【医師監修】産後の腹痛、原因は? 注意すべき産後の病気・症状6つ

【医師監修】産後の腹痛、原因は? 注意すべき産後の病気・症状6つ

陣痛を乗り越えて出産を終えた安堵もつかの間、再び始まるお腹の痛み。その痛みの多くは「後陣痛(こうじんつう)」と呼ばれる問題はないものですが、ときに治療が必要な病気が原因となっていることもあります。ここでは、それらの違い・特徴をまとめます。


出産後の腹痛、これは何?

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お産の陣痛でお腹が痛むのはよく知られていることですが、産後にも腹痛が起こることは意外と知らない人も多いかもしれません。ここでは、産後に起こるお腹の痛み、「後陣痛」について紹介します。

多くの人に起こる「後陣痛」

多くの妊婦さんが経験する産後のお腹の痛みに「後陣痛」というものがあります。痛み方や程度は人によってまちまちです。
これは妊娠によって大きくなった子宮が不規則に収縮し、妊娠前の大きさにもどろうとしているために起こる痛みで、胎盤などが剥がれた部分からの出血を止めるはたらきもある生理的な現象です。

松峯先生
「出産を終えて疲労しているときにこのような腹痛が起こるのはつらいものですが、これは体の回復を促すために必要な痛みで、産後の体の回復が始まっている証なのです」

辛い数日間 を過ぎれば鎮静化

後陣痛の痛み方や程度には個人差がありますが、経産婦、多胎妊娠、羊水過多 であった場合などは通常より子宮が大きくなり、また疲労の程度も大きいので、子宮を元の大きさにもどすためにはより強い収縮が必要になり、後陣痛が強くなる傾向があります。

とはいえ痛みが強い期間は一般的に産後5日間程度で、その後、大体2週間後までには落ちつくことがほとんどです。

なお、授乳をする人は、赤ちゃんがおっぱいを吸うことで分泌が増えるホルモンのひとつ、オキシトシンの作用により子宮の収縮が強まるため、授乳時に後陣痛が強くなります。

程度によっては鎮痛も必要

後陣痛は生理的に起こる問題のない症状なので、基本的に鎮痛の治療は行われません。しかし、産後の女性は体力回復のため、睡眠を十分にとることが大切なので、眠れないほど痛む場合などには治療の対象となることもあります。痛みが強いときは主治医に相談しましょう。

知っておきたい「子宮復古(しきゅうふっこ)」と「子宮底の高さの変化」

後陣痛は次のように産後の子宮が回復する過程で起こるものです。

子宮復古

妊娠・出産によって変化した子宮が回復することを「子宮復古」といいます。

産後の子宮は、内側の剥離面(胎盤などが剥がれて出血している部分)を埋め込むようにして止血しながら急速に収縮(退縮)し、残った血液成分などは「悪露(おろ)」として排出します。産後2、3日には約1,000gある子宮が、1週間後に約500g、2、3週間後に約300g、4週間後に約100g、6週間後に約70g(ほぼ非妊娠時の大きさ)という具合に回復していきます[*1]。

悪露は最初のうちは血液成分が多いので赤色ですが、子宮復古が進むにつれ褐色→淡黄色→白色と変色していくのが一般的で、子宮復古が完了すれば悪露もなくなります。

子宮底の高さはどんどん下がる

子宮復古と同時に子宮底の位置も、産後、日を追うごとにどんどん下がってきます。

出産が終わった後、ゆるんでいた骨盤底筋群が回復し、膀胱が尿を溜めて膨らんでいくと、子宮底は一旦おへその近くまで押し上げられますが、その後、徐々に下に降りてきて、お腹の表面からは触れられない奥(非妊娠時の位置)にまで下がっていくのです。この変化は、通常、産後の数日間で起こります。ほぼ一年かけて、非妊娠時の500~1,000倍[*2]の容量にまで膨らんだ子宮ですが、その大きさがもどるのは想像以上にあっという間なのです。

ただし、問題なくあっという間に縮小しても、内面には傷が残っており、子宮内膜が再生するのはまだまだ先です。次の項では、お産により通常受けるダメージとはまた別に起こることがあり、産後、注意が必要な事態を紹介します。

産後、注意したい症状や病気は?

産後、次に紹介するような症状があるときは産科を受診するか、電話でかかりつけ医療機関に状況を伝え、指示をもらいましょう。

子宮復古不全

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子宮の回復が遅れている状態を「子宮復古不全」といいます。
原因はさまざまですが(後述)、いずれの場合も産後2週間を過ぎても血のように赤い悪露が出続け、状況によっては発熱、下腹部痛、貧血といった症状が出ることもあります。

子宮復古不全の原因

<器質的なもの>子宮のなかに邪魔なものがあるために収縮できない

・胎盤や卵膜が出きっていない
・悪露が排出されず、子宮内に残っている
・子宮筋腫や子宮腺筋症
・子宮内膜炎などの感染
※子宮内膜炎などの感染は、他の原因による子宮復古不全の結果として起こることもあります


<機能的なもの>子宮が疲労しすぎていて収縮できない

・多胎妊娠や巨大児の妊娠により子宮が伸び切っている状態
・出産に時間がかかり(遷延分娩)子宮の筋肉が疲労している
・何らかの薬の影響
・子宮の収縮を促すオキシトシンの分泌不足
・母体の疲労や精神的なショック
・過度の安静

便秘

便秘の定義として最も知られているのは「3日以上、便が出ていない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」 ですが、昨今、 日数などにかかわらず「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」も便秘と考えられるようになりました[*3]。

つまり“快便”と思えなかったら、何らかのケアをするタイミングということです。
女性が便秘になると、停滞した便が子宮や骨盤底筋、膀胱を圧迫することがあります。すると間接的に子宮復古や骨盤底筋の回復を妨げ、尿もれが起きやすくなります。

松峯先生
「産後の便秘は痔の原因にもなるので、悪化させる前に適切に便秘薬を使用することが大切です。産後の入院中は医療スタッフに遠慮せず相談するようにしましょう。便を柔らかくする緩下薬を処方してもらえるでしょう。 退院後も産科やかかりつけの内科の主治医にできるだけ早めに相談し、ひどくなる前に解消しておきましょう」

授乳中はとくに脱水に気をつけて、水分と朝食をしっかりと摂り、腸内細菌を活性化する発酵食品や、便のカサを増し出やすくする食物繊維の豊富な食生活を心がける、問題のない時期になったら適度に体を動かすなど、生活習慣の工夫で予防を意識することも大切です。

産後子宮内膜炎

分娩のときに生じた傷(帝王切開の切開部や、子宮内の胎盤がはがれた面など)に細菌が侵入し、炎症を起こすものです。症状として次項の「産褥熱(さんじょくねつ)」や下腹部周辺の痛み、悪臭を伴う悪露の排出などがあります。

産褥熱

子宮を中心とした骨盤内の細菌感染によって発熱することを「産褥熱」といいます。
分娩後24時間〜10日目までに2日以上にわたって38℃以上の発熱が続きます[*3]。先に述べた「産後子宮内膜炎」や「細菌性腟 症」などのほか「クラミジア」などの性感染症が原因となる場合もあります。

産後うつ病

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出産後、大体1ヶ月以内に強い不安や気分障害など抑うつ状態があり、睡眠の障害、食欲不振がある場合は、産後うつ病の可能性があります。

産後うつ病と実際診断された人は5~10%[*4]程度の割合と言われていますが、あるアンケート調査では、産後女性の約8割が「産後うつ病一歩手前」の状態だったと回答したという結果も出ています[*5]。産後うつ病は、誰でもなる可能性があるものだということは覚えておき、自身の体調不良や子育ての辛さを一人で抱え込まないことが大切です。辛くなる前に家族や自治体のサービス等を利用して、地域の方々と一緒に子育てするという気持ちを忘れないようにしましょう。

産褥乳腺炎

産後に起こる乳腺の炎症を「産褥乳腺炎」といいます。
授乳を開始して間もなくおっぱい(乳汁)の分泌量が(赤ちゃんが飲む量より)多く、乳房のなかに溜まってしまうことで引き起こされるほか、細菌による化膿性の場合もあり、進行すると乳房の中に膿瘍(しゅよう)を形成することもあります。この病気では、乳房の腫(は)れ、痛み、熱感、発赤、硬化、38.5℃以上の発熱などが見られます。

松峯先生
「乳腺炎では高熱を伴うことが多く、インフルエンザなどと異なり、とくに乳房に熱を感じます。体温を脇の下で計ると高く、肘や口腔内で計ると低くなるようなときは乳腺炎の可能性が高いと考えられます。受診の際は、体温に加え、どこで計測したかもあわせて伝えるようにしましょう」

十分な「産後ケア」を意識しよう

出産後、体が妊娠以前の状態にもどるまでは「産褥期」と呼ばれます。出産を終えた女性の体は疲労困ぱいの状態ですから、回復するには十分な休養をとり、いたわる時間とケアが必要なのです。

医療機関によっては、産後外来や産後ケアセンターといった名称で、産後女性を専門的にサポートしてくれる施設を併設するところもあります。そういった施設が最寄りにあれば利用するのもいいでしょう。

日本では、昔から「床上げ3週間」と言って、産後の女性はこのくらいの期間は布団を敷きっぱなしにして、できるだけ体を横たえて無理しないほうが良いと言われてきました。とくに高齢出産や帝王切開での出産の場合などは、この3週間を、産後3ヶ月までに延長しようと訴える意見もあります。それだけ心身ともに回復に時間がかかるからです。

産後外来や産後ケアセンターが 身近にはない場合も、そのような施設があるほど「産後ケア」は大切なものと考えて、自身の心と体をいたわりながら過ごすようにしてください。

松峯先生
「具体的には、母子の愛着が増すような、穏やかな生活を心がけることが大切です。ぜひこの機会に赤ちゃんとゆっくりコミュニケーションをとってください。ただし、健康上の不安や発熱などの症状があるときは、健診時期を待たずに産科に連絡をしましょう」

まとめ

産後の腹痛の多くは「後陣痛」と呼ばれる生理的なもので、子宮復古に伴って5日〜2週間後には改善することが多いものです。ただし、背景に治療が必要な病気が隠れている場合もあります。あまりに痛みが強かったり、痛みが長引く場合は受診しましょう。出産という大仕事を終えたお母さんの体は満身創痍。やっと会えた赤ちゃんのお世話も大切ですが、くれぐれもひとりで頑張りすぎない、無理しないことが大切です。

この記事の監修ドクター
松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(ともに東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします!どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/

(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気がみえる Vol.10産科, p367, メディックメディア, 2018.
[*2]病気がみえる Vol.10産科, p39, メディックメディア, 2018.
[*3]日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会「慢性便秘症診療ガイドライン2017」
[*4]日本産科婦人科学会:産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版, p104, 2018.
[*5]産婦人科診療ガイドライン―産科編2017/公益社団法人日本産科婦人科学会, CQ315産褥精神障害の取り扱いは?, p239
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2017.pdf
[*6]NPO法人 マドレボニータ, 2016年8月実施アンケート調査結果
https://www.madrebonita.com/organization
・臨床婦人科産科 2018年 4月号増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイドーいまのトレンドを逃さずチェック!, 医学書院, 2018.
・松峯寿美:やさしく知る産前・産後ケア, 高橋書店, 2019.
・山西友典監修:尿トレ, 方丈社, 2018.

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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