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2022年12月05日 12:37 更新

妊婦の料理に酒を使う場合の注意点は? 加熱・非加熱で影響の違いはある?【管理栄養士監修】

「妊娠中のお酒は禁物」とよく言われますが、料理に酒や料理酒を使うのもいけないの? と迷う妊婦さんもいるようです。そこで今回は、妊娠中に酒や料理酒を料理に使うのはいいのかどうか、使うならどんな点に注意が必要か、などについて解説します。

妊婦がお酒を飲むことのリスク

冷酒をお猪口に注ぐ

まずは、妊娠中の飲酒にはどんなリスクがあるのかをおさらいしておきましょう。

妊娠中の飲酒は赤ちゃんに影響する

妊娠中の飲酒がNGなのは、妊婦さん本人とおなかの赤ちゃんの両方に影響があるからです。

妊婦さんにとっては、流産など妊娠経過を悪化させる心配がありますし、うつ症状など精神面の症状や疾患のリスクが高まると考える専門家もいます。

また、お母さんが飲酒すると、酒に含まれるアルコール(エタノール)とその代謝産物であるアルデヒドという成分が胎盤を通り、赤ちゃんの体内にも入ってしまいます。その結果、赤ちゃんの細胞の増殖や発達を妨げ、先天異常(発育の遅れや、精神発達の遅れにつながる中枢神経障害、頭蓋骨や顔面などの形成異常)が現れる「胎児性アルコール症候群」を引き起こす恐れがあります。

「胎児性アルコール症候群」による特異的な顔つきや低体重などは、赤ちゃんが成長するととともにだんだん目立たたなくなっていきます。でも、成長していくにつれて、発達障害やうつ病などの精神面の問題がはっきりしてくることもあるそうです。

妊娠中は料理にお酒を使うのもダメ?

飲酒はお母さんにも赤ちゃんにも悪影響しかありませんが、酒や料理酒を調理に使うのも避けたほうがよいのでしょうか。

加熱料理であれば問題ない

ムール貝の白ワイン蒸し

アルコール度数は製品や銘柄によってさまざまですが、清酒では15%くらい、料理酒では13%程度です[*1, 2]。

ただ、加熱するとアルコールはだいたい揮発します。料理酒の場合、煮物などの料理に使って加熱すると、残るアルコール分は約1%未満になると言われています[*3]。

料理に清酒や料理酒を使ったとしても、しっかり加熱すればアルコールの妊娠への影響はほとんど心配しなくてよいでしょう。

非加熱でそのままお酒を使う場合は?

酒や料理酒を加熱せずに使う場合も、料理にまざれば希釈されることになり、その分アルコール濃度は下がるため、うっかり口にしたからといってすぐに赤ちゃんに影響が及ぶかもと心配する必要はないでしょう。ただ、妊娠中は大量に口にするのは避けたほうが良さそうです。

日本産婦人科医会によると、胎児性アルコール症候群の赤ちゃんが生まれた妊婦さんの多くは、60~90mlのアルコール(ビールで考えると350ml缶4~6本)を「連日ではなくときどき」飲んでいたことがわかっています[*4]。また、アルコールは少量であっても、まったく口にしない場合に比べて流産のリスクを高めると報告している研究もあります[*5]。

妊娠中のアルコール摂取に関して、「この量までは安全」という目安はまだはっきりわかっていないので、妊婦さんは酒や料理酒を加熱せず使った料理をなるべく口にしないようにしましょう。

妊婦が料理にお酒を使うときの注意点

沸騰してアルコールが飛んだ料理

調理に酒や料理酒を使うときには、アルコール分がとぶように十分に加熱することが大切です。使用量は少なめにしておきましょう。

しっかり加熱する

前述したように、アルコール度数が13%台の料理酒でも、しっかり加熱することでアルコール分は1%程度にまで下がります。酒や料理酒を使うときには、アルコール分がなるべく残らないように、十分に加熱しましょう。

少量に抑える

酒や料理酒のアルコール分は調理過程で食品にしみこむため、完全には蒸発せずに微量が残ってしまいます。とはいえ、濃度はかなり低くなるので通常の量であればほとんど心配ないのですが、極端にたくさん使うと、加熱をしても残ったアルコール分の濃度が高くなる可能性もあります。酒や料理酒は、使いすぎないよう少量にしておきましょう。

原料やアルコール度数もチェックする

料理酒を計る

ひとくちに酒や料理酒と言っても、原料や含まれるもの、アルコール度数はメーカーや商品によってさまざまです。買うときや使うときには、ラベルを見て原料やアルコール度数をチェックしましょう。水あめなどが添加されていて、意外にカロリーがあるので使いすぎに注意が必要なことも。

また、料理酒はたいてい酒に塩を加えて作られています。料理酒は使用量が多くないのでないので、そこまで気にする必要はありませんが、知っておくといいですね。

料理中は十分換気する

酒や料理酒を加熱すると、アルコール分の大半が蒸発するので、周囲にアルコールの香りとともに気化した成分が広がります。適量の酒や料理酒を使ってさっと調理する程度なら、アルコールの成分を吸い込んだとしてもごくわずかです。影響を心配する必要はまずありませんが、妊娠中はにおいに敏感になる人も多くいます。念のため換気扇を回したり近くの窓を開けるなどして、しっかり喚起しながら調理すると安心です。

まとめ

Photo by CHUTTERSNAP on Unsplash

料理にコクを出したり、肉・魚などの臭み消し、食材をやわらかくする、味をしみこみやすくするなどのために使用する料理酒。十分に加熱さえすればアルコール濃度はぐっと低くなるので、妊娠中でも使うことができます。大量に連続して使いすぎないように注意しながら、ときには煮物などに利用して、自分好みのおいしい料理を楽しんでくださいね。

(文:村田弥生/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

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