授乳中の豆乳が母乳に良いって本当? イソフラボンの影響は?【管理栄養士監修】

授乳中の豆乳が母乳に良いって本当? イソフラボンの影響は?【管理栄養士監修】

なんとなくヘルシーで健康によさそうなイメージのある「豆乳」ですが、授乳中に飲むと母乳によい影響があるかもと聞くことがあります。これは本当なのでしょうか。豆乳に含まれるさまざまな栄養素の働きとともに解説します。


この記事の監修者
川口由美子 先生(管理栄養士/母子栄養指導士)
一般社団法人母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師。大学時に小児栄養学を学んだのち、育児用品メーカーでベビーフード開発を経て栄養相談、離乳食レシピ執筆、講演会に携わる。2児の母。現在は、母子栄養協会にて離乳食アドバイザー®他、専門家を養成している。
一般社団法人母子栄養協会HP

「川口由美子 先生」記事一覧はこちら⇒

豆乳は母乳にいいって本当?

授乳中は、体に摂り入れるものにどんな栄養が含まれるのかとくに気になりますよね。「豆乳」は蒸した大豆を砕いて、液体の豆乳とおからに分けて作られます。そのため、大豆由来の栄養成分を豊富に含んでいます。

もしかしたら「豆乳は母乳にいい」という噂を耳にして、授乳中に飲んでみたくなった人もいるかもしれませんね。体にうれしいさまざまな栄養素を含む豆乳ですが、本当にこういった働きが期待できるのでしょうか。

大豆イソフラボンに母乳を増やす効果はなさそう

「豆乳が母乳によさそう」という噂について、それを裏付けるはっきりした根拠はとくになさそうです。豆乳にはエストロゲンに似た働きをする「大豆イソフラボン」が含まれることからそう連想した人がいたのかもしれませんね。

でも、産後に母乳を分泌させるのは「エストロゲン」ではなく、「プロラクチン」と「オキシトシン」というホルモンです。エストロゲンにはむしろ母乳の分泌を抑える作用があるため、豆乳が母乳をたくさん作るのに役立つとは考えにくいでしょう。

母乳がよく出るようになる食品ってあるの?

「〇〇を食べると母乳がよく出るようになる」「母乳によくないので授乳中に〇〇は避けるべき」といった説がまことしやかに言われることもありますが、実はその多くはそれが本当かどうか科学的にきちんと調べられていません。

「昔から言われているから」とか「個人的にたまたまそう感じた人がいたから」といった理由で言われているだけで、根拠がないことがほとんどなのです。

授乳中の栄養摂取で大切なのは、「さまざまな食品をバランスよく食べること」「エネルギーは平常時より少し多めに」「十分に水分補給すること」の3つです。なお、母乳の量を増やす方法が知りたい人は、下記の記事を参照してみてくださいね。

【助産師解説】母乳を増やすには?少ない理由と5つの対策

https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/7320

母乳を増やす方法と、足りないかも?と感じる理由について助産師が解説します。母乳がなかなか増えなかったり、不足してしまうのにはどのような理由があるのでしょうか。対策もあわせてお伝えします。

豆乳には産後の体にうれしい栄養がいっぱい

飲むことによる母乳増が期待できなくても、「豆乳は栄養豊富」なため、産後の飲み物としておすすめです。豆乳に含まれ、健康に役立つとされる栄養素にはどんなものがあるのか解説します。

体で効率よく利用されるたんぱく質

豆乳は液体なので、きなこや納豆に比べれば少なくはあるものの、牛乳と比べると同等かそれ以上の「たんぱく質」を含んでいます。

たんぱく質は体内で筋肉や臓器などを構成する欠かせない栄養素ですが、つねに分解と合成を繰り返しているので、食べ物や飲み物から常に十分に補給する必要があります。

実は、豆乳の原料である大豆に含まれるたんぱく質の「アミノ酸スコア」は「100」[*1]。アミノ酸スコアは、100に近いほど人間の体内で効率よく利用されることを示す指標です。そのため、豆乳をはじめ大豆食品はたんぱく質源として優秀なのです。

授乳中は非妊娠時の摂取量に「1日20gプラス」することが推奨されている[*2]ので、しっかりたんぱく質をとりたいものです。なかなか料理が難しいという場合は、豆乳などから簡単に補給できるといいでしょう。

大豆イソフラボン

大豆には「大豆イソフラボン」というポリフェノールの一種が含まれています。大豆イソフラボンはその構造が女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」に似ており、「植物エストロゲン」と呼ばれることもあります。

女性の体内で卵巣から分泌されるエストロゲンには、妊娠や生理などにかかわるさまざまな働きがありますが、それ以外にも「骨量の維持」や「LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を低下させる」などの作用もあります。

大豆イソフラボンは女性の体内でつくられるエストロゲンに形が似ていることから、弱いエストロゲン様作用があるとされ、「骨粗しょう症の予防」や「更年期障害を軽くするのに役立つ」可能性があると言われています[*3]。

健康効果が期待されるサポニンやレシチン

豆乳には「サポニン」という成分も含まれています。サポニンは植物に含まれる苦味成分ですが、抗酸化作用や肥満予防、肝機能向上など、健康に役立つさまざまな働きが期待されています。

また、大豆には「レシチン」も豊富です。細胞膜の主成分であるリン脂質の一種で、これが不足すると細胞膜の正常な働きが保てなくなったり、血管にコレステロールが溜まりやすくなったりします。また、脳や神経を構成する成分としても重要です。

お腹の健康に役立つオリゴ糖

豆乳には「オリゴ糖」も含まれています。オリゴ糖は、ビフィズス菌などの善玉菌と呼ばれる腸内細菌の餌となってこれを増やす働きがあり、お腹の調子を整えるのに役立ちます。

ビタミン、ミネラルなども豊富

その他にも、豆乳は、「葉酸」をはじめとしたビタミンB群やビタミンE、カリウム、マグネシウムといったミネラルも含んでいます。

豆乳ばかり毎日大量に飲むのはあまりお勧めしない

さまざまな栄養素が含まれる豆乳。中には「授乳中の水分補給は豆乳ですればいいのでは?」と思った人がいるかもしれません。でも、それはあまりお勧めしません。

どんな食べ物でも1つに偏ることはリスクも伴います。食事ではいろいろなものを摂ることで、バランスよく栄養がとれるよう意識したいですね。

毎日豆乳を飲むならどのくらいがいいの?

健康に役立つ働きが期待されている大豆イソフラボンですが、その影響については不明な点が多いため、内閣府の食品安全委員会では、大豆食品からの大豆イソフラボン摂取量で安全と考えられる量を公表しています。

そこでは、1日の上限量を「70〜75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)」としています[*4]。これは長年にわたり大豆食品をよく食べている日本人で、明らかな健康被害が報告されていない量などを参考に算出されています。

豆乳に含まれる大豆イソフラボンは、製品により異なりますが「平均25mg程度/100g」(大豆イソフラボンアグリコン換算値)[*4]。この濃度で計算すると、大豆イソフラボンの上限量を超えない豆乳の量は「1日300g程度」ということになります。

豆乳をこれ以上飲んだからといって、食品で摂る分には、毎日何リットルも長期間飲み続けていない限り、健康への影響を心配する必要はそれほどないと考えられます。

ただ、大量に豆乳ばかり飲んでいると他の食品が摂れなくなってしまいます。さまざまな食品からバランスよく栄養摂取するなかで、豆乳も適量飲むことをおすすめします。

まとめ

豆乳に含まれる栄養素の働きと期待されている効果、授乳によい影響があるのかどうかなどを解説しました。赤ちゃんに母乳をあげているときですから、せっかくなら少しでも体によいものを摂りたいと考える気持ちがわくのは自然なことですが、残念ながら食品にそうした効果を期待して摂りすぎるとかえってあまり体によくないこともあります。豆乳は授乳中にもおすすめできる飲料ですが、何事も過ぎたるは及ばざるが如し。豆乳だけをたくさん飲むのではなく、いろいろな食品を摂る中で適量を楽しむようにしましょう。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]日本食品分析センター:食品たんぱく質の栄養価としての「アミノ酸スコア」
[*2]日本人の食事摂取基準(2020年版)たんぱく質
[*3]食品安全委員会 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

関連する投稿


授乳で悩むママに知ってほしい! 搾乳・母乳保存グッズの“機能面”以外のメリットとは?

授乳で悩むママに知ってほしい! 搾乳・母乳保存グッズの“機能面”以外のメリットとは?

ピジョンは、ユニセフとWHO(世界保健機関)が1990年に制定した8月1日〜7日の「世界母乳育児週間」に向けて、この度、「母乳育児と授乳関連商品に関する調査」を実施しました。


平野ノラさん「搾乳した母乳を捨てる時ってなんだかモヤモヤしてかなぴー」心情を吐露。働くママの搾乳事情

平野ノラさん「搾乳した母乳を捨てる時ってなんだかモヤモヤしてかなぴー」心情を吐露。働くママの搾乳事情

芸人の平野ノラさんが、7月13日にInstagramとブログを更新し、仕事中の「搾乳」風景をうつした写真を公開。ロケバス内で搾乳機を使っているそうですが、その心情を綴りました。


納豆おやき!おすすめレシピと調理のコツ【管理栄養士監修】

納豆おやき!おすすめレシピと調理のコツ【管理栄養士監修】

納豆は栄養豊富な食材の一つです。独特なにおいやネバネバが気になるかもしれませんが、おやきにすると食べやすくなるので、今回はそのコツをご紹介します。


離乳食の親子丼!保存方法やリメイクレシピも!【管理栄養士監修】

離乳食の親子丼!保存方法やリメイクレシピも!【管理栄養士監修】

親子丼は手軽でおいしく、日々の献立に欠かせませんよね。じつは離乳食でも取り入れることができるんです。でも、ちょっとだけ覚えておいてほしい注意点もあります。今回は離乳食の親子丼について解説します。


離乳食の納豆を使ったおやき!おすすめ理由と注意点【管理栄養士監修】

離乳食の納豆を使ったおやき!おすすめ理由と注意点【管理栄養士監修】

納豆は大豆が原料なので、たんぱく質を補いたい時に便利な食材です。ただ、そのままでは食べにくいので、おやきにすると食べやすくなります。今回は納豆を取り入れる時のポイントをご紹介します。


最新の投稿


【えっ! 吐いとるやん!!】娘の吐き戻しにパパうろたえる。しかしママは……

【えっ! 吐いとるやん!!】娘の吐き戻しにパパうろたえる。しかしママは……

Instagramで子育て漫画を発信されるこんぶだしさん。こんぶだしさんの投稿よりオススメの投稿を編集部がピックアップして紹介します。


【医師監修】妊娠中の尿の悩み|尿に混ざっている白い浮遊物の正体は?

【医師監修】妊娠中の尿の悩み|尿に混ざっている白い浮遊物の正体は?

健診の度に採尿をする妊娠中。何気なく尿をとって白い浮遊物を見つけると、何か異常があるのか、病気ではないか気になってしまいますね。ここではその浮遊物の正体や尿が白くにごる原因、考えられる病気について説明します。


【俺の子だもん】夫はごく自然に、当たり前に育児をする「1人の親」なんです

【俺の子だもん】夫はごく自然に、当たり前に育児をする「1人の親」なんです

Instagramで子育て漫画を発信されるシカさん。シカさんの投稿よりオススメの投稿を編集部がピックアップして紹介します。


お刺身パックはそのまま? 移し替える? 手抜き論争に終止符を!

お刺身パックはそのまま? 移し替える? 手抜き論争に終止符を!

夕飯で便利な、お刺身パックやお惣菜。特にお刺身パックは食卓が豪華に見えるうえに、手間いらず。大人も子どもも満足する一品ですが、気になるのは「盛りつけ」。パックから出す派と出さない派、双方の意見を聞いてみました。この際、「そのまま出すのは手抜き論争」にも終止符を打ち、堂々とお刺身やお惣菜を買いましょう!


【子どもの防犯クイズ】あぶない人にねらわれそうな子の特徴は?『いやです、だめです、いきません』Vol.5

【子どもの防犯クイズ】あぶない人にねらわれそうな子の特徴は?『いやです、だめです、いきません』Vol.5

犯罪からわが子を守るために家庭で実践したい安全教育。いざというとき身を守るには、知識だけでなく「安全基礎体力」をつけることが必要です。そのノウハウが詰まった書籍『「いやです、だめです、いきません」 親が教える 子どもを守る安全教育』(岩崎書店)から子どもと一緒に安全チェックができるクイズを連載でお届けします。