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サンダーバードが実在したら「地球の裏側に1時間で到達」

今年7月に「サンダーバード博」の開催された。子供のころ夢中になり、懐かしく感じる人も多いだろう。

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もしも国際救助隊が実在したらどうなるのか?地球の平和には頼もしい存在だが、マッハ21のロケット機や水中を時速300kmで進む潜水艇のパイロットは、さぞかし苦労するに違いない。


■燃える1号

サンダーバードは1965年に放映されたSFテレビ番組だ。細部にまでこだわった精巧なデザインは後の多くの特撮番組に影響を与え、何よりも驚きなのは主人公を含め「人形劇」だったことだ。2004年に前代未聞のR-18指定・人形劇が公開され、内容的にもおよそオマージュとは呼べない作品だったが、サンダーバードの影響を多大に受けていることは誰もが気づいただろう。

サンダーバードの舞台設定は今から50年後の2063年で、放映タイミングから考えると100年後の未来を想像しながら制作されたことになる。作品中の人々は今とそう変わらない生活ぶりで、例えば瞬間移動のような現実離れした要素はない。

月を目指したアポロ計画が1961年開始だからその影響は濃く感じるものの、今でも斬新的に感じるメカニック・デザインには脱帽だ。書籍「サンダーバード・メカニックファイル」ではマシンの詳細が記され、19世紀の作品とは思えない驚愕のマシンによって地球は守られていたのだ。

栄えある初代救助マシン、サンダーバード1号は超音速ロケット機で、筒状の機体に小さな翼をつけたミサイルのような風貌をしている。地球の裏側でも1時間で到着できるように、最高速度はマッハ21の設定だ。音速を表すマッハは温度と気圧によって異なるが、一般的に言われる340m/秒をもとにすると時速1,224kmだから、マッハ21なら時速2万5千km強となる。

地球の裏側とは少々漠然とした表現だが、一番長い赤道半径を使って計算すると半周で約2万kmだから、気流を計算しなければマッハ21は妥当な速度だ。

残念ながら、加減速時間が見つからなかったので、単純に同じ時間がかかると仮定し、発進~加速~最高速度~減速~停止の全行程を2万km・60分で計算すると、水平移動で計算しても最高速度のマッハ21まで2.86分、およそ171秒かかる。Gに直すと4.2Gで、フォーミュラー・カーのフルブレーキが3分弱続く状態だから、トレーシーは顔に出さないものの、かなりの重労働だ。

歴代の超音速機と比較すると、アメリカで開発中のファルコン・HTV2がマッハ20、ジェット機世界記録のブラックバード(SR-71)はマッハ2.9なので、2013年に存在すれば1号が確実に最速だ。ただし空気との摩擦は強烈で、ブラックバードはおよそ700℃に達し、HTV2は外壁の損傷が原因で試験中に燃えたと言われるぐらいだから、くれぐれも無傷でご帰還いただきたい。

音速を超える4号

潜水艇というよりも自動車のような風貌のサンダーバード4号は、全長9.14m・重量16トンと小柄なボディに核融合エンジンを搭載し、水上を74.08km/時、水中はさらに速い約300km/時で移動できる機動力の持ち主だ。水上最速のパワーボートは約300km/時なので追いつけないが、80km/時の八丈島行きの高速ジェット船なら救助できそうだ。

水中では敵なしで、マグロはおよそ70km/時、最速と言われるカジキでも110km/時と足元にも及ばない。抵抗の塊のようなデザインだから、2063年には画期的な技術が生まれているに違いない。

サンダーバード4号を地上で使うと大変なことが起きる。いまだ実用化されていない核融合もさることながら、この重さと速さを地上の運動エネルギーに当てはめると、1.5トンの乗用車なら時速980km相当になるからだ。市街地の建築現場で見かける10トンクラスのブルドーザーなら時速380km程度、およそ4千トンもある東京タワーが時速19kmで追いかけてくる状態だ。

水は空気よりも粘性抵抗が44倍も大きいので、4号を陸で走らせたら時速300kmどころか音速を超える勢いとなる。海洋生物はもちろんのこと、地球を傷つけないよう安全運転でお願いしたい。

はいパパ。

まとめ

その後製作者のジェリー・アンダーソンは、軌道を離れた月が宇宙を放浪する「SPACE:1999」などを手掛け、2012年12月に他界した。

特撮の祖に哀悼の意を表する機会を得たことに感謝しつつ、ご冥福を祈る。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2013年09月04日に公開されたものです

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