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太陽にはなれなかった木星の物語

木星はもう少し大きかったら太陽になれたかもしれない……というお話を聞いたことはありませんか?

【意外と知らない知識「宇宙ゴミって何?」】

これは木星が巨大なガス惑星で、太陽とよく似た成分で構成されているために、よく言われていることです。

もしそれが本当だとするなら、いったいどれぐらいの大きさだったら太陽になれたのでしょうか。

太陽系で一番大きい惑星

太陽系には地球を含めて全部で8個の惑星がありますが、その中でもっとも大きいのが木星です。木星は、その直径が14万kmもあり、これは地球の約11倍(体積にすると約1,300倍)に相当します。また質量に至っては、地球の318倍にもなります。

数字だけを見ると、とても巨大で重たい天体と感じるかもしれません。けれども、地球の質量と体積をそれぞれ1として木星の密度(=質量÷体積)をざっと計算すると、318÷1,300≒0.24となり、地球のわずか1/4程度しかないことが分かります。つまり大きさの割には軽い惑星だと言えます。

その理由は、地球が岩石や金属を主成分とする惑星であるのに対し、木星は水素とヘリウムを主成分としたガス惑星であるためです。木星には「核」と呼ばれる中心部にしか岩石や金属のような物質が存在しません。

けれども、これは太陽とよく似た構成だと言えます。そのため、木星は太陽になり損ねた惑星と言われているのです。

木星に足りなかったものは…

太陽は自らの力で光り輝いている「恒星」の1つです。それに対して木星は自ら光り輝くことはできず、あくまで太陽の光を受けて輝いているに過ぎません。

それでは、木星が恒星になるためにはいったいどのような条件が足りなかったのでしょうか?

……それはズバリ「質量」です。質量があるほど重力も大きくなるため、天体の中心部にはより大きな圧力がかかります。これが水素からヘリウムを作り出す「核融合反応」を引き起こすことで、初めて太陽のように光り輝くことができるようになるのです。

(太陽は燃えているわけではなく、この核融合反応によって輝いているのです)

木星はたしかに巨大な惑星ですが、太陽と比べてしまうと、実はそのわずか0.1%の質量しかありません。一般的に天体が恒星になるためには、太陽の7~8%程度の質量が必要だと考えられています。つまり、木星は現在の70~80倍の質量が無いと太陽のようにはなれないわけです。

これを惜しかったと見るか全然足りなかったと見るか、人によって捉え方は違うと思いますが、皆さんはどう感じますか?

太陽系の掃除屋

それでも、木星が持つ質量と重力は地球に多大な貢献をしてくれています。

かつて「アルマゲドン」という映画があったのを、皆さんは憶えているでしょうか。地球に衝突する小惑星から人々を守ろうと立ち上がる、勇敢な石油発掘者たちの物語でした。

このように、数多くの小惑星や彗星が地球に向かってやってきます。しかも、その数なんと1年間に何千個と言われています。大半は大気圏で燃え尽きてしまいますが、中には燃え尽きないで地表まで到達するものも、年間数個ほどあります。

これでもかなりの数だと感じてしまいますが、もし木星が無かったとしたら、その数は今とは比べ物にならなかったと考えられています。木星はその大きな重力によって、近くを飛んでいる隕石を捕獲したり、軌道を変えたりして、地球への衝突を防いでくれているのです。

ちなみに、天体が持つ重力は、その天体の質量÷(半径×半径)で求めることができます。ここから、先ほどと同じように計算すると、318÷(11×11)≒2.6。つまり木星に働く重力は地球のおよそ2.6倍ということになります。

まとめ

太陽系最大の惑星である木星。もっと質量があれば太陽のようになれた天体だと言われています。けれども実際には、残念ながらそこまで大きくはなかったため、恒星になることもできませんでした。

しかし、木星があの場所に存在するおかげで、私たち地球の生命は長きにわたって進化を遂げてこられたのです。そう考えると、木星も地球にとっては母なる星と言えるかもしれませんね。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年06月06日に公開されたものです

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