵巣をはじめとした細胞の老化を防ぐ抗酸化作用があります。卵子のエネルギー源であるミトコンドリアの活性を高め、卵巣の中で卵が十分に成熟するのをサポートしてくれることが近年の研究でわかってきました。
——PQQは食品から摂取できるのでしょうか?
ピーマンや納豆、豆腐、緑茶などに含まれています。ただ、理想量を摂取しようとすると、PQQを10㎎摂取するために、ピーマン10,430個、納豆1,025パックといった量になってしまうので現実的ではありません。
食事は、あくまでバランスの良さが重要です。ですから、多忙な現代人には特にサプリメントで必要な栄養素を補うことを推奨しています。
——そのほか将来の妊娠を考えたときに心がけておくことはありますか?
あとは睡眠ですね。酸化ストレスに打ち勝つ抗酸化観点で非常に重要です。大人にとって理想の睡眠時間は1日8時間といわれていますが、なかなか難しいでしょう。できる限りの睡眠時間を確保しつつ、睡眠の質にも心がけてみてください。
また、今回おすすめした栄養素はすべて、女性だけではなく男性も一緒に摂取してもよいものです。パートナーと摂取することで、一緒に妊娠について考えるきっかけになるのではないでしょうか。
——岡本先生ありがとうございました
妊娠はパートナーと一緒に考える大事な出来事です。そろそろ赤ちゃんがほしいと思っている人も、いつかはほしいなと考えている人も、日頃から身体を整えて準備しておくことが大切です。
また、日頃から相談できるかかりつけの婦人科医を見つけてみてくださいね。
ロート製薬では、「妊活を正しく知る 女性のからだナビ」にて、医師・専門家監修の妊活や卵活に関する情報をお届けしています。妊娠についてお考えの人は一度サイトを訪れてみてはいかがでしょうか。