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2022年12月07日 12:43 更新

【医師監修】産褥熱はなぜ起こる? 熱以外の症状と原因

分娩後、体はどのように回復するのか、産後特有の体調の変化にどのようなものがあるか、気がかりになるかもしれません。分娩直後の発熱を伴う病気「産褥熱」についてまとめます。

産褥熱って?

赤ちゃんを抱っこするママ
Lazy dummy

分娩後24時間〜産褥10日の間に、2日以上38℃以上の発熱があり、原因が骨盤の中で起こる感染症(子宮内膜炎など)による場合を「産褥熱」と呼びます[*1]。

健康な場合も分娩後3日ごろまでは体温が37〜37.5℃と比較的高いことが多いものです。そのため医師は入院中の検温結果の変化などを注意深く見守っているので、ママが心配しすぎることはありません。

なお、出産後の発熱の原因となりやい疾患には乳腺炎や腎盂腎炎もありますが、これらは産褥熱には含みません。

松峯先生
「最近は妊娠・分娩中に感染の懸念・兆候があれば予防的に抗菌薬で治療するため、骨盤内感染症で起こる産褥熱は減少傾向にあります。起きたとしても入院中に異常が見つかり、すぐ治療がされるので、一旦、退院したママが再入院になるようなことはほとんどありません。
産褥期の体調不良としては『産褥乳腺炎』がより多く見られ、乳腺炎が重症化して発熱を伴う場合もあることも知っておいていただきたいと思います」

産褥熱はどうして起こる?

分娩後、胎盤がはがれた部分(剥離面)の傷や、子宮収縮不良、子宮腔内から排出されなかった悪露や遺残物などが原因で炎症を起こします。

経腟分娩でも生じますが、帝王切開によるものが圧倒的に多くなります。

熱以外の症状は?

次の3つの症状のいずれか、または複数の症状を伴う場合、産褥熱と考えられます。
・下腹部痛
・子宮があるあたりを押すと痛い(子宮体部の圧痛)
・悪露の異常(出血や悪臭)

どんな人がなりやすい?

産褥熱になる背景として、次のようなリスク因子があげられています。 

・リスク因子 [*2]

・前期破水
・産道の損傷や機械的操作
・細菌性膣炎
・絨毛羊膜炎
・帝王切開など産科の手術
・胎盤・卵膜の子宮内遺残
・低栄養 など

松峯先生
「このほか糖尿病や、その他の持病の影響で免疫機能が低い場合、子宮内部に子宮筋腫があって悪露が排出されにくい場合など、産褥熱のリスク因子はさまざまですから、個別にそうしたリスクがないか診察し、予防の対処をします」

どんな治療をする?

現在、多くの場合は入院し、抗菌薬の投与を受ける保存的治療(手術など外科的な治療をしない)を行います。超音波検査で「胎盤遺残」などが確認された場合は、子宮収縮剤の利用や子宮内容除去術などを行うこともあり、その後、必要に応じて膿を出す(排膿)などの外科的治療を行う場合もあります。

退院後に症状に気づいたら?

発熱に加え、下腹部の圧痛や悪露の異常がある場合は産科に連絡し、指示に従ってください。
発熱だけの場合は、一般的な「感冒症状(のどの痛み、鼻水・鼻づまり、咳)」がないかセルフチェックし、あればまず内科で風邪ではないか確かめましょう。

さらに体の節々の痛みや下痢などがあり、インフルエンザやその他の感染症の可能性も考えられるときは内科に連絡をして症状を伝え、指示に従って受診しましょう。

松峯先生
「冬期など、風邪やインフルエンザなど感染症の流行期、退院後に発熱が見られた場合、産褥熱ではなく風邪や感染症だったということは少なくありません。退院後、家で赤ちゃんと過ごしていても、外から入ってくる人たちが運んでくるウイルスにより、インフルエンザなどにかかってしまう場合もあるのです」

産褥期(産後6~8週まで[*3])は体の回復を第一に考えた生活をしたい時期なので、風邪やインフルエンザなどで体調を崩さないよう、普段以上に予防に気をつけてください。
一方、病気が原因の発熱ではなく、ほてりなどの誤解もまれにあると松峯先生は話します。

松峯先生
「赤ちゃんが寒いだろうと部屋を暖め過ぎて体が熱くなり、発熱と間違えてしまうケースが少なからずあります。心配のあまり、室温を高くしすぎてしまうのです」

赤ちゃんがいる部屋の暖房の目安は室温20~25°Cくらい、湿度50~60%です。 温度・湿度計で確かめながら暖めすぎないようにし、定期的に換気しましょう。 参考までに、冷房は外気温との差を4~5°C以内を目安にして、冷たい風が赤ちゃんに直接当たらないように気をつけてください[*4]。

まとめ

産褥熱は、骨盤の中で起こる感染症が原因で、分娩後10日以内に2日以上・38℃以上の発熱がみられます。昨今は妊娠・分娩中の抗菌薬による予防的治療が普及していますが、もしも退院後、発熱とともに下腹部の圧痛や悪露の異常があったらすぐに産科に連絡し、指示に従ってください。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p371, p375
[*2] 日本産科婦人科学会「産婦人科研修の必修知識 2016-2018」,p308
[*3]「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p366
[*4] 東京都福祉保健局「健康・快適居住環境の指針(平成28年度改訂版)」
D.産科疾患の診断・治療・管理,18.産科感染症の管理と治療,3)産褥熱日産婦誌60巻6号,N-117-121

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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