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台風の定義って知っていますか?

夏の終わりから秋にかけて、日本に接近することが多くなる台風。

これとよく似たものに、熱帯低気圧や温帯低気圧、さらにはハリケーンやサイクロンなどがありますが、いったいどのような違いがあるのでしょうか。皆さんは知っていますか?

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台風の定義とは

そもそも台風の定義とは何なのでしょう。

気象庁によると、台風とは「熱帯地方の海上で発生する低気圧(熱帯低気圧)のうち、北西太平洋(北半球かつ東経180度より西側)または南シナ海に存在し、低気圧域内の10分間の平均最大風速が17.2m/s(34ノット、風力8)以上のもの」と定義されています。

赤道に近い熱帯地方は気温が高いため、海の水が蒸発して水蒸気となります。水蒸気はそのまま上昇をしていき、やがて上空で雲となりますが、そのときに大量のエネルギー(潜熱)を放出します。このエネルギーによって周りの空気が暖められると同時に、少しずつ気圧が下がっていきます。

このようにして生まれたものが「熱帯低気圧」です。
台風とは、この熱帯低気圧が発達したものに限っていて、熱帯低気圧との違いは平均最大風速が17.2m/秒を超えているかどうかという点になるわけです。

ニュースではよく、「台風の中心付近の気圧は○○hPa(ヘクトパスカル)で、…」というフレーズを耳にしますが、気圧が1,000hPaでも平均最大風速が17.2m/秒を超えていれば台風となり、たとえ950hPaでも風速が17.2m/秒以下なら台風とは呼べません。

台風の規模を表す定義

気象予報士やニュースキャスターの方が台風の大きさや強さを表すときに、「大型で非常に強い台風○号は…」といった感じで伝えていますが、実はあれにも明確な定義というのが存在します。

風速15m/秒以上の強風域の半径が、500~800kmのものを「大型」、800km以上を「超大型」といい、10分間の平均最大風速が32.7~43.7m/秒のものを「強い」、43.7~54.0m/秒のものを「非常に強い」、54.0m/秒以上を「猛烈な」と表現しています。

つまり、大型で非常に強い台風であれば、強風域の半径が500km~800kmで、最大風速が43.7~54.0m/秒の台風だということを示しているわけです。

ちなみに、かつては「小型」や「弱い」という定義もあったのですが、弱い台風と言われると誤解を生んで、かえって安心してしまう可能性もあるという理由から、そのような表現は2000年に撤廃されています。

温帯低気圧との違いは?

もう1つ、台風情報でよく耳にする言葉に「台風○号は温帯低気圧へと変わりました」というのがありますが、この温帯低気圧とはどんなものでしょう。

温帯低気圧は、その名の通り、日本のような温帯地方で発生する低気圧です。
日本列島をイメージすると分かりますが、沖縄と北海道では気温が大きく異なりますね。このような南の暖かい空気と、北の冷たい空気が混ざり合おうとしたときに生まれる空気の渦が「温帯低気圧」です。

そして、この暖かい空気と冷たい空気の境目にできるのが、寒冷前線や温暖前線などの「前線」です。台風や熱帯低気圧は暖かい空気だけでできているため前線は伴っていませんが、温帯低気圧はこの前線を伴っているのが特徴だといえます。

以上のように、温帯低気圧と台風との違いは、あくまでも構造上の差異によるものであって、気圧や風速などの規模によるものではありません。したがって、台風が北上して温帯低気圧に変わったからといって、決して油断してはいけないわけです。

ハリケーンとは何が違うの?

台風とよく似たものに、「ハリケーン」や「サイクロン」というのがあるのをご存知でしょうか。

これらの呼び名の違いは、その発生した場所によるもので、基本的にはすべて同じ現象です。一般的に、アジア以外の太平洋地域や北大西洋・カリブ海・メキシコ湾で発生したものをハリケーン、インド洋や太平洋南部で発生したものをサイクロンと呼んでいます。

ただし、台風の場合は平均最大風速が17.2m/秒(34ノット)以上であるのに対し、ハリケーンやサイクロンは風速32.7m/秒(64ノット)以上という定義がされています。

なんとなく、台風よりもハリケーンやサイクロンの方が強くて大きなイメージを持ってしまうのは、これが原因かもしれないですね。

まとめ

今回は台風の定義についてご説明してきました。
熱帯低気圧のうち、平均最大風速が17.2m/秒を超えるものを台風と呼んでいることがお分かりいただけたでしょうか。

台風は、地震のように突如発生するものではなく、ある程度は動きが予測できる自然災害ですので、早めに情報を集めてしっかり対策することで被害を最小限に抑えたいものですね。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年08月16日に公開されたものです

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