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もしもゾウに踏まれても「1平方cm当たりにかかる重さは1.4kgと、意外に少ない」

むかし「ゾウが踏んでも壊れない」筆箱があった。一生使える丈夫さに思えていたのだが、机から落としたら壊れてしまいショックを受けた記憶がある。

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ゾウに踏まれても、本当に大丈夫なのか? 体重5トンのインドゾウでも、足の裏の面積を考えるとダメージは意外に小さい。女性にピンヒールで踏まれた方が、ゾウよりもむごい結果を生みそうだ。

50cmで300倍

ゾウが踏んでも壊れない筆箱は1965年から現在も販売されているロングラン商品で、webでは素材がセルロイドからポリカーボネイトに変更され、さらに強度がアップしたと記されている。縦85mm×横235mm、重量は170gで、これに1.5トンを加重しても割れなかったとのデータがある。

筆箱の面積199.75平方cmで割ると、1平方cm当たり7.5kgを乗せても壊れないことを意味している。

ただしこれは静かに均一に力を加えた場合で、勢いよくぶつけたり、一点に集中して力を加えても大丈夫、の意味ではない。筆者が壊してしまったのも、床に落とすという仕様外の使い方が問題なのだろうから、机から落ちた筆箱がどれくらいの力を受けるのか検証してみよう。

落ちた物体が受ける衝撃は、高く重く短時間で静止するほど強い衝撃値Gを受ける。鉛筆や消しゴムなどが入った筆箱を300gとし、成人用では標準的な机の高さ70cmと、子供用に合わせて50cm、60cmも計算してみよう。

床に当たり下向きの速度がゼロになるまでの時間を千分の1秒と仮定し、衝突直前の速さと衝撃値G、衝撃力を計算すると、

・高さ50cmから落下 … 時速11.3km … 319.4G … 95.8kgf

・高さ60cmから落下 … 時速12.4km … 349.9G … 105.0kgf

・高さ70cmから落下 … 時速13.3km … 378.0G … 113.4kgf

となる。50cmの机から落としただけで、300gの筆箱が95.8kg相当に変わるのだ。

表か裏が均等に床に触れれば壊れずに済むが、角や側面から落ちる可能性が高い。1平方cmが耐えられる7.5kgから逆算すると、12.8平方cm以上が床に触れるように落とさなければならないが、そんな神業的な落とし方を期待するだけムダだ。

よって落とせば壊れて当たり前。すごいぞ重力!落ちたリンゴもジュースにしてくれ!

ゾウより怖いピンヒール

本題であるゾウに踏まれた場合を検証しよう。1888年から探検や調査を続けているナショナルジオグラフィック協会の資料から、アジアゾウとも呼ばれるインドゾウは体重2~5トン、アフリカゾウは2.3~6.4トンとされている。

どちらも4本の足に体重が均等にかかると仮定すると、足1本にかかる重さはアフリカゾウなら1.6トンで超えてしまうものの、インドゾウは最大でも1.25トンなので、静かに乗れば耐えられるはずだ。

つぎに1平方cmあたりの重さを計算してみよう。愛媛県立とべ動物園に展示されているインドゾウの足跡は縦42cm横27cmのだ円状なので、だ円形として計算すると足の裏は約890平方cmとなる。体重5トン÷4本の足÷足の裏の面積で計算すると、1平方cm当たりにかかる重さは1.4kgと、意外に少ない。

筆箱は1平方cm当たり7.5kg耐えられる計算なので、ゾウを凌駕する強度なのが分かる。

身近な例としてハイヒールの女性に踏まれたらどうなるのか? ピンヒールの接地面積は直径1~2cmぐらいだろうか、これに体重50kgの女性が、片足のヒールに体重の半分をかけるとすると、ヒールで踏まれた部分には、

・直径1cmのヒール … 1平方cmあたり31.8kgf

・直径2cmのヒール … 1平方cmあたり8.0kgf

が加わり、直径1cmはゾウの22.7倍、2cmヒールで静かに踏んでも筆箱を粉砕できる計算だ。ぽっちゃり系で体重60kgなら順に38.2kg/9.6kgと跳ね上がり、痛いでは済まない大惨事が起きる。

高い場所から踏みつけたらどうなるか? 筆箱と同じ条件で60kgの人が高さ30cmから落ちると、247Gを発生し14,846kg相当となる。もしこのエネルギーが直径1cmのピンヒールにすべて加わると、1平方cmあたり18トンと、プレス機並みのパワーを発揮する。

ゾウのおよそ13,500倍では凶器に他ならないので、ピンヒールでジャンプは厳禁で願いたい。

ゾウが踏んでも壊れないは理論上OK。破壊が目的なら、ピンヒールがあればゾウは不要。

まとめ

電車内でピンヒールの女性に足を踏まれた知人がいた。ビーチサンダルの素足の甲を踏まれ、あまりの激痛で言葉も出なかったそうだ。

身近なものでも武器になる。強力なパワーを得たいなら、重力を利用するのが良さそうだ。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年01月05日に公開されたものです

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