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むやみに「捨て印」を押すと、危険だって本当?

役所への届け出などに必要な印鑑。契約書などには「捨て印」が必要なものが多く、「そういうものだ」と疑わずに押しているひともいるだろうが、相手が「勝手に訂正しても構いません」の意味なのはご存じだろうか?

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捨て印は「訂正印」の予約バージョンで、あとで間違えが見つかっても、書類を送り戻したり出向かずに済むメリットがある。ただし、勝手に条件を書き加えられるなど「悪意のある訂正」をされても文句は言えないので、捨て印が必要のない書類には、むやみに押さないほうが安全なのだ。

捨て印は、訂正印の卵

捨て印は、将来使うかもしれない「訂正印」だ。

契約書などを訂正するには、

・削除する箇所に二重線を引く

・追加したい場合は、文面を書きたす

・欄外に訂正印を押し、○字削除(または追加)と、変更点を記す

が正式な手順で、遺言などの公正証書、会社の登記書類などは、これ以外では受理してもらえない。

間違えが見つかったら、申込者に書類を戻すか、または印鑑を持って来てもらわないと訂正できない仕組みなので、安全だがテマもかかる。住宅ローンや賃貸契約などでは、ちょっとした書き間違えも多く、たとえば住所を「1丁目2番3号」と記さなければならないところを、つい「1-2-3」と書いてしまった経験があるだろう。

これだけを訂正するために「もう一度来てください」となったら、自分のミスだけど「面倒クサい」と感じるだろうし、時間も労力もムダになる。

そこで登場したのが「捨て印」で、あらかじめ欄外に印鑑を押しておき、修正や削除が必要になった際に、捨て印の横に「1行目2字目3字訂正」などと書き記す。結果は正式な訂正手順と同じなので「あらかじめ押された訂正印」とも表現できる。

捨て印で、条件の追加も可能!

捨て印があった方が「正式」に思えるかもしれないが、求められていない書類にむやみに押すとトラブルのもととなる。悪意を持って訂正されても、反論できないからだ。

友人におカネを借りて、借用書を書いた場合をシミュレーションしてみよう。貸した/借りたひとの氏名や住所、金額、返済条件/期限を明記するのが一般的で、これに捨て印を押したと仮定しよう。

その後、貸したひとが「催促された場合は、期限前でも全額返済します」と書き加えたらどうなるのか? 勝手に変更されてしまった!と騒いだところでどうにもならない。捨て印を押した時点で「追加や訂正しても構いませんよ」と意思表示しているのと同じだから、その内容に従うしかないのだ。

借りた金額も、捨て印で変更できるのか? たとえば「4千万円」の住宅ローンが知らぬ間に「4億円」に変わってしまったら返済できるはずもないし、コワくて申し込みすらできなくなってしまう。

ご安心あれ。捨て印で訂正できるのはおもに軽微な間違えで、金額などの重要な要素には認められないケースが多い。売買契約やローンの申し込みなどで金額を訂正する場合、記載部分を二重線で消し、その上に買い手(または申込者)が訂正印を押すのが一般的で、つまりは勝手に変更できない仕組みになっている。

同様に「高額な利息を払う」「期限内に返済できなかったら倍返し」など法外な条件も、捨て印では認められなかったケースもあるので、なんでも変更できるわけではない。とはいえ、求められない限り捨て印は押さないほうが良い。

いまイチ信用できないと思ったら、捨て印は押さない、契約書のコピーをもらうなどしておくと良いだろう。

まとめ

・捨て印は、事前に用意された「訂正印」

・間違えが見つかった際に、改めて訂正印を押すテマを省くのが目的

・捨て印の横に、追加条件を書き加えても有効

・求められていない書類には、押さないほうが身のため

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年11月28日に公開されたものです

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