もしもパワードスーツを手に入れたら「力は17倍にも増幅される」

今年11月、アメリカで戦闘用スーツの開発が発表された。攻撃から身を守るのはもちろんのこと、普段の17倍もの力に増幅するため、映画にちなんで「アイアンマン・スーツ」とも呼ばれている。
もしもパワードスーツが手に入ったら何に使おうか? 装備を変えれば火災や災害救助にも適しているし、力が増幅できるなら介護にも応用できる。高齢化が進む農家で使えば、日本の農業が復興すること間違いなしだ。
着る電動アシスト装置
アメリカで開発されているパワードスーツの正式名称はTactical Assault Light Operator Suitで、直訳すると戦術的な攻撃用・軽量オペレータースーツで、スーツのように着用する防具と考えればわかりやすいだろう。
頭文字のTALOSはギリシャ神話に登場する青銅の男の名が由来なのだろうが、SF映画のイメージが強く、アイアンマン・スーツの名で呼ばれているそうだ。
TALOSは動力付きの骨格を持っているので、人間の外側に等身大のロボットをかぶせたような状態となる。自分の動作に合わせて動くロボットのような仕組みなので、人間以上の力を発揮することができる。TALOSの骨格を通じることにより、力は17倍にも増幅されるというから驚きだ。
もとより軍事目的で開発されているため、銃弾から身を守る構造も持っている。鎧(よろい)のように丈夫な装備を想像しがちだが、リキッド・アーマーと呼ばれる液体が用いられている。リキッドの名の通り普段は液体で、銃弾を受けると硬化して内部の人間を守る。
鎧ではからだの動きが制限されてしまうが、液体なら人間に合わせて曲げることができるので、自由な姿勢が保てるのがメリットだ。このほか、暗い場所でも視界が確保できる暗視装置、血圧や心拍数を監視するモニター機構、自分や仲間の位置を知らせるGPS、万が一けがをした場合は泡で傷口を埋める装置など、なかの人間を守る装備が充実している。
すごいぞTALOS! オレのからだも見守ってくれっ!
リアル・ロボジー
もしTALOSが手に入ったら、なにに使えるだろうか? リキッド・アーマーや応急処置と聞くとキナ臭く感じるものの、見方を変えれば災害救助にもってこいの装備だし、外骨格で重いものが持ち上げられるなら医療や介護にも役立つ。
現に介護用のロボット・スーツも販売されているぐらいだから、病院のなかを歩き回る日もそう遠くないだろう。
なかでもおすすめなのが農業だ。農業/牧畜/水産業など、生活に必要な物資を取得する第一次産業は重労働が多い。とりわけ日本の農業は狭く起伏の激しい土地のせいで、おのずと手間もコストもかかる集約的農業となっている。
広大な土地のあるアメリカなら、飛行機で種まきや自走式の収穫機など機械で済ませられる作業を、日本では人力に頼らざるを得ない。海外から安く輸入できるため価格も抑えなければならず、コストパフォーマンスが低い。
そのため後継者が育たないだけでなく廃業するケースも多く、若者にとって魅力の薄い産業になりつつあるのだ。
農業にTALOSを使ったらどうなるのか? まずは17倍にも増幅される力によって重労働から解放される。用具や収穫物を負担なく運べるようになれば、高齢の方でも作業が楽になるはずだ。リキッド・アーマーがあれば傷を防げるだけでなく、強い衝撃からも身を守ってくれるはずだ。
万が一にけがをしても、TALOSを着たまま応急処置ができる。
ご高齢の方にはモニター機構とGPSがお勧めだ。リアルタイムで心拍数や血圧が測れ、「働き過ぎ」警告を伝えることもできる。GPSがあれば迷子になっても大丈夫だし、茶飲み友達がどこにいるかもすぐわかる。
TALOSを着たひとが、一斉に収穫したり、田植えをしていたらなんと痛快だろう。
武器よさらば。
まとめ
パワードスーツの元祖は、ガンダムのモチーフにもなったロバート・A・ハインラインの小説「宇宙の戦士」と言われている。社会派と評される同氏の作品には、軍事的な要素が多数盛り込まれている。
TALOSが現実のものとなるのは時間の問題だ。決してキナ臭い存在ではなく、平和に利用されることを切に願う。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年01月06日に公開されたものです