【医師監修】産後は熱が出やすいってホント?発熱を引き起こす主な原因と受診の目安

【医師監修】産後は熱が出やすいってホント?発熱を引き起こす主な原因と受診の目安

出産や育児の疲れから、トラブルが起こりやすい産後のママの体。発熱もその一つに挙げられます。産後の発熱は出産にかかわる病気が原因で、早めの対応が必要な場合も多いです。そこで今回は、産後の発熱の原因と受診の目安などについてまとめました。


この記事の監修ドクター
葵鍾会 ロイヤルベル クリニック勤務。福島県立医科大学、同大学院卒業後、社会保険二本松病院、南相馬市立総合病院産婦人科医長、福島県立医科大学附属病院総合周産期センター(母体・胎児部門)助教、東府中病院副院長、アルテミスウィメンズホスピタル院長を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、医学博士、J-MELSベーシックコースインストラクター。

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産褥期に熱が出やすい

妊娠により、ママの体は大きく変化します。出産してから2ヶ月ほど(6~8週間)は体が妊娠前の状態に戻っていく期間で、「産褥期(さんじょくき)」と言います。この期間はママの体の回復にとても重要ですが、心身にトラブルが起こるケースもあります。

産後2ヵ月ごろまでの発熱は特に気をつけて

妊娠によって、おなかが大きくなるといった見た目だけでなく、ママの体は、子宮が大きくなることや血流量の増加、ホルモンバランスの変化に伴い、体の中のさまざまな器官も、その影響を受けて変化します。

出産後はその変化がもとに戻っていくので、産後しばらくはいろいろなトラブルが起こりやすい状態にあります。トラブルの多くは時間がたつにつれて自然に治っていくことが多いのですが、産後に熱が出たときは注意が必要です。

産後に熱が出る原因はいくつか考えられますが、出産後すぐから2ヶ月ごろまでに発熱した場合は、出産に関係した何らかの病気の疑いがあります。「そのうち治るだろう」などと自己判断をせずに、早めに受診して病気に応じた治療を受けることが大切です。

発熱以外の症状に注意

発熱の原因となる病気によっては、熱のほかにいくつかの特徴的な症状が見られることがあります。たとえば熱に加えて、「乳房が硬くなったり赤くなったりして痛い」、「排尿時や入浴時に会陰切開の傷がしみたり痛んだりする」、「下腹部が痛い、出血がある」などの症状が見られるときは、出産に関係した病気が疑われます。

産後に発熱を引き起こす主な原因

産後の発熱の原因として考えられるおもな病気には、産後に特有の「産褥熱」、「乳腺炎」のほか、「腎う腎炎」などがあります。

下腹部痛や悪露の異臭を伴う「産褥熱」

「産褥熱(さんじょくねつ)」とは、出産後10日までの間に、38度以上の熱が2日以上続く病気です[*1]。これは、分娩後に胎盤がはがれたところに傷ができたり、子宮の収縮が悪いこと、子宮内に胎盤などが残っていることなどによって子宮や腟、外陰部に細菌感染が起こり、炎症を起こした状態です。

熱以外の症状としては、下腹部痛がする、子宮のあたりを押すと痛い、悪露(おろ)が膿のようにドロドロしていて異臭がする、などがあります。

胸の張りや痛みを伴う「乳腺炎」

乳腺は、母乳を作るための「小葉」と母乳の通り道である「乳管」からできています。この乳腺に炎症が起こるのが乳腺炎で、以下のように2つの種類があります。

化膿性乳腺炎

赤ちゃんが吸い付くなどで、乳頭にできた傷から細菌が入って発症するのが、「化膿性乳腺炎」です。 症状は熱が出るほか、

・乳房に紅斑が現れる
・乳房に触れると熱感がある
・乳房を圧迫すると痛みを感じる
・乳房がズキズキ疼くように痛む
・乳房が腫れ上がる

などです。化膿性乳腺炎とわかったら、細菌に効く抗菌薬による治療を行います

うっ滞性乳腺炎

乳腺に母乳がうっ滞(とどまってしまうこと)している状態を「うつ乳」と言います。うつ乳によって乳腺が炎症を起こすことで、乳房が腫れる、痛む、微熱が出る、などの似た症状が見られます。これを「うっ滞性乳腺炎」と言います。

母乳が滞ってしまうのは、母乳の分泌が多すぎる、授乳のポジションが合っていない、赤ちゃんの吸い方がうまくない、授乳回数が少ない、外出や仕事復帰、離乳食開始などで授乳の間隔があいてしまった、などの理由が考えられます。

うっ滞性乳腺炎は細菌感染を起こしているわけではないので、授乳や搾乳などによってうつ乳が解消されれば症状も治まります。まずは赤ちゃんにしっかりと飲んでもらうことが対処法です。

高熱が出やすいのは化膿性乳腺炎

高熱が出やすいのは化膿性乳腺炎のほうです。発熱が微熱にとどまらず、高熱があり、乳房の腫れ・痛みが強いようなら、産婦人科を受診しましょう。

排尿時の痛みを伴う「腎う腎炎」

「腎う腎炎」とは尿路(尿道から腎臓の間)で起こる感染症の一つ。細菌感染が尿の出口に近い膀胱に起こるのは「膀胱炎」で、この場合は頻尿や排尿時の痛み、残尿感がありますが、発熱することは少ないものです。しかし、感染が尿路の上部にある腎臓にまで広がると、「腎う腎炎」となり、膀胱炎の症状に加え、背中の痛みがでたり発熱することもあります

産後に膀胱炎・腎う腎炎のリスクが高まる理由

分娩のときには赤ちゃんの頭で膀胱が圧迫を受けます。その圧迫が強いと、出産直後、一時的に膀胱の筋肉がゆるみ、うまく膀胱が収縮しないため、尿が出にくくなる場合があります。妊娠前の状態に戻るまでには約6週間[*2]かかるとされています。

そのため、産後は膀胱におしっこがたまったままになりやすいのです。おしっこがたまった状態が続くと、尿道や膀胱に細菌が入ったときにすぐに尿と一緒に排出することができないので、細菌に感染しやすくなります。

さらに、産後は悪露のために外陰部が不衛生になりがちなので、細菌が体内に入りやすいこともあって、出産前より感染を起こしやすい状態と言えます。加えて、そもそも女性は男性に比べて尿道が短く、外部から侵入した細菌が膀胱にたどり着きやすいという特徴もあります。

細菌が腎臓にまで至り、腎う腎炎を起こすと、点滴治療や入院が必要になることもありますし、放置すると細菌が血流にのって全身に広がり命にかかわることもあるので、注意が必要です。

産後に熱が出たときに診察を受ける目安

発熱に加えて、産後に起こりやすい病気と思われる症状が見られるときには、早めの受診が大切です。ただ、コロナ禍の現在は、発熱による受診には慎重な対応が必要なので、まずは出産した産婦人科に電話して詳しい症状を伝え、相談して指示をあおぎましょう。受診の目安をまとめましたので、参考にしてください。

発熱以外の症状がみられる

発熱以外に、以下のような症状があったり症状が続いていたりする場合は、早めに出産した産婦人科に電話して相談しましょう。

下腹部の異常
・下腹部が張ったり痛みがある
・悪臭のする悪露が出ている
乳房の異常
・乳房が赤くなっている
・乳房にしこりがある
・乳房が痛い
排尿の異常
・排尿時に痛みがある
・頻尿や残尿感がある

下がらない37度台の熱や38度以上の高熱

心配な発熱の程度の目安としては、「38度以上の高熱」があります。産褥熱、化膿性乳腺炎、腎う腎炎のいずれも、発熱の症状は「38度以上の高熱」であることが多いです。高熱ではないけれど、産後に37度台の微熱が数日以上続き、乳房の異常があるときは、乳腺炎を起こしているのかもしれません。

産後に発熱が続いたり高熱が出たときは、とにかく早めに産婦人科に相談し、指示に従いましょう。

なお、症状が発熱だけの場合や、咳や鼻水といったかぜ症状や下痢などの消化器症状を伴う場合などは、出産とは関係ない感染症などの病気が原因かもしれません。発熱時の相談先として、以下の連絡先も確認しておくと安心です。
厚生労働省「新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターの連絡先」

授乳中の人は医師に必ず伝える

産褥熱、化膿性乳腺炎、腎う腎炎などで細菌感染を起こしたときの治療には、細菌に有効な抗菌薬を使うことが多いでしょう。授乳中のママは、薬を飲むと母乳から赤ちゃんに何か影響するのでは、と心配になるかもしれませんね。

ママが薬を飲むと母乳に移行しますが、その量はごくわずかなので赤ちゃんに影響する可能性は低いと言われています[*3]。とはいえ、念のため受診時には授乳していることを伝えて、服用中の授乳をどうしたらいいか相談して医師の指示に従いましょう。

まとめ

産後のママの体は、妊娠前と比べるとさまざまな面で変化しています。産後に高熱が出たときは、出産に関連した感染症の可能性があります。そうでなくても、体力を使う出産と育児による睡眠不足などで疲れがたまり、体調を崩して発熱することもあるでしょう。

育児に追われていると、つい自分の体のことは後回しにしがちですが、産後の不調の原因によっては重症化が心配なものもあります。発熱など体の異変を感じたらまず出産した病院などに相談し、必要なら早めに受診してくださいね。

(文:村田弥生/監修:浅野仁覚 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 『病気がみえる Vol.10 第3版』メディックメディア、p.371
[*2] 『病気がみえる Vol.10 第3版』メディックメディア、p.362
[*3]国立成育医療研究センター:妊娠と薬情報センター > ママのためのお薬情報 > 授乳中にお薬を使うにあたって知っておいていただきたいこと

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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