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2021年01月23日 19:57 更新

【医師監修】妊娠できる年齢にはリミットがある!妊娠・出産しやすい年齢と高年出産のリスク

子供がほしいと思っていても、仕事や経済的な事情などで今すぐに妊娠することはできない人もいることでしょう。妊娠できる年齢、妊娠・出産をしやすい年齢はいくつくらいなのでしょうか? 高年出産のリスクとともに、一般的な目安をお話します。

妊娠できる年齢って?

妊娠が可能な年齢とは!?妊娠検査薬のイメージ
Lazy dummy

妊娠できなくなるのは閉経の約10年前

妊娠するには、受精できる卵子を排卵していることが重要です。ところが、45歳前後になると、規則的に月経(生理)がきていても排卵は起きていないこともあります。

また、排卵が起きていたとしても、卵子の質は年齢とともに低下していくため、だんだんと妊娠しにくくなっていきます。

そのため個人差はあるものの、妊娠できる年齢の目安は、閉経を迎える10年前くらいまでとなります。

卵子は老化し数が減っていく

年齢と卵子の変化について、もう少し詳しく見ていきましょう。

卵子の数がもっとも多いのは、胎児の頃の胎生20週くらいで約700万個となります。その後、卵子の数は減っていき、出生時には約200万個になります。さらに思春期には20万~30万個になり、閉経する頃には卵子の数はほぼ0個に近づきます[*1]。

年齢ごとの卵子の数グラフ

卵子は新しく作られて補充されることがないため、女性が年を重ねるとともに卵子も数を減らしながら年を重ね、老化していきます。そのため、年齢が高くなると卵子が受精しにくくなったり、染色体異常が起こりやすくなります。

何歳になっても妊娠・出産できる人もいますが、一般的にはこうして年齢とともに妊娠しにくくなっていきます。

妊娠しやすい年齢って?

妊娠しやすい年齢もある!?妊婦のイメージ
Lazy dummy

妊娠しやすいのは20歳代~35歳くらい

妊娠できる年齢と、妊娠しやすい年齢との違いも見ておきましょう。

女性が25歳以上になると、自然に妊娠できる確率が少しずつ減っていきます。35歳くらいからは急激に妊娠できる確率が低下します。その後45歳以降になると、個人差はあるものの、体外受精や顕微授精を行っても妊娠できないケースが非常に多くなります。

なお、35歳以上になると、妊娠できたとしても流産や染色体異常が増えていきます。

このように生物学的に見てみると、閉経を迎える10年前ほどまでは妊娠はできますが、妊娠しやすい年齢は20歳代~35歳くらいだと考えられます。

ただし、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系の病気がある場合はさらに妊娠しづらくなるため、子供がほしいと思ったら早めにかかりつけの産婦人科で相談するのがおすすめです。

「出産しやすい年齢」も考えよう

妊娠しやすい年齢の女性のイメージ
Lazy dummy

妊娠は、無事出産を終えて赤ちゃんと暮らしていくための第一歩です。残念なことに、妊娠できても流産してしまったり、お母さんや赤ちゃんが命を落とすこともあるからです。
「妊娠できる年齢」「妊娠しやすい年齢」とともに、「出産しやすい年齢」についても考えてみましょう。

流産しにくい年齢って?

年齢を重ねるにつれて、妊娠しても流産しやすくなったり、赤ちゃんが死亡してしまう確率が増えていきます。

妊娠率・生産率・流産率の年齢による変化グラフ
生殖補助医療を受けた場合の妊娠率・生産率・流産率の年齢による変化(ET:胚移植)
公益社団法人日本産科婦人科学会, ARTデータブック2016年版[*2]より

流産率についてのデータを見ると、35歳前後くらいから流産率は増えていきます。47歳くらいになると、流産率は約80%となってしまうのです[*3]。

40歳を越えても元気な赤ちゃんを出産する人はいますし、若くても流産する人もいますが、全体的な確率を見ると、流産しにくい年齢は35歳くらいまでと考えることができます。

加齢で赤ちゃんの死亡率も上がります

妊娠22週以降の胎児や、生後1ヶ月以内の新生児が死亡してしまう確率のことを「周産期死亡率」といいます。

周産期死亡率はお母さんが35~39歳になると上がり始め、40歳以降はさらに増えていき、45歳以上で急上昇します[*4]。

母の年齢周産期死亡率のグラフ

女性の年齢とともに卵子に染色体異常が起こる確率も上がっていき、妊娠・出産中のトラブルも起こりやすくなる ため、周産期死亡率も上がっていくのだと考えられます。
ただし、40歳を越えていても元気な赤ちゃんが生まれる人もいますので、神経質になり過ぎないで、今の自分の体調を知って産婦人科に相談しておくことが大切です。

高年出産はハイリスク

35歳以上で出産することを「高年出産」といいます。

35歳以上で妊娠・出産をすると、赤ちゃんだけでなくお母さんの体にもトラブルが起きやすくなります。

すでにお話したような染色体異常や流産、周産期死亡のほか、前置胎盤、妊娠糖尿病のような合併症や病気も年齢とともに起こりやすくなります。たとえば妊娠高血圧症候群の場合、発症しやすい条件の1つとして「お母さんが40歳以上であること」もあげられているのです。

また、個人差はありますが、一般的には年を重ねるにつれて体力も低下しやすいです。そのため、お産に時間がかかったり、陣痛が弱まったり、お産で出血が増えることもありえます。

もちろん、高年出産でも無事に妊娠・出産を済ませて元気な赤ちゃんと日々を送っている人はたくさんいます。年齢が高くなってからの妊娠・出産を考えている人は、さまざまなリスクがあることを知った上で、妊娠中やお産の時の急変にも対応できる医療施設を選び、妊娠前だけでなく妊娠中も健康づくりに気を配って、赤ちゃんを迎える準備を整えていきたいですね。

男性も生殖能力が低下します

妊娠させられる年齢は男性にも
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年齢と妊娠が深く関わっているのは、女性だけではありません。男性の場合も、年齢が高くなると生殖能力が低下していきます。

男性の場合、年を重ねるにつれて精子をつくる精巣の機能が低下していきます。そのため、生液の量や正常な形態の精子がいる確率、精子の運動率は減っていくのです。さらに遺伝子レベルでの精子の異常も増えていくため、妊娠するための能力も低くなっていき、流産率も上がっていくと言われています。

2000年に行われた調査によると、25歳未満の男性に比べて、35歳以上の男性が1年以内に相手を妊娠させられる確率は1/2になると報告されています[*5]。

男性の場合も女性と同じように、年齢を重ねるにつれて妊娠率は低くなっていき、流産率や周産期死亡率にも影響を及ぼすのです。

妊娠を考えたらまずは健診を

「不妊」とは「妊娠を望んでいる健康な男女が、避妊をしないで性交していても1年間妊娠しない」場合をいいます。そのため、妊娠しようと思ってから1年間は様子を見ようとする夫婦も少なくありません。

でも、35歳を越えると、妊娠・出産できる確率は年々下がっていきます。「不妊かどうかわからないから」と1年間様子を見ていると、その分、妊娠・出産がしにくくなっていくのです。

また、若くても排卵がなかったり、子宮内膜症を起こしていたり、骨盤腹膜炎などにかかったことがあっても妊娠しにくくなります。

「子供がほしい」と考えたら、ブライダルチェックや妊活健診などで、早めに夫婦それぞれの健康状態を確認しておくと、少しでも早く体に合った対策を立てることができます。夫婦ともに健康で問題ないと言われた場合も、医師に妊活中であることを伝えて、これから先どうしていけばいいか相談しておくのをおすすめします。

まとめ

個人差は大きいですが、妊娠できる年齢は、一般的には閉経の約10年前までです。ただしそれ以前から、35歳を越えると急激に妊娠しづらくなっていきます。さらに妊娠中や出産の時のトラブルも年齢とともに増えていくため、妊娠しやすさや出産しやすさは年齢とともに下がっていくのです。また男性も、一般的に年齢とともに生殖能力は低下していきます。

そろそろ子供がほしいと考えたら、まずは夫婦ともに医療機関で体の状態を確認しましょう。夫婦のどちらかが35歳以上であったり、何かの病気が見つかった場合は、妊活の進め方を医師に相談するのがおすすめです。年齢が気になって不安になることもあるかもしれませんが、35歳以上になっても元気に赤ちゃんを出産している人もいます。焦らずゆったりした気持ちで、今の体の状態を見つめ、自分たち夫婦に合った妊活を考えていきたいですね

(文:大崎典子/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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