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江戸時代に漂着したUFO!?の宇宙文字の謎を、皆神龍太郎氏が解いた!

皆さん、UFOが江戸時代の日本に漂着していたという伝説をご存じでしょうか。どう見てもUFOにしか見えない不思議な船が漂着したというのです。これを「うつろ船」の伝説というのですが、うつろ船にまつわる大きな謎を、日本最強のデバンカー・皆神龍太郎さんが解いたのです。

皆神龍太郎さんにお話を伺いました。

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江戸時代のUFO遭遇事件!?

――「うつろ舟」の名前を聞いたことのない人でも、この絵はどこかで見たことがあるのではないでしょうか。「不思議な話」を扱う書籍などでよく見掛けます。

皆神先生 まず「うつろ船」とは何か説明をしましょう。「うつろ船の蛮女」という江戸時代の文献があるのです。

これは1825年(文政8年)に、滝沢馬琴らが『兎園会』という会合で公にした話です。『兎園会』というのは、滝沢馬琴ら12人の好事家が月に1回集まって、奇妙な面白い話を披露し合うというものでした。

――なんだか、皆神さんが運営委員をしている『と学会』みたいですね。

皆神先生 まあ簡単に言うと、江戸時代のと学会みたいなもんですよ。どちらも「と」の宴会ですし(笑)。後にこの会合で披露された話は『兎園小説』という小冊子にまとめられます。まあ今で言う、同人誌みたいなものですね。

「うつろ船の蛮女」はその中に入っています。

――どんな話なのですか?

皆神先生 1803年(享和3年)、常陸国(現・茨城県)の「はらやどり」という浜に奇妙な形をした「うつろ船」が流れ着き、その中から手に箱を携えた異国の美女が現れた、という話です。

挿し絵が入っているのですが、その船というのが、UFO、空飛ぶ円盤に大変によく似ているのです。また、船内に書かれていた文字として「奇妙な幾何学模様」もその挿し絵に出てきます。これが「宇宙文字」ではないかというわけです。

うつろ船は本当に漂着したか!?

――なるほど。面白い話ですね。この話について科学的な研究はされているのでしょうか?

皆神先生 岐阜大学名誉教授・田中嘉津夫さんが「うつろ船」の研究をされています。このうつろ船のイラストですが、同種のものが少なくとも11種類現存することが判明しています。

またこれまでは、うつろ舟が漂着した場所とされていた「はらやどり」という地名が実在していないことが、この伝説を作り話だとする大きな理由でした。

ですが、田中先生の調査で「はらやどり」という地名は書き誤りで、茨城県南部の太平洋岸に江戸時代に実在していた「常陸原」という場所が正しかった、ということが分かりました。

――では、うつろ船の漂着は本当にあったことなのでしょうか。

皆神先生 いえ(笑)。たとえば、うつろ船の100年以上も前の1699年(元禄12年)に、熱田の海に「空穂船」が漂着したという、非常によく似た話が記録されているんです。つまりこの種の漂着話は、江戸期に何度も現れては消えた、一種の「都市伝説」だったと考えるべきだと思います。

●……この熱田の「空穂船」の話は、朝日文左衛門の日記『鸚鵡籠中記』(おうむろうちゅうき)に登場します。

宇宙文字!? 柳田國男は一蹴したが……

――では、この挿し絵は全くの想像で誰かが作ったということでしょうか?

皆神先生 私はこの「文字」が気になりましてね。有名な民俗学者の柳田國男は、この話について触れ、全くの「駄ぼら」であるし、文字もいい加減と一蹴しました。1926年(大正15年)に、柳田は中央公論で「うつろ船」について触れ、「この世にない文字」だから駄ぼらだと言っています。

でも、本当にそうでしょうか。
もし誰かが作ったとして、何かモデルがあったのではないでしょうか。

――モデルがあったのですか?

皆神先生 私は、何か似た意匠の文字、記号がないかを調べました。すると、一つ目と4つ目の文字、まるでカエルの顔を正面から見たような、この文字にそっくりな記号が使われているものがあることを発見したのです。

――どこで使われていましたか?

皆神先生 毎年10月に開催されている「長崎くんち」というお祭りです。

――えっ?

皆神先生 長崎市の本石灰(もとしっくい)町の山車(だし)、これは船の形をしているのですが、その帆や参加者の着ける鉢巻きなどに、これそっくりなマークが描かれているのです。

――なるほど。これはアルファベットを逆さにしたものですか?

皆神先生 実はですね、これは有名な世界最初の株式会社とされる「オランダ東インド会社」のマークを天地ひっくり返したものなのです。元のオランダインド会社のマークは、アルファベットの「O」「V」「C」を組み合わせたものです。

本石灰町の山車は、「御朱印船」をモデルにしていまして、これはベトナムと交易していた船で、この天地逆になったマークは当時、その貿易船が使用していた旗印なのだそうです。

さらに浮世絵にも類似文字が!

――非常に興味深い話ですね。

皆神先生 もう一つ、この宇宙文字そっくりな文字が江戸時代の浮世絵にも描かれていることを見つけました。「勢州桑名渡」という浮世絵です。浮世絵の周りを額縁のように不思議な文字が囲んでいます。

――なるほど。

皆神先生 「宇宙文字」の1文字目と4文字目とよく似た「オランダ東インド会社」の天地逆さまになった文字があります。また2文字目、3文字目と似た文字も出てきます。

この飾り文字の上の段、右上から左に「HOLLAND」という文字列が読めませんか? つまり「オランダ」です。

――ということは、この謎の4文字は……。

皆神先生 つまり、この「宇宙文字」は、当時の人々の憧れの舶来品だった、オランダ東インド会社の製品そのものか、その包み紙にでも書かれていた西洋文字をまねて、それっぽく書いてみたものだと結論できるのではないでしょうか。

また、『兎園小説』の挿し絵には、「最近、浦賀の沖に繋留したイギリス船にもこのような外国文字があった」というただし書きが付けられています。つまり、滝沢馬琴もこれら文字が西洋の文字と解釈していたのだと思います。

――UFOうんぬん、宇宙文字だというのは……。

皆神先生 UFO話が盛り上がる1947年以降の解釈に過ぎない、ということですね。

――エイリアンクラフトとしてのUFOはなかなか見つからないものですね。

皆神先生 UFOは、今ではYouTubeの中でいくらでも飛んでいますよ。

――ありがとうございました。

本石灰町の山車の写真(C)「九州あちこち歴史散歩」

●……この「うつろ船」の話は、NHKの『幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー』でも取り上げられました(8月16日放送)。皆神先生も番組に登場していますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

⇒『幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー』の公式サイト
http://www4.nhk.or.jp/darkside/

(高橋モータース@dcp)

※この記事は2014年10月06日に公開されたものです

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