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戦隊ヒーローは、なぜ5人?「裏切者や違反者をチクるため」

ちびっ子に人気の戦隊ヒーロー。「5人」が多いのは、紀元前からのお約束なのはご存じだろうか。

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「5人で1チーム」は中国の兵法書・尉繚子(うつりょうし)に由来し、裏切者や違反者をチクるための制度だった。日本でも互いを監視しあう「五人組」として導入され、チームワークとは対極の「連帯責任」制度だったのだ。

紀元前に誕生した「5人戦隊」

会社には部や課が存在するように、軍隊もグループ分けがなされ、人数によって呼び名が異なる。もっとも小さいグループから順に、
・班 … 4~6人
・分隊 … 10人前後
・小隊 … 30~50人程度
に分かれるのが一般的で、それぞれにリーダーが設置される。分隊長は班長に、班長は班のメンバーに指示を伝え、統率がとれた行動が実現するのだ。

大佐や軍曹などの階級があるのはご存じの通りで、そのうち伍長(ごちょう)は班長を意味する。現在は班などと呼ばれる最小人数のチームは、もともと伍(ご)と名付けられていたため、伍のリーダー=伍長が誕生した。ドロップアウトを意味する落伍(らくご)も、伍=チームが由来だ。

なぜ5人一組になったのか? これは中国の戦国時代に書かれた兵法書・尉繚子(うつりょうし)に起源し、これも人数の少ないチームから、
・伍(ご) … 5人
・什(じゅう) … 10人
・属(ぞく) … 50人
・閭(りょ) … 100人
と組織化されている。紀元前400~200年前から、最小チームは5人が最適と考えられていたのだ。

5人揃って、仲間を監視?

尉繚子の「伍」は、同じく中国の商鞅(しょうおう)が考案した「変法(へんぽう)」に通じる。市民を5軒1組として管理したのだ。これは犯罪を減らすのが目的で、罪人をかばうなど悪いことをすると、5軒全員が連帯責任を負わされる仕組みだ。

誰かのとばっちりを受けたのではわりに合わないので、自然と互いに監視することになり、自分のチーム内に違反者を見つけたら通報するようになる。これも戦国時代だったので、スパイや裏切者が多かったのだろうが、市民が互いに監視し通報するシステムは、政府にとっては非常に楽な方法といえよう。

日本でも「五人組」の名で豊臣秀吉によって導入され、やはり連帯責任のもとに、隠れキリシタンや年貢を納めないものを取り締まる制度として活用されていた。

軍隊の「伍」も、やはり互いに見張らせる目的で、5人だと戦闘力が上がるわけではない。尉繚子・第14:伍制令から要約すると、

・伍に違反者がいたら、全員が同罪
・もし違反者がいるのを知りながらも、隠したりすると、全員を処罰する
この内容が閭まで繰り返され、つまりは「自分がイヤな思いをしたくなかったら、悪いやつを探し出して密告しなさい」の意味になる。

5人チームの歴史を考えると、力を合わせるどころか、互いを見張り、不正があったらチクり合う、ゆがんだ人間関係と言えるだろう。原作者の意図は分からないが、戦隊ヒーローがチームワークとは無縁の制度に成り立っていると知ったら、全国のちびっ子はさぞ嘆くに違いない。

まとめ

・2000年以上前の中国の戦国時代に、5人で1チームの「伍」が生まれた
・軍隊の階級「伍長」は、チームリーダーの意味
・5軒1組で治安を維持する「五人組」制度もあった
・伍も五人組も、互いに監視し、不正者をチクるのが目的…
普段なにげなく接しているものも、歴史をたどると意外な理由から生まれていることがわかった。
夏休みに向けて映画やショーで大忙しになると思うが、戦隊ヒーローには今まで通り活躍していただきたい。
遊園地で僕と握手!

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年06月20日に公開されたものです

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